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快傑黒頭巾

東映お馴染みの黒頭巾シリーズで、カラー作品である。

鞍馬天狗でも杉作役を演じた松島トモ子ちゃんが、本作でも角兵衛獅子の男の子役として登場しており、「黒頭巾 危機一髪」に登場した植木千恵ちゃんも妹役で登場している。

この植木千恵ちゃんは、御大片岡千恵蔵さんの娘さんというのを今回初めて知った。

いとこい師匠の全盛期頃の掛け合いが見れるのも珍しく、こいし師匠がこの時期から早口で言い返す芸が確立している。

ボケとツッコミが明確に分かれている風ではないのだが、これは脚本通りだとすると、普段の漫才の型とは別物なのかもしれない。

今回も、人目の多い長屋に人を隠すという設定になっており、しかも隣は好奇心旺盛な子供がいる部屋と、大人の感覚で見ると不自然極まりないのだが、子供客には親近感もあり、ちょうど良いハラハラ感を出す設定なのかもしれない。

今回も、艶歌師に惚れている悪人と縁がある年増女が登場し、揉め事を起こすトラブルメーカー風に描かれているが、子供向けの話に情婦のようなキャラクターを出されても、子供には嫌なおばちゃんと言う以上の理解はできないと思う。

しかも今回は男女の逢い引きのようなシーンまであり、子供は退屈だったのではないかと想像する。

子供を連れてきた母親がターゲットだったのだろうか?

黒頭巾が普段は変装をして市井の庶民として紛れ込んでいるというのは、「多羅尾伴内」などと同じ趣向で、おそらく「怪盗ルパン」や「スーパーマン」などからの影響ではないかと思うのだが、黒頭巾では、劇中の登場人物の中でもその変装に気づいている者がいるというのがちょっと特殊ではないかと感じる。

さらに、見回り隊の監視が厳重な江戸市中に大事な図面を持ったお尋ね者を、警護もつけず一人で行かせるなど、ハラハラを作るためとはいえ間が抜け過ぎていると言うしかなく、そのわざとらしさというかご都合主義が子供向けと言うことなのだろう。

クライマックスは、「多羅尾伴内」か?と思うほど趣向がそっくりになっている所がご愛嬌だろう。

子供向けとは思えない程、堂々とした大作である。

どうやら、細部の設定などは毎回微妙に異なりながらも、基本的なストーリー展開は、シリーズ全て、ほぼ同じ事の繰り返しだったようだ。

黒頭巾の正体は、学者山鹿士行の一子で、山鹿弦一郎という。
この基本ラインは毎回同じ。

父親の専門分野が、事件の内容により、毎回違っていたりする程度である。

黒頭巾は、鞍馬天狗のように、白馬に跨がった黒覆面の剣士。

腰には二丁拳銃を下げており、それをガンマンよろしく、クルクル廻してみせたりする。

完全に子供向けのヒーローなのだが、与作に思いを寄せるおぎんの存在などもあり、色恋沙汰などの要素も描かれており、大人が観ても楽しめるように作られている。

東映時代劇全盛期の頃の作品だけに、江戸の町の屋外セットなども本格的で、スケール感がある。

後半では、新式銃を秘かに作っている伊豆の洞ケ島という小島が舞台となり、海賊なども登場してきて、さながら「インディ・ジョーンズ」か「007」風の展開。

クライマックスで、仮面を冠った黒頭巾が、高笑いをしながら正体を現す所など、旗本退屈男を意識したような演出。

【以下、ストーリー】

1958年、高垣眸原作、小川正脚色、松村昌治監督作品

草原を白馬に跨り疾走する黒頭巾(大友柳太朗)は、ふと眼下に見える道を近づく行列に気づく。

同じ行列を高台から発見した侍は他にも2人おり、あの馬の背の小包は新式銃だな、今度下田の領事が幕府に献上したとうやつだ、ついでにあれも貰って行くか?と話し合う。

しかし、倒幕派の長州藩士・宮部鉄之助(尾上鯉之助)は、つまらん欲を出すな、我々の目的はあくまであの馬の背に乗っている木箱だ、この中にある新式の設計図、あれさえ手に入れば、話が長州藩で拡散の新式はいくらでも作り出せるのだ、良し!というと、近くに集まっていた長州藩の仲間たちと合流し、良いな?敵はあくまでも設計図、他のものには目をくれるな!と言い聞かせ、では手筈通り行くぞ!それ!と号令し、一同行列襲撃に向かう。

ところが、二手に分かれ行列を襲い、宮部は馬の背に乗せてあった木箱の綱を切って地面に落とすが、落ちた衝撃で蓋が開き、中身は石ころだったので、罠にかかったと気づき、仲間たちに引け!と命じる。

一方、行列の指揮を取っていた大野弥八郎(神田隆)は、逃すな!引っ捕えい!と命じる。

宮部は、ここは引き受けた逃げろ!と仲間たちにいうと、1人で敵と戦い始める。

なんとか自分も逃れようとした宮部だったが、追いついた大野が右腕に斬りつけ、宮部は倒れて追い込まれる。

その時、襲い掛かろうとした敵は何者かに銃で撃たれ悲鳴をあげる。

見ると、二丁拳銃を発砲しながら白馬に乗って駆け付けたのは黒頭巾だった。

大野は、あ、黒頭巾!と驚くが、馬上から手を差し出された宮部はその意図を察し、馬上に引き上げられると一緒にその場を脱出する。

江戸城 新式銃を目の前にした徳川慶喜(小柴幹治)は、間部、設計図の方はいかがいたした?と問いかける。

間部主税介(山形勲)は、万一のこともあってはと、設計図の方は密かに海路で江戸に送らせましたれば、今夜半には到着いたすかと…と答える。

今夜半か…と慶喜は納得し、されば今夜は間部の屋敷にてひとまず保管致させようと考えますと松平定敬(香川良介)が答える。

なにぶん、十郎を取りました堅牢銃も不定の輩に襲われて、あまつさえ、取り押さえようとした一味の首領も黒頭巾のために奪還させられましたる始末なれば…と定敬が説明すると、黒頭巾とは?と慶喜が聞く。

勤王派の浪士を助けて今日の街に暗躍する謎の人物にございますが、その者はどうやら江戸に潜入せし模様にて…と定敬は答える。

この江戸に?されば間部、設計図を奪われぬように、警戒を厳重にいたせよと慶喜は命じる。

その夜、間部邸に設計図を入れた木箱が到着する。

待ち受けていた間部は、一緒に待っていた大野にその木箱を屋敷内に運び入れさせようとするが、その大野が持った木箱は屋根の上に潜んでいた黒頭巾が綱を投げて奪い取ってしまう。

上を見上げた家臣たちは、曲者と騒ぎ出し、間部も、黒頭巾!と驚く。

追え!と命じられた家臣たちは一斉に屋敷の裏側に向かうが、背中に木箱を背負った黒頭巾は、そんな追手たちを嘲笑うかのように、塀を飛び越え、白馬に乗って去って行く。

翌日、あの設計図が討幕軍の手に渡れば、まさに天下の一大事、市中見廻組の名誉にかけても速やかにだかんせよ!と号令がかかり、奉行所でも、町奉行所の名誉にかけても、必ず黒頭巾を召し捕り、設計図を奪い返すのじゃ、良いか!と手配が行き渡る。

