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快傑黒頭巾

1958年、東映京都、高垣眸原作、小川正脚本、松村昌治監督作品。

雑誌「少年倶楽部」連載だった少年向けヒーロー時代劇を映画化した人気シリーズの第7作目で、本作からカラー作品になっている。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

いきなり画面一杯に広がるきれいな富士山をバックに、白い馬に跨がった黒頭巾が画面左から登場。
「久しぶりだな〜…、何時見てもいい山だ」と、黒頭巾が霊峰に頭を下げて、松島トモ子が唄う主題歌「快傑黒頭巾が流れるタイトル…、まさに、これぞ、子供向けヒーローものといった見事な演出!

その黒頭巾は、新式鉄砲の設計図を運ぶ幕府の行列を狙う長州の浪士達の様子を、峠の上から発見する。
設計図の入った箱を奪おうとした浪士達は、それが偽物で、罠にはまった事に気付くが、時すでに遅し、リーダー格の宮部鉄之助(尾上鯉之助)は、仲間を先に逃すも、自分は逃げ遅れてしまう。

そこへ現れたのが我らが黒頭巾!宮部を馬に乗せると、何処へともなく走り去って行く…。

その後、海路で江戸の間部主税介(山形勲)の元へ届けられていた設計図は、屋敷に忍び込んでいた黒頭巾によって奪われてしまう。

江戸の雑踏の中、角兵平獅子を演じた後、上方で人気だという「快傑黒頭巾」の歌を唄って喝采を浴びる友之助(松島トモ子)、千代(植木千恵)、その姉のお光(桜町弘子)の三人姉弟。

しかし、黒頭巾を捜す岡っ引きの赤鬼の権太(沢村宗之助)と手下の三次(星十郎)は、その姉弟に苦い顔。

その三人姉弟が住む百文長家には、美しいお光に憧れる左官の兄弟(夢路いとし、喜味こいし)や、浪士取り締まり役、間部の息のかかる幕府の隠密おぎん(長谷川裕見子)、そして、八卦見の天命堂と艶歌師の与作兄弟が住んでいたが、その兄弟こそ、実は黒頭巾の世をはばかる仮の姿(一人二役)で、今は宮部鉄之助をかくまっていた。

設計図を薩摩の益満休之助(加賀邦男)に渡すため、与作に化けて夜の町に出かけた鉄之助は、折から、市中を手配していた見廻隊らによって発見され斬られてしまう。

取り戻した設計図を解読するには、様式の数学の知識が必要と分かった間部は、天城山中に隠とんしていた、倒幕派の数学者、山鹿士行(志村喬)と、高弟の大槻東橘(永田靖)を捕らえてしまう…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

子供向けとは思えない程、堂々とした大作である。

どうやら、細部の設定などは毎回微妙に異なりながらも、基本的なストーリー展開は、シリーズ全て、ほぼ同じ事の繰り返しだったようだ。

黒頭巾の正体は、学者山鹿士行の一子で、山鹿弦一郎という。
この基本ラインは毎回同じ。

父親の専門分野が、事件の内容により、毎回違っていたりする程度である。

黒頭巾は、鞍馬天狗のように、白馬に跨がった黒覆面の剣士。
腰には二丁拳銃を下げており、それをガンマンよろしく、クルクル廻してみせたりする。

完全に子供向けのヒーローなのだが、与作に思いを寄せるおぎんの存在などもあり、色恋沙汰などの要素も描かれており、大人が観ても楽しめるように作られている。

東映時代劇全盛期の頃の作品だけに、江戸の町の屋外セットなども本格的で、スケール感がある。

後半では、新式銃を秘かに作っている伊豆の洞ケ島という小島が舞台となり、海賊なども登場してきて、さながら「インディ・ジョーンズ」か「007」風の展開。

クライマックスで、仮面を冠った黒頭巾が、高笑いをしながら正体を現す所など、旗本退屈男を意識したような演出。
本作では、後半、素顔をさらした山鹿弦一郎の姿で戦うので、ちょっと、黒頭巾っぽくない感じもする。

全体的に、「御都合主義丸出しの子供騙し」といってしまえばそれまでだが、あくまでも、その荒唐無稽さを楽しむ「連続冒険もの」と割り切って観る作品だと思う。

松島トモ子ちゃんが劇中、子供達と「黒頭巾の唄」を合唱するシーンなど、こちらも思わず口ずさみたくなってしまう楽しさがある。

お光役の桜町弘子は清楚な美しさで魅力的だし、「ゴジラ」(1954)でお馴染みの志村喬の登場も嬉しい。