1956年、東映東京、棚田吾郎脚本、小沢茂弘監督作品。
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アメリカでの勝負で一回負けている強敵「赤い恐竜(レッド・ドラゴン)」ことハンス・メッガ−が近く来日して再対戦するという事で、力道山は毎朝新聞の秋山(益田キートン)らマスコミの取材陣に取り囲まれて取材を受けていた。
そんなリキ(力道山)は、少年達を集めてプロレス教室を開いていたのだが、付き人の阿部が、こっそりチャンピオンベルトのおもちゃを盗んだ少年、貫一(植木基晴)を捕まえてきたのを見る。
訳を聞いてみると、身体が悪くテレビも観られないアキちゃんという少年のために持っていってやるつもりだったという。
さっそく、貫一と共に、その少年の家を訪れたリキだったが、ちんどん屋をやっている貫一の父親京次郎(杉狂児)から、晃(大川昌幸)君は、以前は歩けたのだが、大きな道路でトラックに轢かれそうになった事件がきっかけとなり、ショックで全く歩けなくなったのだという。
何とか、晃を励まして立たせる練習をさせていたリキの元に、晃の姉の悦子(小宮光子)が帰宅してきて、その行為に逆上して、リキらを追い返してしまう。
一方、彦浜市に体育館が出来たのを記念して、試合をしに来て欲しいという依頼が興行師の赤岩(佐々木孝丸)からあり、正直、気が進まなかったリキだが、相撲時代に世話になった国会議員の大橋(早川雪洲)の口利きという事もあり、不承不承承知する事に。
その彦浜市で、リキは、地元のギャング達から痛めつけられていた一人の老人を助ける。
翌日、屋外練習中だったリキの元に、身体の不自由な大勢の子供達と共に、毎朝新聞の記者水野(田代百合子)と、米川康子(星美智子)という女性がやって来る。
昨日リキが助けた老人は、愛光学園という身体の不自由な子供達を預かる学校の創立者で、康子の父親だったので礼をいいに来たのだった。
彦浜市でのハンスとの試合は、時間一杯で引き分けとなり、選手同士の協議の結果、大阪府立体育館で再試合を行う事となる。
リキは東京に戻り、再び、晃君の家を訪れてみたが、何と、晃君は松葉づえをついて歩けるようになっており、姉の悦子も、いつかの非礼を詫びるのだった。
リキは、そんな彼らを大阪の試合へ招待する。
しかし、そんなリキの事務所に、大阪の試合も赤岩興行にやらせて欲しいという依頼が、大橋から直接ある。
水野記者の持ち込んだ話によると、大橋と赤岩はつるんで、愛光学園への国からの助成金をピンはねしているらしいという。
先日の米川襲撃も、赤岩の息のかかった人間達の仕業らしい。
直接会いにいった大橋から、以前、侮辱されていたリキは、今度の試合で自分が勝ったら、愛光学園に寄附するためファイトマネーを全額もらう、逆にもし負けたら、一文ももらわないという、前代未聞の契約条件を赤岩に持ちかけるのだった…。
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戦後の大ヒーローだった、本物の人気プロレスラー力道山を主役にした子供向け映画。
当時は、テレビの普及率も低く、街頭テレビなどでプロレス中継を観られない子供達の為に作られたのだろう。
子供向けとはいえ、感動を押し売りするかのような、かなり、あざとい素材を使っているのが、若干気にならないではないが、今観ても、朴訥な力道山が一生懸命演技している姿が胸を打つ作品になっている。
劇中、悦子がリキを揶揄するように「ゴジラや雪男も顔負けのあなたが…」といっているセリフが、当時の力道山の人気と強さを象徴している。
注目すべきは、後半、ヤクザから怪我をさせられたリキが「平気、平気」と無理をするシーンである。
この後、現実でも、力道山は、この映画と同じような事件に遭遇し、同じように無理をして亡くなっている。
その事実と照らし合わせてみると、運命的な内容だった事が分かる。
何故か、悪役を演じている早川雪洲の存在も興味深い。