同心たちは岡っ引きたちを集め、良いか、黒頭巾はお尋ね者の長州浪人宮部鉄之助を匿っておる、江戸市中を虱潰しに調べ尽くすのだ、わかったか!と命じるが、赤鬼の権太(沢村宗之助)の子分三次(星十郎)は、その話中も鼻くそをほじってばかりいるので、権太が慌てて注意する。

市中に繰り出した権太だったが、浅草寺の人混みの中に来た時、どうもそれらしいのは見当たらないな、全く見当がつかないなとぼやくので、親分、この人混みの中にね、黒頭巾がいるわけがないでしょうと三次が正論を言うと、そんなことは言われなくてもわかってんの!と権太はへそをまげる。

そんな2人の話を間近で開いていたのは、そこに店を開いていた易者の天命堂(大友柳太朗)で、うん、金運縁談、失せ物判断、黙って座ればぴたりと当たる、日本一の天命堂…などと呟きながら、岡っ引きたちの動向を目で追う。

権太と三次は、人混みの中で芸を披露している角兵衛獅子の子供たちを見つける。

早苗(大川恵子)が太鼓を叩き、横笛を吹いていた友之助(松島トモ子)も、妹の千代(植木千恵)と共に、その場で曲芸を披露し始める。

おひねりが見学客から投げ入れられると、友之助が、では只今より、今上方で流行っている黒頭巾の歌を歌いますというと歌い始める。

これには見ていた権太と三次も嬉しそうに調子を合わせ、それ!などと合いの手を入れていたが、途中で権太が黒頭巾の歌だと気づくと、おい、やめろ!と三次と友之助たちに怒鳴りつける。

おい、なんて言う歌を歌いやがるんだ!と権太は、角兵衛獅子の子供達に詰め寄る。

しかし友之助は、だっておじさん、上方じゃ大流行りなんだぜ、それにお客さんだって喜んでくれるしさと言うので、やかましい!ちょっと番所まで来な!と権太は十手を出して見せたので、どうかお許しをと早苗が詫びてくる。

おめえは何だ?と三次が聞くと、姉でございますと言うので、何、姉だ?じゃあお前も一緒に来い、来るんだ、来るんだと権太が早苗の手を取って連れて行こうとする。

すると末っ子の千代が、何をするんだ!お姉ちゃんをいじめると承知しないよと妨害してくる。

権太は、三公、子供達を連れてこい!と命じて、三姉妹を連行しようとするが、その前に立ち塞がったのは天命堂だった。

お?何だてめえ!と権太が聞くと、はい、この子達と同じ長屋に住む大道易者の天命堂ちゅうものだが、相手は子供のこった、何とか許してやってくだされと頼むので、うるせえ!邪魔するとおめえも一緒に引っ張るぞと三次がつかみかかると、あっさり交わされ、権太も交わされたので、手出しやがるかと権太は十手を見せて脅すので、親分、わしは何も手向かいはせん、ただこの3人を助けてやってほしいと…と天命堂は弁明するが、やかましいやい!と権太が十手で殴りかかってきたので、天命堂は押し返すしかなかった。

三次もかかって来たので、親分、暴力はいかん、暴力は!と言いながら、天命堂はおどけたふりをしながらあっさり倒してしまう。

そこに、権太、どうした?とやってきたのは、市中見回り組の黒川主膳(阿部九洲男)だったので、黒川の旦那、あの野郎が!と権太が天命堂を指したので、何!と黒川たちは天命堂の方に迫ってくる。

とんでもない、わしゃ何も…と天命堂は言い訳するが、あんえ旦那ね、おいつがね、あの三人引っ立てようとしたら邪魔しやがったんだと三次が黒川に説明すると、すみません、ちょっと2人お願いしますと2人の見廻組に手伝いを頼むと、ばか!と天命堂を罵倒し、子供三人を捕まえに行く。

ちょっと待ってくださいよと天命堂は呼びかけるが、黒川がその襟首を捕まえ、こら!御公儀の邪魔立てを致すと一緒に引っ立てるぞ!と睨みつける。

わしはそんな大それたことは…と天命堂は弁解すると、じゃあ、このくらいで許してやるといい、黒川は天命堂を突き放す。

その場に倒れた天命堂に、権太も、以後気をつけろよ!と捨て台詞を吐き、三次もふざけるなよ、馬鹿野郎!と天命堂を蹴って、連行される越後獅子兄弟たちと一緒に去ってゆく。

越後獅子を連行する途中、おい権太、貴様ほどの男がこんな雑魚どもに関わり合っていて、肝心の黒頭巾の目処はまだつかめんのか?と黒川が叱るので、だって旦那、どっから手をつけたらいいのか、何しろ手掛かりというのがねえんですからねと権太は言い訳する。 それにあっしは、まだ黒頭巾てやつにお目にかかったこともねえ…、ね…、ね…と権太が言いかけた時、目の前の物陰からその黒頭巾が出現する。 な、何やつだ?と黒川が聞くと、お分かりにならんかな?と言いながら近づいてきたので、てめえは黒頭巾!と権太が指摘すると、いかにも黒頭巾!と名乗ったので、見廻組は全員刀に手をかけようとするが、その時、お待ちなさいと言いながら、黒頭巾は腰の二丁拳銃を手に取ると回してみせる。 騒がれぬために、その三人、拙者の前で釈放していただこうと黒頭巾は迫る。 やむなく三次は3人の捕縛を解き、黒頭巾に駆け寄った3人に、さ、早く行きなさい、おじさんが送ってあげようと黒頭巾は声をかけ、一緒にその場を立ち去る。

見回り隊が後を追おうとすると、二丁拳銃で黒川の扇子や権太たちの十手を弾き飛ばした黒頭巾は、念の為に申し上げとくが、お見送りには及びませんと…と言い残し、子供たちには、君たち、お姉さんのいうことをよく聞いていい子になるんだぞ、黒頭巾のおじさんは賢い子供たちの味方なんだ、危なくなったらいつでも」助けに出てくるよ、じゃあ、早くお行きなさいと言い聞かす。

早苗はありがろうございましたと礼を言い、友之助も黒頭巾のおじさんありがとうといい、千代もありがとう!というので、うん、早く行きなさいと黒頭巾はいう。

3人の子供が駆け去ってゆくと、後ろを向いて見回り隊を牽制しながら天に向けて銃を撃った黒頭巾だったが、その銃声に呼応して白馬がやってきたので、それにまたがって黒頭巾も去っ他ので、権太たちはちくしょうと吐き捨てる。

長野に帰り着いた早苗たちを、長屋の左官兄弟たち(夢路いとし、喜味こいし)は、お帰りなさい、お疲れになったでしょうと労う。

あの、なんでしたら、足を洗い、あの水!などとしつこいので、早苗はいいですよと遠慮するが、友之助が、おじさん、女の人に随分親切なんだねと揶揄ってくる。

そりゃそうやと兄の方がつられて答えるが、途中で気づいてええっ!と口篭ってしまう。

子供達が自分たちの部屋に向かうと、ええなあと見送っていた弟の方が、いやらしいやつや、こいつはほんま…などと言ってきたので、いやらしい?お前がいやらしいんやと兄弟喧嘩を始める。

