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里見八犬伝 第一部 妖刀村雨丸

1954年、東映京都、滝沢馬琴原作、村松道平脚本、河野寿一監督作品。

東映娯楽版として、毎週封切られていた、一本一時間程度の子供向け時代劇。
本作は、五部作の一本目に当たる。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

岩肌を思わせるゴツゴツした壁面に東映の三角マーク。
ページをめくるように現れるタイトルも洒落ている。

冒頭、絵で、犬の八房と共に山にこもった伏姫が腹を斬った所、その腹から八つの珠が出現し、空へ舞い上がった逸話を説明する。
それから二十年の月日が流れ…。

大塚村に住む浜路(田代百合子)は、自らが所持していた家宝の刀、村雨を滸我御所に献上し、仕官の機会を得ようと考えていた犬塚信乃(東千代之介)と許嫁の間柄であったが、強欲な養父母の蟇六(渡辺篤)、亀篠(初音礼子)の策略によって、代官の内室にさせられる計画が進行中であった。

「孝」の文字の入った水晶珠を持ち、腕に花に似た痣のある信乃は、同じように「義」の文字の入った珠を持つ犬川荘助(小金井修)と義兄弟の付き合いをしていたが、世話をしていた糠助じいさんの臨終の間際に立ち会う事となる。
じいさんは、自分には現八という幼い頃分かれた息子がおり、その息子にも首筋に痣があり水晶珠を持っていると言い残し息絶える。

一方、自らも浜路に気のあった鎌倉武士、網乾左母二郎(小柴幹治)は、亀篠から信乃殺害をそそのかされ、その計画に参加するが、暗殺そのものは失敗したものの、信乃の目を盗んで村雨を自分の刀とすり替えてしまう。

信乃は、そのすり替えられた刀を本物と思い込んだまま、滸我御所に旅立つが、浜路の方は養父母から策略を聞かされ、信乃を慕って夜逃げする。

しかし、めざとくそれを発見したのが網乾左母二郎。
言葉巧みに山中に連れ込んで思いを遂げようと計ったが、すんでの所で浜路は逃げ出し、崖から落ちてしまう。

網乾左母二郎の方も、突如出現した犬山道節(月形鉄之介)との戦いに破れ、持っていた村雨を奪われてしまう。
さらに、その刀の名を聞いて草むらから現れた犬川荘助も、道節に襲いかかるが、道節の妖術に破れさってしまう。
しかし、道節が落として行った珠には「忠」の文字の入っていた。

城に到着し、村雨を城主に献上しようと差し出した信乃であったが、その剣が偽物と発覚し、家臣達から取り囲まれてしまう。

ここで、おめおめ斬り殺されれば、身の潔白の証しようがないとばかりに、信乃は、向って来る家臣達と大立ち回りを始める。

思いのほか腕の立つ信乃に恐れをなした城主は、何故か牢に入れられていた犬飼現八(中村錦之助)を放免し、信乃に立ち向かわせるのだった。

天守閣の天辺に登り戦う信乃と現八…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

前半部分は、男女の色恋沙汰を中心としたエピソードで、かなりのんびりした展開という事もあり、退屈に感じるが、中盤、道節が出現して来る辺りから、シンプルながらトリック撮影も登場し、伝奇時代劇の様相をみせはじめる。

妖刀村雨は、鞘から抜くと、刀身から水気が立ち上る様がトリック撮影で表現されている。

中村錦之助演ずる現八が無言で登場して来る所など、「待ってました!」とかけ声の一つもかけたくなるようなタイミング。

天守閣のシーンでは、本当に二人の若者が、瓦をガシャガシャ鳴らしながら戦っており、見ごたえがある。

ぜひとも次が観たくなる、絶妙の終わり方である。

御所の家臣として、名悪役、吉田義夫が登場する。