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新婚お化け屋敷

1939年、東宝映画、益田甫原作、小国英雄脚色、斎藤寅次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

結婚したてで、立身出世の為、単身上京していた石田(横山エンタツ)は、丘で寝そべっていた所、天気予報とは裏腹に土砂降りの雨に祟られる。

住宅地をうろうろしている内に、雨漏りに困っている一人の女性の住まいに勝手に入り込んで、屋根を直しましょうかと尋ねる石田。
渡りに船と、見知らぬ男に屋根の修繕を頼んだその女性だが、結局、石田の不手際で、修理どころか、屋根の一部まで抜かれてしまう。

慌てて逃げ出した石田は、道で偶然、幼馴染みの藤木(花菱アチャコ)とばったり出会う。

雨も止んできたので、藤木が自分の家に石田を連れて帰って来ると、そこは先ほどの女性の家。
彼女は、藤木の細君しん子(三益愛子)だったのである。

職を捜しているという石田に、自分の会社を紹介した藤木であったが、サボっている所を上司に見つかり、当の藤木はあえなく馘首。
石田の方も、仕事に馴染めず、その後、あっさり職を投げ打ってしまう。

すっかり、居候を決め込んだ石田に困り果てたしん子は一計を案ずる。

夫婦喧嘩を装って、自分が家出をしたと石田に思わせ、別の家に一緒に住もうというのである。

ようやく、石田と別れた藤木であったが、家賃35円の新しい住まいは高すぎると、しん子からもっと安い家を捜すように言い付けられる。

結局、石田と同じ、「ステープル・ファイバー(スフ)」の会社に勤めるようになった藤木は、とある公休日に、石田と一緒に安い家を捜しに出かける。

家賃10円という破格の家を見つけた藤木であったが、言葉巧みに、今度、嫁が上京して来るという石田にその物件を横取りされてしまう。
しかし、その家は、近所でも評判のお化け屋敷だという。

話を聞いたしん子は、藤木にお化けになって、石田を追い出させ、自分達がその家に住もうと提案するのだった。嫌々ながら、お化けの格好をして屋敷に出かける藤木。

一方、藤木夫婦の住まいに忍び込んだものの、すぐにしん子に見つかってしまった間抜けな泥棒(高勢実乗)は、すごすごと隠れ屋に帰って来る。
その隠れ屋こそ、あのお化け屋敷だったのである。

屋敷では、田舎から上京してきた石田の新妻澄子(霧立のぼる)とその父親(川田義雄)が、石田と一緒に夜を迎えようとしていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

真珠湾攻撃の年に作られたドタバタコメディの秀作。

全編アイデアに満ちあふれ、エンタツも身体をはった大活躍で、小品ながら、とにかく面白く出来ている。

特に冒頭の、土砂降りの雨の中でアチャコと出会うまでのシークエンスは、畳み掛けるようなアイデアの連続が素晴らしい。

エンタツが、チャップリンのような動きだけで見せて行くのがすごい。

アチャコと出会ってからは、互いのしゃべくり漫才が基本となるので、動き的にはおとなしくなってしまう。

それを補うように、三益愛子が突然唄いだしたり、亭主を尻に敷く、恐妻ぶりを発揮し出す面白さで見せている。

お化け屋敷のシーンは意外と平凡だが、夜、新妻の横で、一人、椅子を並べて寝ようとするエンタツの動きがあまりにおかしいので、横で寝た振りをしている霧立のぼるが、身体を震わせながら笑いを堪えている様子がはっきり写されており、それが観ているこちらの笑いをも誘う。

時代色も興味深いが、斎藤寅次郎監督のみならず、エンタツ、アチャコらの才能の一端をうかがい知る事ができる貴重な作品といえよう。