子供に揶揄われて恥ずかしいと思わへんか!と弟が聞くと、な~んともないわと兄が言うので、情けないやつやな、お前がお嬢さんをモノにしようとしているその根性がいたわしいわと弟が嘆くと、おい、何言うてん、ほな、俺があのお嬢さんを物にしようと思ってるとお前思うてるのか?と兄が聞くので、ほな俺が思うてると思うてると、お前思うてると思うてるのか?と弟が早口でいうと、そんややこしいこと言うな、今頃な、お前らのような下賎な輩にはこんな感情は分からんわと兄は一人で納得し、俺はやな、あのお嬢さんに似合う、素晴らしい男性が現れるまで、そこらのいやらしい男性を近づけとうないんやと兄は言う。

あら?こら、いやらしいとは何や!誰がいやらしいんやと弟が聞くと、誰が嫌らしいって、こないでもわかるやないか、本人の目の前ではっきり言えるか?と兄が聞くので、そらそうやが…、言うとるやないか!と弟が突っ込む。

怒りいな、この清らかな美しい恋がわからんか?と兄が宥めると、それはわかるがな、お前は目がなっとらん、お嬢さん見るんやったら、もっと夢見るような目せい、夢見るようなと弟が指摘する。

どんな瞳や?と兄が聞くと、瞳がこう…と寄り目をしてみせたので、お前はあんまり良い夢見たことないなと兄が突っ込む、彼女を思うたら夜もろくろく眠れん、こういう女性に会うた事あるのか!と弟が突っ込む。

よくあるか?と考え込んだ兄は、兄さんはどうや?と聞き、誰でもやで、あの顔でにっこり笑われてみ、頭しばらくポーッとするんやと二人の意見がそろう、そもそもあのおぎんさんとは何もんや?と弟が聞く。 何者て知らんのか?と兄が聞くと、これか?と弟が指を鍵型にして、スリを暗示すると、ちゃう、これやと兄はチョキの指を出す。

これ?と自分もチョキの指をしてみた弟が不思議がると、なんでも幕府のお偉方のこれって話やと兄は言う。

幕府のお偉い方がこんな汚いところへ?と弟が不思議がると、こんなところでこれしたらこれやと、兄は指を鉤形からチョキにして言うので、これからこれかと弟も指を同じ形にして聞く。

これてなんやと弟がチョキの指をして聞くと、これはやな…と兄は教えかけ、ふと背後の人の気配を感じたので振り返ると、そこに立、でもきっと与作さんみたいな人だと思うよ、 その時、手風琴を奏でながら歌を歌う艶歌師の良作が呑気節を歌いながら帰ってきたので、おぎんは振り返り、矢作さん!と呼びかける。

おお、おぎんさん!と笑顔で返した与作に、もうお帰り?早いわねとおぎんが駆け寄る。

いやあ、商売はこれからですが、兄貴と一緒に飯食おうと思ってなと与作が答えると、あら、天命堂さん、まだ帰ってないわよとおぎんが教え、ねえ与作さん、私のうちで一緒にご飯食べようとしな誰か買ってきたので、うん、でも兄貴の飯の支度があるんで…と与作はやんわり断る。

さらに、良作は、早苗が水桶を運ぼうとしているのに気づくと声をかけ、持ってあげると親切ぶりを示す。

早苗は、でも…と躊躇するが、良いよ、持ってあげると良作が言うので、すみませんと感謝する。

そんな二人の仲睦まじい様子を見たおぎんは、ふん!と言う。

天命堂の隣から飛び出してきた友之助は、な~んだ、良作さんが持ってきてくれたの、今、私が助けに行こうとおもたんだけど、でも良作さんならかえって良かったですね、姉上?とおませなことを言うので、早苗は恥ずかしがって家の中に飛び込んだので、与作さんの方だってまんざらでもなさそうだなと言うので、こらっ!と良作は怒ってみせ、大人の真似するんじゃないというと笑い出す。

与作から水桶を受け取った友之助は、今日天命堂さんが私たちを庇って、見廻組の人に酷い目に遭わされたのと言うので、え、兄貴が?と良作は驚き、そこにやってきた千代も、それから私たち3人、見廻組の侍に連れて行かれたんだ、でも途中で黒頭巾のおじさんに助けてもらった!と言うので、黒頭巾?と与作が聞くと、黒頭巾も良い人だよ、頭巾をつけてるから顔はわからないけど、きっと与作さんみたいな人だと思うなと千代はいう。

それを聞いた与作は笑いだし、わしが黒頭巾か、お尋ね者と間違えられたら大変だなと困惑する。

自分お部屋に入った与作は、異常がないのを確認して押し入れを開けると、そこには宮部鉄之助が座り込んでおり、うたた寝をしていた。

与作は宮部に頼むというと、互いに着物を脱ぎ出す。

夕食時、早苗からご飯をよそってもらった友之助は、黒頭巾って素晴らしい人だな、ね、姉上もそう思いませんか?と聞く。

そうねと早苗が簡単位答えたので、案外冷たいんだなと友之助は言い、姉上はやっぱり良作さんの方が…と身を乗り出してからかうので、まあ、これ!と早苗は叱る。

首をすくめた友之助だったが、ねえお兄ちゃん、黒頭巾のおじさんに頼んだら、お父様の居所だってわかるかもしれないわねとちよが言うので、お父さんの話はやめろ!私たちや母上を捨ててうちを飛び出して行った父上なんか!と友之助は怒り出す。

それを聞いていた早苗は、友之助、お父様が山に入る事情があったんです、お前はよく知らないけどとっても良いお父様なのよ、悪口いうとバチが当たりますよと注意する。

だって!と友之助が反論しようとした時、これ!姉さんに口答えするとバチが当たるぞ!と、戸口を開けた天命堂が叱ってきたので、おじちゃんこそ早く帰らないと良作さんに怒られるよと千夜が逆に注意したので、こりゃ一本参ったな!と天命堂は頭をかいて笑い出す。

戸を閉めて隣の自分の部屋に入った天命堂は、飯を食っていた宮部がお帰り!と声をかけるが、それを制して、子供達のいる隣を指差した天命堂は、兄さん、遅いじゃないかと言われたので、うん、ちょっと角の魚屋によってきたんでな、何だお前、待ってないでさきにくっちまえば良いのに、そうはいかないよ、兄さんがいないと飯はまずいやと一人芝居を始める。

案の定、壁越しにそれを聞いていた友之助たちは、勝手に叱られてるよなどと千代と面白がっていたので、これ友之助、おやめなさい、これ、友之助!と早苗が注意すると、友之助は指を唇に当て静かにするように身振りで伝える。

しかし天命堂の方も、壁越しに姉妹たちの会話を聞いていたので、笑いながら、いや、すまん、すまん、では早速いただくとするかななどと芝居をしながら、良作の衣装を着た宮部のそばに座る。

