迷路の中を突き進むかのような複雑なキャメラ移動の中、遠い宇宙で戦いが起こっているらしき描写か始まる。
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やがて、樹木が生い茂る沼地に一人の老兵らしき宇宙人が倒れ込む…。
それから600年が過ぎ、舞台は、樹木におおわれた未開の土地。
木の幹から乏しくなった樹液を集めている村人達とは別に、一人、木々を飛び回り、気ままに遊び回っている少女ケイナ。
彼女の趣味は、目に触れた珍しいものを絵に描く事。
彼女のスケッチの中には、いつか見た青い太陽も描かれていた。
だが、その存在を信じてくれるのは、昔身体を負傷し、少し、頭がおかしくなった老人のイルポだけ。
そんなケイナは、ある日、不思議なものを発見する。
奇妙な形をした物凄く固いもの、「刃物」である。
ケイナが住む集落は、神の声を伝える司祭が支配しており、ケイナの両親は、かつて、その司祭の言葉に背いた咎で亡くなっていた事もあり、ケイナは司祭の事をどこか嫌っていた。
ある日、村を襲った地震をきっかけに、反抗的なケイナは、司祭から追われるように、村を逃れる。
そして、彼女は、不思議なものに出会うのだった…。
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フルCG作品という事で、複雑なメカニックや不可思議な風景などが、見事に構築されている。
マニア向けの「アート系SFコミック誌」の映画版ともいうべき独特のビジュアルになっている。
しかし、デジタル造形が難しいキャラクターの方はといえば、主役ケイナが、いくらかリアルタッチで作られている以外は、一昔前の人形劇のキャラクターのような独特のデフォルメがなされている。
この辺が、観客の好みが別れる所だろう。
同じデフォルメでも、まだセル画のような2Dキャラクターだと、日本人には馴染みやすいのだろうが、3Dキャラとなると、よくも悪くもクセが強くなる。
若い女の子などが、これらの3Dキャラクターを「カワイイ〜!」と感じるのかどうか…。
ストーリーは、ある種の寓話というか、シンプルな神話のようなものである。
どこか、「風の谷のナウシカ」とか「未来少年コナン」を彷彿とさせるような世界、あるいは未来版「不思議の国のアリス」と言えるかも知れない。
ただ、意外とスケール観は小さく、ちんまりとした話ではある。
おそらくこれが、今の所、フランスの3D技術で可能な範囲内での精一杯の物語展開だったのだろう。
この辺に関しては、今後のデジタル演算能力の改善を待つ他はないだろうが、結果的に、かなり観客限定…みたいな出来上がりになってしまった事は否めない。
「話やイメージはどこかからの借り物、あくまでも3D技術の添え物」とまでいっては酷だろうが、実際、 ストーリー的には、今一つ、物凄く感動できる…というレベルにまでは至っていない気がするのだ。
作者が、本作の中、技術面で一番見せたかったのは、おそらく「水の動き」なのだろう。
だから、ヌメヌメとしたギーガ−風の樹液の女王が出て来るシーンには力が注がれている。
海のシーンもなかなかリアルである。
本作は一種の取っ掛かりというか、実験作として、ヨーロッパ3Dアニメの今後の展開に期待したい。
