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忍者秘帖 梟の城

1963年、東映京都、司馬遼太郎原作、池田一朗脚本、工藤栄一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

天正15年、羽柴秀吉の「忍者狩り」の命により、伊賀の里は壊滅の危機にさらされる。
伊賀忍者、葛篭(つづら)重蔵(大友柳太郎)は、父母を惨殺され、妹のあゆら(立川さゆり)も、暴行された上、自害したのを目の当たりにしながら、赤ん坊を背負った師匠の下柘植次郎左衛門(原建策)、風間五平(大木実)ら、わずかな仲間と共に、かろうじて里から逃げ延びる事に成功する。

15年の月日が過ぎ、隠れて秀吉への復讐心を秘かにたぎらせていた重蔵の元に、美しい娘に成長した木さる(本間千代子)と共に、次郎左衛門が訪ねてきて、堺の今井宗久(三島雅夫)が、秀吉暗殺を依頼していると告げる。

今井宗久に会いに行った重蔵を待ち受けていたのは、美しい小萩(高千穂ひづる)という娘であった。

しかし、彼女に指定された東福寺の愛染堂には、漁師上がりの若者、雲太郎(河原崎長一郎)や、野武士崩れの松倉蔵人(阿部九州男)がいるだけで、何故か、廻りは大勢の捕り手たちに取り囲まれていた。

一方、三年前、許嫁だった木さるを残し、仲間の元から姿を消していた五平の方は、下呂庄兵衛と名乗り、京都所司代前田玄以(菅貫太郎)に、何食わぬ顔で仕えていた。
玄以は、そんな五平の素性を見破っており、甲賀の摩利洞玄(戸上城太郎)と共に、秀吉暗殺を企てる重蔵殺害の命令を下すのだった。

表面上、今井宗久の養女である小萩の本当の姿は、甲賀の重蔵の弟子に当たるくノ一であったが、ひた向きな重蔵の人柄に徐々に惚れ込んでいき、彼を殺害せよという洞玄からの命令に背くようになっていく…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

1999年に篠田正浩監督によって再映画化された「梟の城」と、同一原作の最初の映画化作品である。

時代が変わり、生きる場所を失っていった忍者達を待ち受ける様々な生きざまが描かれている。

山田風太郎の忍法帖シリーズや、市川雷蔵主演の大映作品「忍びの者」(1962)、はたまたテレビの「隠密剣士」(1962〜)などで巻き起こった、空前の「忍者ブーム」を背景にして作られた作品だと思われる。

ストーリーが不鮮明で、退屈な出来(もちろん、個人的にはという意味)となった篠田版「梟の城」に比べると、本作は実に分かりやすく描けている。(本作を観て、はじめて、ストーリーの基本的な流れが理解できた程)

「秀吉暗殺」というのは、あくまでも一つのエピソードというか、象徴的な意味合いでしかなく、基本にあるのは、忍者の生き方である。

大人である五平にたぶらかされたり、父親を失い絶望の縁に立たされながらも、若い雲太郎との出合いに、明るい未来を感じさせる、屈託のない木さる。

社会の裏に潜む忍者の生活を嫌い、平穏な生活と立身出世を願う五平。

復讐心の空しさを悟り、自らを愛してくれる女と、敵味方の立場を超えて、新しい生き方を選ぶ重蔵。

これらメインの人物の他にも、長年の貧窮生活から、忍者としてのプライドも技術も精神力も失ったと、かつての仲間に揶揄された老忍、名張りの耳(花沢徳衛)が選んだ道など、興味深いエピソードで、途中も飽きさせない。

そうしたテーマの面白さもさる事ながら、やはり本作の魅力は、その忍者対決の娯楽性にあるといえよう。

重蔵対五平、重蔵対小萩、重蔵対摩利洞玄など、各々の見せ場に工夫が凝らされており、楽しめる。

また、伏見城に潜入する重蔵のシーンも、なかなかリアルに描かれており、忍者ファンとしては嬉しい限り。

テレビアニメ「風のフジ丸」の最後のコーナーとしてお馴染みだった「忍術千一夜」の司会でもお馴染みだった本間千代子がかわいらしいくノ一、また、「隠密剣士」こと、大瀬康一夫人である高千穂ひづるのくノ一姿も魅力的。

「チャンバラトリオ」のかしら、南方英二も伊賀忍者の一人として、チラリ登場している。