おい、薩藩の益満が江戸に来てるぞと天命堂が打ち明けると、宮部はえっ、益満さんが!と驚く。

うん、薩摩屋敷に潜んでいるが、そのうち一度折を見て会いたいと言っていう連絡があったと天命堂は伝える。

その時、突然おぎんが突然戸を開けてやってきたので、おぎんさん、何の御用かね?と天命堂が聞く。

ちょっと与作さんに…と言うので、与作の着物を着た宮部は顔を背ける。

それに気づいたおぎんは、与作さん、何も私が来たからって背中を向けることはないでしょう!と文句を言ってくる。

まあまあ…おぎんさんと天命堂が宥めに行くと、ほっといてよ!私は与作さんに話があるのよ、与作さん、何とか言ったらどう!とおぎんは言い返し、上がり込んできそうだったので、慌てた天命堂は、おぎんさん、実は与作はわしと諍いをしたんでな、決して悪いようには計らんというと、何やらおぎんに耳打ちをする。

するとおぎんは急に笑顔になり、本当?と聞いてきたので、本当だと思うと天命堂は答えると、きっとよと天命堂の肩を叩き、じゃあ!と言い残し帰ってゆく。

天命堂は急いで戸口にかんぬきをかますと、宮部に着物を脱げと命じ、自分も忙しいと言いながら着物を脱ぎ出す。

その後、与作に化けた天命堂が、川べりで待っていたおぎんに近づいて声をかけると、無理しなくて良いのよとおぎんはそっけなく振る舞う。

無理?と与作が聞くと、ええ、兄さんに勧められたから仕方なしに来たんだって言いたいんでしょう?とおぎんは拗ねてみせる。

それは違うよ、さっきおぎんさん来た時は兄貴と喧嘩したんだよ、返事もせずごめんよと与作は詫びる。

すると笑顔になったおぎんは、いいのよ、そんな子hかの、でもちょっと気掛かりだったのという。

何を?と与作が聞くと、与作さんが恋をしたんじゃないかって…とおぎんは笑う。

え?俺が恋を?と与作が驚くと、ええ、男が恋をすると恋人以外の女は女に見えなくなるって言うでしょう?とおぎんが言うので、そうかな?と与作が考えると、まあしらばっくれて、憎らしい人!早苗さんのことで胸がいっぱいなんでしょう!白状なさい!とおぎんは睨みつける。

早苗さんに?でもまだ早苗さん以外の人を見ても女に見えるところを見ると本物じゃないのかな?それに今夜のおぎんさんの姿なんか、女どころか何だか眩しんだもんなどと与作はお世辞を言うので、おぎんはすっかり喜んでしまい、そんなおだてには乗りませんよ、でも私さっき本当にどうかしていたわと反省する。

なんだか、頭がカッと熱くなってじっとしてられないの、夢中であんたん所へ押しかけて行ったのよ、ねえ与作さん、こんなこと女の方からはなかなか言い出せないものなのよ、でもあんたがどう思おうと私の気持ちは全部曝け出したいのよとおぎんが与作の体にしなだれかかって言うので、おぎんさんほどの人にそんなに思われるなんて…と、だが、おぎんさんは怖いからな…と与作は答える。

何が?とおぎんが聞くと、今をときめく間部主税介様の囲い者だって誰かがそう言ったよと与作が言うと、誰が?誰がそんな根も葉もないことを言ったの?とおぎんは問い詰める。

おぎんさん、まあ良い、そんなことはね、ゆっくり話がしたいんだと与作はおぎんの肩に手を添えて真正面からいう。

ここへかけませんか?と近くにあった材木を与作が指すと、ええとおぎんは嬉しそうに従う。

横たわった材木に腰を下ろし、すましてみせたおぎんだったが、与作は自分の方を監視しているおかっぴきの姿に気づき、そっと逃げ出してしまったので、期待して振り向いたおぎんは呆然とする。

天命堂の衣装を着ていた宮部のいる自宅に戻ってきた与作は、宮部、お主の設計図を持って、今夜のうちに薩摩屋敷に逃げ込め、益満がうまく計らってくれると伝える。

今夜!と宮部が驚くと、うんと与作は笑顔で答える。

その後、また 与作の衣装に着替え家を出た宮部だったが、おぎんが来たのに気づき、全力で逃げる。

与作さん!と呼びかけながら追ってきたおぎんだったが、家から出てきた天命堂が、おお、おぎんさん、良作と一緒だったのではなかったのかい?と聞くと、知らない!とおぎんは睨んでくる。

設計図の入った小箱を小脇に抱え夜道を進む宮部だったが、夜廻の連中などを見つけると、物陰に隠れるしかなかった。

橋を渡ろうとすると、脇の番所から出てきた三次と権太が出てきて、ちょっと待ちな!と呼び止める。

どこ行くんだ?と権太が聞くと、へい、ちょっと安下の質屋までと宮部は恥ずかしそうに答える。

さらに番所から役人たちまで出てきて、いずれの者だと問いかけてきたので、百問長屋に住む艶歌師の与作ってんだと答えると、それはなんだ?と与作が抱えていた小箱を聞いてきたので、親父の代からの掛け軸なんですよねとよねと与作はごまかす。

しかし、役人が見せてみいと命じたので、宮部が躊躇すると、権太まで見せろって言うんだよと脅してきたので、宮部はその場から逃げるしかなかた。

背後のおちにはまいたかと思った宮部だったが、反対方向から間部主税介率いる市中見回り隊が来たので、万事休すとなる。

壁際に追い込まれた宮部は、相手の刀を奪って応戦しようとするが、多勢に無勢、肩口を斬られてしまう。

それでも抵抗しようとした宮部だったが、間部に顔と体を斬られてしまう。

一方、自宅で寝ていた天命堂は、ふと夜中に目を覚まし、夢か…、宮部に間違いがなければ良いが…と呟く。

二度寝をしようとした時、戸口を叩く音がしたので、どなたじゃ?とテレビ番は問いかける。

戸口を叩いていたのは権太で、天命堂の部屋の入り口はすっかり役人たちで包囲されていた。



天命堂さんだね、実はね、お宅の弟の与作さんが、そこんところで大怪我なすってねと権太が呼びかけるが、与作が?おかしいな~、与作は今ここに寝ておりますが…と付け髭を取りながら天命堂は答える。

えっ!何だって?と権太が聞き返すと、おい、与作!おい、良作!う~ん、眠いな~と天命堂はいつもの一人芝居を始める。

それを戸口の外で聞いていた権太や三次はそれを真に受けてに待っていた。

やがて戸口が開いて、あっしが与作ですが、何か御用ですか?と聞いてきたので、お前が与作?おい、三公!と権太は子分に責任を覆い被せようとする。

でなきゃ、寝かしてもらいますぜ、どうも眠くてしようがねえんだというと、与作はさっさと戸を閉めてかんぬきをかけてしまう。

そして与作は何が起きたか悟り、しまった!と嘆く。

江戸城で宮部から奪い取った新式銃の設計図を見た徳川慶喜は、ほお…、これが設計図か、これさえあれば日本人の手で新式銃がいくらでも作り出せるわけかと感心していた。

は、それが係のものに検討させましたところ、洋式の数式でなければ、細部の計算はできざるとのこと…と松平定敬が説明したので、何?様式の数学…、さような学者は我が国にはおるまいと慶喜がいうと、畏れながら…と間部主税介が口を開いたので、申せ…と慶喜は言う。

