TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

青春航路 海の若人

1955年、東映東京、舟橋和郎脚本、瑞穂春海監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

いきなり「森永チョコレートコンビ」として、中村錦之助と美空ひばりの名前が並んで登場するのが異色。

どうも、当時、菓子メーカーのCMアイドルとして二人が起用されていたという事らしい。
ひばりの方は、同年の東宝作品「ジャンケン娘」の方では、確か、明治チョコレートを持っていたので、ライバル両社のCMに出ていた事になる。

名船長だった亡き父親を持つ青年、山里英一郎(中村錦之助)は、自らも海の男になるため、商船学校の生徒として寮生活を送っていたが、何となく風紀が弛んだ寮の雰囲気に馴染めないものを感じていた。

先輩に当たる宮崎(高木二朗)に退学しようと思っていると相談に行くが、宮崎の妹で女学生の雪枝(美空ひばり)と共に激励され、心を入れ替えた英一郎は、熱血漢の同室者、高峰(南原伸二)と共に、寮生活の革新運動を始める事を誓い合う。

そんなある夜、港湾倉庫の警備員のバイトをしていた英一郎は、車から飛び下りて足を挫いた芸者、力丸(田代百合子)を、しつこく絡んでいたチンピラの田岡(星十郎)から助けて、家までおぶって帰してやる。

この時、英一郎は、かねて、雪枝からもらったパーカーの万年筆を力丸の家で落としてしまっていたのだが、後日、自分の布団の下から見つかったと、うっかり力丸が、かねてから英一郎らの革新運動に反感をつのらせていた寮仲間の横井(船山汎)らに、誤解されるような言葉と共に渡してしまったから大変な事になってしまう。

やがて、寮の自治委員長に選ばれた英一郎は、他の寮生達の直中で、横井らから、その万年筆を証拠品として提示され、芸者との関係に付いて詰め寄られるのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼


気の良い芸者が絡んで来る所など、「青い山脈」などと似通っている面もあるが、ユーモラスな雰囲気はなく、全体的にかなり生真面目で硬い感じの青春ものになっている。

錦之助は、終始、悩んでいるような青年を演じており、明るく陽気な雰囲気は一切ない。

劇中で、ひばりが一曲唄うのは自然な感じだが、本作では錦之助も唄っている。
「海の若人の唄」という勇壮な曲である。
テーマソングのように、劇中、何度か唄われている。

級友達との対立、誤解による主人公の孤立、やがて和解…という、割とありふれたパターンではあるが、青春ものとしてはこれで良いのだろう。
だが、正直な所、誤解を受けて、それをきっちり反論できない英一郎の、どこか優柔不断というか、消極的な姿には苛立たしさを覚えないでもない。
男性の目から見ると、ちょとふがいない男と見えなくもないが、女性の目から見ると、それが母性本能をくすぐられるようなキャラクターとして、意図的に造形されているのかも知れない。

クライマックスで、駿河湾に漕ぎ出したカッターが、突然の嵐に襲われるシーンは、ミニチュア特撮で表現されている。

現代劇に出ている錦之助というのも珍しいが、この頃の彼は、正に紅顔の美少年という感じで、なかなか、学生服や練習生の格好が似合っている。(首から下の体型に対し、異様に頭が大きいようにも見えるが、童顔なので、子供体型と解釈すれば良いのだろうか?)
途中、一ケ所だけ、英一郎が着物に着替えるシーンがあるが、さすがにビシッと決まっている。

ひばりの方もセーラー服姿で初々しい。

緑川教官に宇佐美淳、信州に住む英一郎の母親に英百合子、飲み屋の親爺に山茶花究、そこの手伝いの娘に中原ひとみなどが登場する。

熱血漢の高峰を演じる南原伸二(宏治)も、印象的。