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次郎長社長と石松社員

1961年、ニュー東映、中里菊馬脚本、瀬川昌治脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

シミロン紡績は、戦後、女性下着で業績を伸ばし、今や業界トップを誇る、全社員8734名の大会社である。

清水の次郎長の血筋である清水長次郎(進藤英太郎)社長に、その珍しい名前を気に入られ、採用試験不合格の結果とは別に、個人的裁量で採用された23才の森川石松(中村賀津雄)は、そうした事情も知らぬまま、元気に初出社する。

新入社員に挨拶する社長の顔も、同僚が多すぎて、遅れて来た石松には全く拝めない有り様。

彼の入社事実をしっかり把握していなかった人事の不手際により、結局、彼は、ダメ社員の吹きだまりともいうべき調度課に配属させられる。

そこの花田課長(西村晃)は、石松と同じ、香川の天山大学の先輩だったのだが、そんな駅弁大学出身では、到底出世などできないと、夢破れた花田当人から愚痴をこぼされた石松は憤慨するのだった。

一方、長次郎社長は、教育テレビでライバル会社である西野紡績の社長(柳永二郎)と対談するといって出かけ、実はすでに録画撮りはとうに終わっている事を幸いに、妾である、小唄の師匠、蝶子(星美智子)の家に出向いていた。

信心深い蝶子の影響で、最近、長二郎社長まで、すっかり、験かつぎばかりやるようになっていたのであった。

実は、その蝶子の家は、石松が下宿している葬儀屋の隣だったのだが、まだきちんと顔も知らないでは、互いに気がつくはずもない。

近所の銭湯の洗い場で、長次郎社長と隣り合わせになっても、一緒にいた葬儀屋の主人(花澤徳衛)から、神田の呉服屋の主人と紹介されていた石松は、単なる助平ジジイと知らん顔。

そんな石松は、ある朝の通勤バスの中で、同じシミロンの社長専用エレベーターガール白木美里(佐久間良子)に痴漢と間違われ、それが元で、互いを意識しあうようになる。

さらに、花田課長と飲みに出かけた銀座の「クラブ次郎長」という店で、同じ「石松」のニックネームを持つホステス、リエ(相川昌子)と知り合い、さらに彼女の従兄弟で、天山大学の応援部仲間だった水島譲次(水木襄)とも再会する事になる。リエもまた、長次郎社長の愛人の一人で、水島は今やマネービルの青年社長となっていたのである。

水島と再会の喜びに浸っていた石松は、ある飲み屋で、すっかり気落ちしている様子の花田課長と出会う。

聞けば、北海道へ左遷される事になったという。

その理不尽な待遇に憤慨する石松をしり目に、シミロンの内情にも詳しい水島は、その人事の背後に、きな臭いものを嗅ぎとるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ヒットした東宝の「三等重役」にも出演していた進藤英太郎主演の東映版サラリーマン喜劇の第一作。

恐妻家で浮気性の社長像は、森繁版と共通しているが、森繁の社長シリーズが、どちらかというと、中年サラリーマン達中心のドタバタを描いているのに対し、こちらの作品の主眼は、どちらかといえば、女性社員たちに「ちょっと、錦之助に似ている」と評判の、新人石松の熱血振りを描く事にあるように感じられる。

長次郎社長は、そんな石松の引き立て役になっている感じ。

一心太助と大久保彦左衛門の関係の現代版というべきだろうか。

柳秘書課長に柳沢真一、室谷総務部長に加藤嘉、谷井宣伝課長にトニー谷、石松と同期入社の宣伝部社員に大泉滉などが出演している。

進藤英太郎のおとぼけ演技も愉快なら、ストーリー展開にも工夫が感じられ、後味も悪くない。

特に、歌声酒場に入った石松と美里が会話するシーンは秀逸。

周りの歌声で二人の会話が観客に良く聞き取れない。
そこで、字幕が出て来る。

周りの歌声が終わって一瞬の静寂が訪れるのと、 美里が石松に対し大声で「あなたが好き!」と叫ぶ声が重なる演出は印象的である。