間部は、実は私めが手がけた倒幕派の浪士と気脈を通じし学者の中に様式の数学に熟達したものがおったように記憶しておりますと申し述べる。

その者は?と慶喜が聞くと、山鹿士行の高弟・大槻東橘と申す者と真部が言うので、して今いずれに?と慶喜が聞くと、大した罪状は認められず、ひとまず釈放いたしましたが、その後は俗世と縁を断ち、伊豆天城の山中に隠遁せりと聞いておりますと間部は答える

天城山中…と慶喜は呟木、考え込む。

天城山

荒れ果てた小屋の外で米を研いでいた大槻東橘(永田靖)は、家中から、大槻!大槻!と呼ばれたので、はいと答えて家の中に入る。

家にいた山鹿士行(志村喬)ができた!と言うので、え?できましたか!と大槻は喜んでそのそばに駆け寄る。

問題はこれとこれだと設計図を見せながら山鹿は大槻に説明し出す。

つまりX分のXをウとなす、これが問題を解く鍵じゃなと山鹿は言うので、ははあ、なるほど…、とうとう先日来の難問を征服できましたなと大槻がいうと、うん…、だが一体それがどうしたと言うのだ?と山雅が言うので、先生、またそのようなこと…と大槻は呆れたように答える。

いや、わしは最近つくづく、我々の学問に疑問を抱くと山鹿はいう。

お主と二人で俗界を切ったこの山中で、ひたすらに研究する数学とは、この世の中に何の貢献するところがあるのだ…と山鹿は言う。

先生のおっしゃることはどうも腑に落ちんように存じますがと大槻は言い返し、もしこの大槻東橘へのご配慮ならば、先生、何卒、この山にやって来た当初の感激を思いこしていただきとうございますと申し出る。

王政復古の日、我々の学問によって欧米の科学をいち早く吸収するのだと…と熱弁し出すと、大槻、あの時はわしも学問に取り憑かれておったのだと山雅はいう。

3人の子供を残して妻女に先立たれたお主の苦痛をすら察することができなかったんだ、許してくれよと山鹿は詫びる。

な、何をおっしゃいます!先生こそ弦一郎様の…と大槻が言い返すと、弦一郎?バカな!わざわざ長崎まで勉学のため赴かせた…、学業を放擲して行方もしれぬ馬鹿者めが!と山鹿は嘆く。

そこにやって来たのが大野弥八郎たちだった。

どなたじゃ?と大槻が聞くと、浪士取締役間部主税介様麾下の大野弥八郎と申す者、御公儀の命により、御両名をお迎えに参ったと言うので、何、我々を?と山鹿は驚く。

これは異なことを承る、我らは浮世と縁を断ち、この山中に隠棲する世捨て人…と山雅が言うと、作用なことは我らは存ぜぬ、お召しに応ぜられるかどうか、それだけお聞きしたいのだと大野が聞くので、もちろんお断りもうすと山鹿が答えると、さようか、では仕方がないとほくそ笑んだ大野は従者たちに顔で合図をする。

従者たちは、ハッと答えると、刀を手に小屋の中に乱入し、山鹿と大槻の二人をその場で縛り上げる。

夜、橋の上から小石を川に投じていた番頭風の男は、益満!と呼ばれ、声のする方へと歩く。

すると、橋の袂から怪しげな物乞い風の男が出て来たので怪しむと、俺だ、黒頭巾だと笑顔を見せたので、なんだ、山鹿じゃないか、こりゃ人が悪いと言いながら益満休之助(加賀邦男)はそばによる。

山鹿は、今宵は見廻組の動きが活発だ、気をつけろと警告する。

益満は山雅とは違う方向に向いて、長州の宮部が切られての走っているな?と聞く。

うん、お主の所へ設計図を持たせてやる途中だったと山鹿は教えると、そうか…、で、奪われた設計図は今いずれに?と益満は問う。

さあわからん…、ひょっとするともうこの江戸にはないかも知らんと山鹿はいう。

何!すると山鹿士行先生の噂も…と益満が言うので、父上が同化されたと?と山鹿が驚くと、お主、知らなかったのか?お主の父上と高弟の大槻東橘殿が、天城の山中から何者ともわからんものに拉致されたとの事件…と益満が教えると、おい、それは本当か!と山鹿は聞いてくる。

山鹿、士行先生が黒頭巾の父親であることを間部に悟られては大変なことになるぞ…と、益満は警告する。

わかってる…と山雅が答えると、ではまた会おう、今夜は上野の山で同志の密会があるんだと益満は声をかける。

すると、同志の密会?と山鹿が聞き返したので、うん、どうかしたのか?と益満が聞くと、気をつけろ、情報が敵に漏れてるぞ、見回りの動向がどうもおかしいと思っていたが、それでやっとわかった、敵は確かに勘づいてるぞと山鹿は指摘したので、益満は、何!と驚く。

その頃、上野の山に集まっていた同志たちは、益満さんはどうしたんだろう?いやに遅いじゃないかと案じていた。

うん、おいどんと一緒に屋敷をで申されたが、途中、ちょっと約束があるとじゃけん、ちょっと寄り道すると申されてな…と薩摩藩士が教える。

だが時刻には遅れんように行くからとこつでごわした、変わったことがなければ良いが…、益満さんが見廻組の奴らに一番よく狙われているからな…と同志たちが口々に案じていた時、1人の頭巾の侍が近づいてくる。

何奴だ!と誰何すると、名乗らずともこの顔をご覧になればご納得が行こうと言いながら頭巾を脱いだその顔を見た浪士ちたちは、貴様は間部!と驚く。

さよう、諸君らの敵、浪士取締役支配を承る幕臣間部主税介!と名乗ったので、一人の浪士が斬りかかるが、あっけなく斬り殺されたので、他の浪士たちも一斉に刀を抜く。

すると周囲に見回り隊が取り囲んだことに気づく。

計りおったな!と浪士が叫ぶと、間部は愉快そうに笑い出し、やっと気がついたか!と嘲る。

それ!と間部が命じると、横に控えていた黒川主膳が斬れ!とは以下のものたちに命じ、一斉に見回りたいが斬り掛かってゆく。

主膳や主税介に次々と倒されていく浪士たち。

その時銃声と共に白馬で現れたのは黒頭巾だった。

それに気づいた主税介は、出て来たなと笑うと、木の上に潜ませていた銃撃隊を見上げる。

白馬から降り立ち、二丁拳銃を構えながら接近してくる黒頭巾は、間部さん、せっかくのお出向きご苦労ですが、今夜は一同に成り変わり、この黒頭巾がお相手させていただこうと語りかける。

それに対し、主税介は、面白い、気に入った、主税介が相手いたすぞと答える。

紅孔雀は浪士たちをご一同と呼び集めると、あとは拙者が引き受けた、各方は引き上げられいと告げたので、浪士たちは、かたじけない!御免!と答え、その場から立ち去ってゆく。

