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お嬢さん社長

1953年、松竹大船、富田義朗+柳沢類寿脚本、川島雄三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

日本一乳菓の社長、小原重三郎(市川小太夫)は、大変なワンマン経営で知られ、その姿勢に付いていけなくなった経理部長の赤倉(清水一郎)は、会社を去る事になる。

そんな小原社長には、一人の孫娘がいた。

秘かに歌手を夢見る16才のマドカ(美空ひばり)であった。

両親はいないものの、金持ちな家庭で我がまま放題に育てられた彼女は、今日も家庭教師に睡眠薬入りのジュースを飲ませて眠らせると、自分はこっそり家を抜け出し、ひいきにしている歌劇の主演女優江川(江川滝子)を一人で外に連れ廻して、開演間際にようやく劇場に戻って来る始末。

主演不在でハラハラさせられた舞台監督の秋山五郎(佐田啓二)は、そんな世間知らずのお嬢様マドカをしかりとばすのだった。

反省したマドカは、自社のチョコレートを手みやげに、五郎が住むという浅草のお稲荷横町を訪れる。

そこの住人で芸人の桜川三八(桂小金治)から、五郎の住まいを教えてもらったマドカは、五郎と同居している並木敬吾(大坂志郎)と出会い、彼の口から新しい時代の「産業デザイン論」なるものを聞かされる。

結局、五郎には会えずに引き返すマドカの姿を目に止めた老人がいた。

たいこ持ちの一八(坂本武)であった。

彼の亡くなった一人娘ひとみに、マドカがそっくりである事に気付いたのだった。

実は、マドカの母親は、かつて浅草で人気歌手だった浦川ひとみといい、一八の娘だったのだ。

そんな中、高血圧で倒れた重三郎は、急遽、孫のマドカを呼び寄せ、自分に代わって社長をやるように命じる。

あまりにも急な話に、必死で固辞するマドカだったが、貝谷部長(有島一郎)の娘で社長秘書の貝谷由美子(月丘夢路)から説得され、不承不承に承知する事になる。

社長に就任したマドカのモットーは「明るく楽しく」、昼休みには社員全員で歌を歌う事まで決めてしまう。

さらに、社長付きの宣伝企画員として雇い入れた並木のアイデアから生まれた宣伝用のテレビ番組に、マドカ自身が歌手として登場する事になる。
その演出家としてマドカが指名したのは、秘かに彼女が恋いこがれるようになっていた五郎だった。

マドカはテレビを通じて、日本中のアイドルになっていく。

しかし、その頃、会社を辞めたはずの赤倉が、専務の安田(多々良純)や貝谷の元を頻繁に訪れ、会社乗っ取りの陰謀を企てていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

画面を斜めに移動する洒落たタイトルロールから始まる、ひばりの魅力と下町情緒が詰まったアイドル人情映画ともいうべき作品。

16才のひばりが、お茶目で可愛らしい社長令嬢ぶり、テレビに出演した時に見せるアイドル歌手ぶり、そして、頑固者の祖父の他に、今まで存在を知らなかった母方の祖父や、五郎と由美子の関係を知って見せる、少女らしい葛藤ぶりなど、いくつもの魅力を演じ分けてみせる。

佐田啓二や月丘夢路も、若々しくて魅力的。

陽気な演技で目立つ桂小金治、ちょっと地味な存在ながら、始終、鼻炎なのか、ハンカチを手放さない情けないキャラクターを演じる有島一郎も貴重。

はつらつとして知的な若者を演じている大坂志郎も、意外な印象で、なかなか好ましい。

銀座の町並みやテレビスタジオなどの近代性と、下町のしっとりとした人情劇がミックスされた、異色の作品になっている。