1952年、東宝、源氏鶏太原作、山本嘉次郎+井手俊郎脚本、春原政久監督作品。
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黒潮の海に面し、夏ミカンが名産、人口10万人そこそこの某地方都市にある南海産業は、地元では優良企業として信頼が厚い会社であった。
そこの社長、桑原(河村黎吉)は、ある朝、新聞を観て驚く。
前社長、奈良剛造(小川虎之助)の公職追放が解除されたという記事であった。
前社長が現職に復帰すれば、当然、桑原は降格してしまう。
贅沢な裾前を注文したばかりの夫人(沢村貞子)も当惑顔。
その情報を知ったバー「ニューヨーク」のママ(音羽久米子)などは、早速、馴染みの浦島太郎人事課長(森繁久彌)に、復帰する奈良社長と一緒に店に来て欲しいと電話をかけて来る始末。
ところが、当の奈良前社長は、出社の朝、自宅前で車に乗り込む瞬間、夫人(三好栄子)らの見守る中、脳いっ血で倒れてしまう。
かくして、桑原体制は存続する事になるのだが…。
現金なもので、社長の椅子が当分の間安泰だと分かると、社長夫人はせっかく買った裾前を着るために、仲人口か何かがないものかと、桑原にせっつきはじめる。
その結果、南海商事では、今後、社内結婚する予定のあるものは、社長に媒酌人を依頼するようにという
、奇妙なおふれが廻る事になる。
そのおふれに刺激されたのか、事務の木原トキ子(木匠久美子)は、気のある営業部の村尾(大泉滉)にモーションをかけるのだが、村尾は勘違いして、仲介した青子(島秋子)に自分も好きだったと告白してしまう。
青子にはすでに、秘書課の若原(小林桂樹)という身近な男性がいたのであった。
ドタバタの末、何とか、村尾とトキ子の結婚式を済ませ、婦人を喜ばせた桑原社長だったが、その後、またまた、厄介な事を婦人から提案される事になる。
奈良前社長の娘由起子(関千恵子)が経営しているパーマ屋に集まっていた社員の奥さん連中から焚き付けられた婦人から、ボーナスをそっくり、奥さんたちに直接渡すよう差し向けられてしまったのである。
しかし、この騒動は、浦島人事課長の機転で、何とか、事なきを得る。
かくして、ますます信任の厚くなった浦島は、桑原社長の東京出張所視察のお供を応せつかる。
ところが、一緒に東京に出かける約束だった別会社の藤山社長(進藤英太郎)は、おこま(藤間紫)という愛人らしき女性を同伴している。
ただでさえ、バツの悪い立場になった桑原と浦島は、東京駅に降り立って、さらなる厄介事に巻き込まれる事になる。
何と、藤山社長婦人(岡村文子)が、夫の行動を怪んで、飛行機で先回りして待ち受けていたのであった。
とっさの機転から、瞬時に男同士の暗黙の芝居が成立し、おこまは、桑原社長夫人という事になってしまうのだが…。
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後の「社長シリーズ」の原点ともいうべき作品。
ユーモラスなエピソードがいくつも描かれており、庶民的な共感を抱かせると同時に、じんわりと心が暖かくなるような人情ドラマになっている。
本作での森繁は、後のシリーズでの、三木のり平や加東大介演ずるキャラクターの原点のような役所を演じている。
社長の公私に渡る世話係なのである。
金縁眼鏡にちょび髭姿で、ちょっとクールなやり手という感じ。
後半は、東京で、お好み焼き屋を営む越路吹雪をめぐる、ちょっと良い話になっていく。
本作が公開された当時、大評判を取ったというのもうなずける。
今観ても、その面白さ、味わいは十二分に伝わって来る。
正に、庶民的な名作ともいうべき作品だろう。