見回り隊は加勢しようとするが、主税介が構うな!今夜は黒頭巾と拙者の一騎打ちだ!お前たちは手出ししないでそこで見ておれと命じる。

主税介はでは参るぞというと羽織を脱ぎ捨てたので、黒頭巾も宜しいと答え、二丁拳銃をしまい、背中の刀を抜いて構える。

しかし、周囲の木の上には狙撃部隊が銃を構えていた。 近くに来ていた益満が、その木の上の狙撃隊に気付き、危ない!木の上!と叫んだので、黒頭巾は発砲の寸前に飛び退き、二丁拳銃で狙撃隊を撃ち落とす。

黒頭巾は騒ぐな!と見回り隊を制し、近づいて黒頭巾の刀を拾い上げた益満が、危ないところだったなと言いながらと話しかける。

お主のおかげで命拾いしたぞと黒頭巾は益満に礼を言い、だがこうなれば間部さん、一騎打ちはお許しくださいますな?このまま失礼しても黒頭巾を卑怯だとはおっしゃいますまいと黒頭巾はいい、白馬のもとに走り寄ると、益満も背後に引き上げ、一緒に走り去る。

それを見送り無念がる主税介と見回り隊。

ある日、権太と三次は矢場「おかめさん」に来て、店の若い娘たちと戯れあっていた。

そこに女将が顔を見せると、お光坊どうしたんだよ、遅いじゃないかよと権太は愚痴るが、女将は笑って今すぐ来ますよと答える。

赤鬼の親分さんと聞いたものだから、おめかしのし直しなんですよと女将が世辞を言うと、とか何とか言って、良い男でもできたんじゃねえのかな?と権太は拗ねる。

すると、あら酷いわね親分と言いながら顔を出したのがで、権太はよお!と喜び、三次もお光っちゃん!と囃し立てる。

何さ、三公!と言い返したお光は、ねえ親分、昼間からこんな遊んでてさ、本当に良いの?と揶揄うと、良いのってことよと権太も調子を合わせておどけて見せる。

年がら年中仕事匂い描くられている俺たちだが、え?たまにはこいうこともしなくちゃなと権太は言いながらお光の手を触る。

すると三次も、そりゃ本当だよ、大体ね、俺たちがね、黒頭巾を捕まえようなんて土台無理な話なんだ、ねぇ親分などというので、まあそういうこと…と一旦同意した権太だったが、え?三公、お前なんって言った?と聞き返し、今ね、無理な…、なんか言いましたか?と言い直したので、とぼけるな!と権太は怒鳴りつけるので、お光も他の娘たちも笑い出してしまう。

良いか?俺はこうやってたってな、仕事のことは片時も忘れたことはねえんだぜ?と権太がいうと、親分、それはちょっと違やぁしませんか?第一ね、今んなところで仕事の話するなんて野暮ですよと三次は言い返す。

よく遊び、よく働く、これで行かなくちゃ!と三次がいうと、馬鹿野郎!黒川様や大野様はな、仕事のために伊豆の離小島の堂ヶ島ってところに半年も行ってる中のに…と権太が教えたので、え?あの…、半年も行ってるんですか!と三次は驚く。

そうや、悪くいきゃ、1年も2年もだと権太は言い、良いか、つまりな、その動画島の洞窟の中で工場ができてな、そこで新式銃を作り出せるまでは絶対に帰らねえっていう…、あ、あの~、お前たち、こんな話を人に言うんじゃねえんだぜ、え?こいつは絶対秘密の話なんだからなと娘たちに注意する。

しかしその権太の話は、おかめの面を被って、矢場の裏方をしている男もしっかり聞いていた。

そのおかめの面の男がお光に集めた矢を手渡したので、あ、てめえは何だ!と権太は怪しむ。

するとおみつが、この人はオシなのと言うんで、オシ?じゃあなんで面をつけんだよと権太が指摘し、面を取ろうとしたので、ダメよこの面取ったら…とお光が注意する。

権太は、お光坊、嫌にこの男のこと庇うじゃないか?と言い返すが、違うのよ、私、親分のためを思ってとお光が言うので、俺の?わからねえなとごん時は不思議がるが、三次が、親分、取っちまいますぜと言いながら無理に男の面を剥がすと、焼け爛れたような顔が出てきたので、権太も三次も凍りついてしまう。

だからおよしなさいと言ったのに!とおみつが言うので、三次はおかめの面をつけさせ、あ、早く行け!早く!と権太はその男を追い払って、ああなんか胸が悪くなちまいやがったと言い出し、三公行くぜと立ち上がったので、女将は、もう親分、そう言わずにゆっくりしてくださいよと声をかけるが、後で来るよと言い残し帰ってしまう。

店を出た三次はまだ気分が悪そうだったが、権太は、ちょうど通りかかったおぎんに声をかける。

おぎんは、親分、与作さん知りません?と聞くので、与作は知らないがな、化け物がいると店の中を指さして権太は教える。 化け物?とおぎんが聞き返すと、また思い出して吐き気を覚えた権太は、三公行くよと声をかけその場から立ち去る。

「おかめさん」の奥の間で、変装を解いていた与助の所に笑いながら来たお光は、だらしのない親分ね、尾根を押さえて飛び出して行ったわよと伝える。

すまなかったね、お光ちゃん、これは少ないけど、身代わりのお祝儀、はいと与作は渡すので、良いのよ与作さん、そんな他人行儀なことしなくなって…とお光はいうが、でも、こっちからお願いしたんだからと与作は言う。

それでもお光は、良いったら良いの、もうそんなことしたら私怒るわよと膨れる。

私、良作さんにはそんな他人みたいな真似して欲しくないと与作に甘えるお光だったが、いつの間にか上がり込んでいたおぎんがそれを目撃してしまう。

でも…と、与作が言った時、ちょいと、あんた、与作さんとそんな仲なの!とおぎんが怒鳴り込んできたので、与作は顔を逸らす。

するとお光も、失礼な方ね、ここ私のうちですよと言い返すが、そんなこと聞いてはしないよとおぎんも黙ってない。

与作は、おぎんさん、違うんだよ、まあ落ち着きなよと宥めるが、落ち着いてなんかいられるものか!あんたもあんたよ、こんな生っ白い小娘相手してさ!女ったらし、女ったらしだよ、あんたは!とおぎんのヒステリーは収まらない。

そのままおぎんは店に置いてあった矢を倒したりして帰って行ったので、お上がどうかしたのかい?と聞くが、追いかけてきたお光は、生っ白い小娘ですみませんでしたね!と立ち去ったおぎんに向かって睨みつける。

奥座敷に戻ったお光だったが、すでに着物は脱いで、お祝儀も置いてあるだけだったので、与作さん!と呼びかける。

与作は裏口からそっと抜け出していたが、前方から権太と三次コンビが近づいてきたので、横道に逃げる。

ねえ親分、この道はさっきから三度目ですぜと三次が文句を言うと、うるせえな、歩いてるんじゃねえ、考えてるんでい!おめえもちっとは親身になって考えろ!と権太は叱ると、黒頭巾の足取りを捕まえるにはと…と頭をひねる。

すると三次が、あ、わかった!親分、黒頭巾はいつも決まって白い馬に乗って出てくるでしょうがね?と意見を言うと、それがどうしたよと権太がそっけなく答えるので、勘が悪いんだな…と三次がいうので、何だと!と権太は睨みつけるが、こ、こっちのこと!とごまかした三次は、つまりね、勘の悪い…、違う!白い馬を調べりゃ良いんですよね、ね?その一切がわかりゃ、黒頭巾の行方が…というと、偉え!てめえ、バカだって今まで思ってた、すっかり見直したぜと権太は感心する。

