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ニードフル・シングス

1993年、フレイザ−・C・ヘストン監督作品。

スティーブン・キング原作の映画化である。

キャッスルロックの町に、「ニードフル・シングス」という骨董店が開店する。

好奇心から入店した少年ブライアン・ラスクは、店主のリ−ランド・ゴーント(マックス・フォン・シド−)から、憧れだったミッキー・マントルの野球カードを見せられる。

しかもそのカードは、奇妙な事に『マントル自身がラスクの名前を書いた直筆サイン入り!』だった。
店主は、少年ラスクに囁きかける。
「料金は所持金だけでいいんだよ。ただし、ちょっと、こちらの頼みも聞いてもらわねばならないんだが…」

同じように、町の住民たちは、この骨董店で、長年、夢にまで見ていたお宝を手にする事になるのだが、町のあちこちで、住民同士の諍いが起こりはじめる。

全体的なストーリーの展開は、ほぼ原作にそっているが、キングのホラーというのは、基本的に「良くある発想を、饒舌な文体で独自の濃密なサスペンス世界に再構築する」という所に特長がある。

本作も、原作の発想自体は、昔から良くある「○○との契約パターン」である。

それを、独特の巧みな語り口で、クライマックスの大掛かりな破局へと誘う展開の『過程』にこそ魅力があるのだが、映画では予算の関係か、その表層部分だけをコンパクトにまとめてしまい、どんどん事態が悪化してしていく『過程』の面白さというか、心理的な錯綜の部分においては、正直、物足りなさを感じないではない。

活字を追って想像を膨らませていく小説と、具体的な映像によって観客に刺激を与える映画という、表現方法の違いがある以上、仕方ない所なのかも知れないが…。

そのために、「良くあるパターン」の発想部分だけが浮き出てしまい、特に「映画としてのインパクト」が希薄な、ごく普通のサスペンスものになっている。

安手のホラーとまではいえないが、正直、地味なのである。

見方を変えていえば、マックス・フォン・シド−や、保安官役のエド・ハリスなど渋い役者陣の演技をじっくり楽しむ作品といえるかも知れない。

テレビやビデオなどで楽しむには十分な作品であろう。