1957年、東映東京、玉川一郎原作、中田竜雄脚本、マキノ雅弘監督作品。
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昭和20年8月、東部第五二部隊。
へたくそな起床ラッパに起こされ、機嫌の悪い下士官室の岩本軍曹(駿河海)は、子分格の山添伍長(杉義一)に、そのラッパを吹いていた塩見一等兵(杉狂児)に気合いを入れるよう命ずる。
その頃、現役の関取で、いまだにマゲを結っている、リキさんこと光田二等兵(力道山)。
元、塩見一等兵の勤める会社の社長だった、安永二等兵(進藤英太郎)。
漫才師だった小島二等兵(堺駿二)。
歌手だった谷村二等兵(ディック・ミネ)ら新兵たちに、宇野見習士官(東千代之介)は優しい言葉をかけている所だった。
だが、彼ら新兵たちも、岩本軍曹と山添伍長には、徹底的に虐め抜かれるのであった。
そんな彼らをかばってくれるのは、宇野見習士官だけ。
ある外出日、光田二等兵は、焼夷弾で大怪我を負った汐風部屋の汐田要吉親方(斎藤紫香)を病院に見舞いに出かける。
危険な状態であり、親方に輸血が必要だと分かった光田二等兵は、同じ血液型だから、自分の血を使ってくれと医者に申し出る。
娘の春江(星美智子)や医者がしばらく休んでいくようにように忠告したにもかかわらず、光田二等兵は無理を押して、門限を守るために部隊へ帰ろうとする。
塩見一等兵や他の仲間らの協力により、何とか、門限時間ギリギリには滑り込む事が出来た光田二等兵だったが、岩本、山添コンビに、又しても、共同責任だとして、全員が制裁を加えられる事になる。
やがて、部隊全員前線に送られる事になり、光田二等兵は、相撲への未練を断ち切るために、仲間達に断髪してもらうのだったが、皮肉な事に翌日、終戦を迎える。
固い絆で結ばれ合った彼ら軍隊仲間達は、5年後のクリスマスの夕方5時に、日本橋で再会しようと誓いあって別れるのだった。
やがて5年が過ぎ、約束の日が来る。
元の社長と部長の関係に戻った安永と塩見、人気俳優になっていた小島は、待ち合わせた料亭で、意外な人に出会う。
人気俳優の千代之介となっていた宇野見習士官であった。
彼らは再会を喜ぶと同時に、リキさんこと光田二等兵と連絡が取れない事を案じながらも、芸者を連れて、クラブ歌手に戻って歌っていた谷村の店にくり出す。
そこで、歌っている途中であったにもかかわらず彼らとの再会を喜ぶ谷村や、千代之介に群がるホステスの姿にいらつき、千代之介に因縁を付けてきたマネージャーを突き飛ばした巨大なサンタがいた。
戦後、身体が大きいだけでつぶしがきかず、きちんとした仕事に付けないまま、その店で使われていた光田二等兵であった。
彼は、その行為をとがめられ、店のチンピラ達に怪我をさせられた上、その場で解雇させられる。
意外な所で出会った、元関取、力道山の姿に驚くもう一人の人間がいた。
部屋が潰れた後、芸者になって、その場に付いてきていた春江だった。
かつての仲間達は料亭に戻り、リキさんの身の振り方を相談しあいうのだが、安永の発案で、力道山をプロレスラーにしようと意見が一致する。
実は、かつての岩本軍曹も、柔道7段の腕を買われ、戦後、プロレスラーになっていたのだった…。
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戦後の国民的ヒーロープロレスラー、力道山を主役にした人情ドラマ。
拙いながら、力道山が普通のドラマの主演を演じているのが、まず意外。
本来なら、力道山がプロレスラーになるまでのドラマは、前振り的なものであると思われるのだが、本作では、それがメインとなっており、結構じっくり描かれている。
プロレスラーになってからの展開は、逆に付け足しのような印象さえ受ける。
脇を固めるディック・ミネ、東千代之介、堺俊二らが、戦後、現実と同じような役柄を演じているのも興味深い。
前半、先輩兵として、浪曲の広沢虎造がゲスト出演しており、力道山と共演するシーンまである。
正にサービス満点。
シンプルといえばシンプルそのものの大衆好みの展開だが、マキノ監督の職人芸は、ここでも見事に生きており、最後まで飽きさせない。
人気者を使った「キワモノ映画」というよりも、それなりにきちんとした人情ドラマになっている所が見事である。