三次は、いや、それほどでもないんですけどね…と照れるが、ゴンタは、やっぱり俺の感化を受けたかな?と自画自賛しだしたので、ええ!と三次は真顔になるが、とにかくそれで行こう!と権太は言い、歩き出す。

そんな2人の様子を観察していた与作はニヤリと笑う。

その夜、歩き疲れた権太と三次が神社の柱の根元にへたり込み、江戸は広うござんすねと三次が愚痴をいうと、だが馬のいる場所って限られているからな、明日はきっと見つけだして見せるぞ!と権太は言い、おい三公、こういうお宮には御神馬というのがいたなと言い出す。

御神馬?あ、そうそうあの白い馬…、ああ!それ!と三次が気づいたので、そう、それだ!と権太も指摘する。

すぐに二人は神社の中に入り込み、そこで飼われている白馬を発見したので、え、これ!これ白い馬だ!もうこの馬の飾り!黒頭巾!と2人は大喜びしながら、囲いを開放すると、白馬は勝手に動きだしたので、パカパカパカッ!と三次は大興奮するが、権太に睨まれて真顔になると白馬の後をつけだす。

神社の前で白馬が止まったので、親分、どっかに隠れて見張ってましょうよ、きっと出てきますぜと三次が提案し、何もお前震えなくたって…と権太が注意すると、親分だって震えているくせにと三次も言い返す。

すると権太は、馬鹿野郎!見損なうねえ、俺は逆に喜んでるぞ!と威張るが、だが相手に見られちゃお終えだ、どっか隠れるかと急に弱気になり、三次もへいっと笑顔で賛成する。

その時、隠れるには及ばんと声がしたので、2人が声の方を見ると木の上の黒頭巾を発見する。

黒頭巾は哄笑し、権太親分の感化を受けて三公もいくらか頭が良くなったなというと、黒頭巾は地面に降り降りて二人の方へ近づいてくる。

こりゃ、神妙にしろ!と権太は十手を出して威嚇しようとするが、そのへっぴり腰じゃ話にならん、早く行って役人呼んでこいと黒頭巾は親切に助言してやる。

三次は素直にはい!というが、権太はやかましい!と言いながら十手で殴りつけてくるがあっさり黒頭巾にひねられてしまう。 へっぴり腰の三次も捕まり、権太と頭をぶつけられ失神するが、その様子をおぎんが木の陰から見ていた。 すると黒頭巾が、おぎんさん、さっきから後をつけておられたようだが、正体わかりましたかな?と後ろ向きから振り返って問いかける。

その顔を見たおぎんは、ハッと息を呑む。

黒頭巾は白馬に跨ってその場から去って行くが、それを見送ったおぎんは、一時は本気になって惚れたこともあったけどさ…、覚えておいで!と吐き捨てる。

翌日、長屋の前では子供達を相手に友之助が「黒頭巾の歌」を披露していた。

いもう。との千夜と踊りながら歌うと、二番からは取り巻いた他の子たちも一斉に唱和しだす。

しかしそこにやって来たのは、おぎんに連れられた三次や役人たちだった。 ハッとした友之助たちに、坊や、天命堂のおじちゃんいる?と三次が聞いて来たので、天命堂?そこを曲がって左に入った所だけど?と友之助が教えると、あ、おめえ、この間の小僧だな?と権太が気づいて捕まえようとしたので、友之助が振り払うと、ま、いいや、今日は休みか?と聞く。

友之助は返事を躊躇うが、一緒にいた妹の知恵の方が、与作さんがね、しばらく帰らないからって、お金を運と置いていってくれたの、だからしばらく仕事に行かなくて良いの!と無邪気に明かしてしまったので、しばらく帰らないって?と権太は驚くが、天命堂さんと一緒に旅に出たのさと友之助も教える。

権太は、旅?旅に出た!と愕然とする。

その頃、早苗は与作の置き手紙を読んでいた。

そこには「しばらく帰れぬと思いますが、お金の方は遠慮なくお使いくださるよう、我々が以前、貴女の父上大槻東橘殿に大変お世話ご厄介になったお返しの意味です それからあなたのお父上が今でも健在でおられることと、いつかあなたたちの所にきっと帰って来られることを保証いたします 体を大切にした友之助君やお千代ちゃんと一緒にその日を楽しみにお待ちくださるよう 与作」と書かれてあった。

お父さんにご厄介になったって、どういう御関係なんだろう?と早苗は考える。

そこに突然やって来た権太が、おい、お前と良作とはどんな関係なんだと勝手に上がり込んで早苗を問い詰める。

お隣同士というだけですと早苗が答えると、ふん、それだけでお金をくれる貴徳な人がいるかしら?と同伴していたおぎんが言う。

すると早苗は、あなたたちにはわからないかもしれませんが、世の中には神様のような気持ちを持った方もおいでですと言い返したので、与作さんが神様だって?とおぎんは笑いだす。

笑わせないでおくれ、惚れた弱み、あんたにゃ神様かもしれないけど、私に言わせりゃ、あんな女たらしはいないよ遠銀がいうので、女たらし?と早苗は聞き返す。

おや?知らないのかい?じゃあ私が教えてあげようと門口に腰を下ろしたおぎんは、予算さんがどんなことをしてるか、どんな男か…と言い出したので、結構ですわ、何も聞きたくありませんと早苗はきっぱりはねつける。

ただ、与作さんが私たちにお金をくださったのは、父にお世話になったお礼の意味なのですと早苗が言うので、おめえの親父?と権太が聞くので、ええ、ここに与作さんの置き手紙がありますと早苗は見せる。

権太が手紙を確認している最中、三次も上がり込み、おい姉ちゃん、おめえ、与作がお尋ね者の黒頭巾だって知ってるのかい?と聞いてくる。

それを聞いた早苗が、え!黒頭巾!と驚いたので、そうだよと三時は教えるが、手紙を読んだ権太は、大槻東橘…と呟いて考え込み、おめえの親父ってぇのは、山鹿士行の高弟の大槻東橘ってことか?と早苗に確認する。

ええ…と早苗が肯定すると、おい三公、引っくくれと権太は命じる。

三次は逃げ出そうとした早苗を捕まえその場で縛り上げるが、そこに帰ってきた友之助と千代はそれを見て驚き、おい、何をするんだ!お姉ちゃんと早苗にしがみつくが、権太はその二人も役人たちに渡すと、大槻の子供とはいいものが手に入りましたね、早速間部の午前にお知らせしないととおぎんに話しかける。 おぎんは、ひょっとすると伊豆の離れ小島まで連れていくことになるかもしれないよと笑う。

伊豆、洞ヶ島

人夫をこき使う監視をしていた黒川主膳は、間部様がお呼びですとの使いがきたので、ああそうか、じゃあ後は頼むぞと言い残し、その場を去る。

間部のいるところに来た黒川が何か?と聞くと、どうだ、状況は?と主税介が聞いて来たので、もうほとんど外の仕上げに取り掛かっておりますれば、後1両日中には…と黒川は答える。

弥兵衛、この図面通りのものができると後はどうなる?と主税介は、一緒にいた竜神丸の弥兵衛(澤村國太郎)に聞くと、へえ、これからこっちの設計図がものをいうんでさあと弥兵衛は答える。

それを聞いた主税介は、いよいよこれからが山鹿士行の仕事になるわけだなとほくそ笑む。 ええと弥兵衛が答えると、主税介は大野に見張をさせていた山鹿士行と大槻東橘を幽閉した部屋の様子を覗きにいく。

大野は主税介に促され部屋の外に出ると、どうだ?と主税介が部屋の方を扇子で指しながら聞かれたので、どうしても引き受けませんと答える。

日本人同士が殺し合う兵器の製造に力を貸すことは絶対に嫌だと…と大野が答えると、まあ良い、今日から方針を変えることにしよう、今まであんまり大事にしすぎた。あ、それに今夜辺り、おぎんの奴が大槻の子供を連れてくるはずだ、脅かす方は道具立ては揃ってるよと主税介は嘯く。

それを聞いた黒川は、ところで仕事がひと段落つけば、人夫たちの処置も考えて行かねばと主税介に申し出る。

うん、薩長の奴らに気づかれてはこの工場を作った意味もなくなるわけだと主税介がいうので、いっそ一思いに片付けますか?と大野が提案すると、殺すのはもったいねえ、金にしようじゃないかと弥兵衛が口を挟む。

金にする?と主税介が聞くと、へい、唐の船に売りつけるんでさあと弥兵衛はいう。

それを聞いた主税介は、なるほど、さすが海賊の言うことは違うのと感心する。

へえ、海賊なんて人聞きの悪い、こう見えても直参旗本五千石、間部主税介様の補佐を承る弥兵衛ですぜと弥兵衛は言い返す。

それにこの重機工場の設計図、新式銃の設計図にしたって、みんなあっしの力あってのことだと弥兵衛は主張する。

ところで旦那、工場の方が一段落ついたら、一度女でも呼んで一つ豪勢に騒ぎましょうやなどと弥兵衛が言うので、バカを申せ、秘密んために妊婦の始末を解かんんが得ている矢先、ま、女の方は我慢しろ、その代わり、酒の方は用意してある、それから妊婦の始末もお主の手に任せると主税介は弥兵衛に言い聞かす。

それを聞いた弥兵衛は、え、ようがす、子分の奴らに女をあてがってやれねえのは残念だが…と弥兵衛は答える。

それを聞いていた主税介は、残念なのは子分ではなくお主の方だろうと指摘したので、図星を刺された弥兵衛と主税介は一緒に笑い出す。

岩場で休憩していた人夫たちは、そろそろ仕事も終わりだが、約束通り金くれるんだろうな?と話し合っていた。

誰もじゃねえや、もらわなきゃこっちが収まらねえと1人が言うと、おっかねえ侍や海賊みてえな奴に脅かされてこんな酷い仕事させられてさと別の一人が文句を言う。

だがよ、三倍の日当くれるなんて、ちょっと話がうますぎるじゃねえかと一人が指摘する。

その通りだ、うっかりすると命が危ないぞと話に加わった人夫は黒頭巾の変装だった。

何だって、おい!と、最初に話していた三人が近づくと、洞の中に工場を作るという秘密の仕事だ、俺たちが戻ってしゃべれば、秘密が漏れる…、すると?と妊婦が聞くので、バレると困る、だからひとまとめにして命を断つ!昔から良くある手だ…と黒頭巾が化けた人夫は教える。

じゃあ、俺たちは!本当か!と三人の人夫は黒頭巾が化けた人夫に迫る。

そこへ役人たちがやって来て、仕事だ!と叫んだんで、人夫たちは渋々仕事に戻るしかなかった。

その頃、早苗と友之助、千代らと一緒に小舟に乗り込んだおぎんが、洞ヶ島って遠いのかい?と船頭に聞くと、へい、向こうに着く頃は日が暮れますぜと教えられる。

島では、アイパッチをした海賊が、人夫たちの寝所を監視していた。

黒頭巾が化けた人夫は、そんな見張りの目を盗み、寝るための小屋から抜け出すと、着物を脱いで海に泳ぎ出す。

外で見張をしていた役人は、おい、何か音がしなかったか?と仲間に聞くが、音?と聞き返しただけで、泳いでいる黒頭巾には気づかなかった。

洞窟の奥を監視していた見回り隊のヒゲ隊士は、小舟が流れ着いたことに気づき、仲間に知らせに行こうとするが、小舟の陰に潜んでいた黒頭巾が這い上がり、ヒゲ隊士の背後から襲撃する。

その直後、黒頭巾が化けたヒゲ隊士が何事もなかったかのように元の場所に戻ってくる。

そこに、おぎんと早苗たちを乗せた小舟が近づいて来たので、黒頭巾は奥からやってきた黒川に会釈をし、ヒゲ隊士として振る舞う。

小舟のそばに来た黒川は、着いたか、では早速間部さんの元へ参ろうと、小舟に随行してきた銀太や三次に声をかける。

子供達やおぎんが間部の元に向かう時、また黒頭巾が化けたヒゲ隊士は会釈してやり過ごすが、すぐにグッと彼らの動きに目を戻す。

大川とともに主税介の部屋に来たおぎんは、旦那!と媚を売り、主税介の方も、嬉しそうに、おお、来たか!と出迎える。

ご褒美はどっさりいただけますわね?とおぎんが冗談ぽく笑って手を差し出す真似をすると、よしよし、まあわしの部屋に行こうと主税介はおぎんを誘う。

最後尾からついて来たヒゲ隊士は、隙を見て奥の部屋を探るが、ちょうど大野が秘密の部屋から出てきて、何やら仕掛けを使ってドアを閉めたところだった。

その大野らを物陰でやり過ごしたヒゲ隊士は、今見た仕掛けを使ってドアを開けて奥の部屋に入り込む。

そこには座敷牢があり、中には火薬が積まれていたので、これだけの火薬があれば…と、黒頭巾が化けたヒゲ隊士は呟く。

一方、山鹿士行と大槻東橘を別の牢に入れようとしていた大河原の元に、早苗と友之助、千代が連れてこられたので、大槻は早苗!と気づく。

早苗もお父様!と気づき、二人は抱き合う。

友之助と千代も、お父様!と呼びかけて近づいたので、友之助!千代!と大槻は気づき、大きゅうなったな、この父を覚えていてくれたか!と呼びかける。

友之助は父上!と叫んで大槻に抱きつき、千代もお父さんと呼びかけ抱きつく。

それを見てほくそ笑む主税介だったが、黒頭巾が化けたヒゲ隊士は、岩陰からそっとロウの位置を確認するだけで姿を隠す。

黒頭巾は、ヒゲ隊士を眠らせておいた場所に戻ると、また元の妊婦姿に戻って海に泳ぎ出す。

本物のヒゲ隊士の方はフラフラしながら元の見張り場所に戻る。

岩場に泳いで戻った人夫は脱いでいた着物を着て新所の小屋へ戻るが、その頃、見張りの海賊が役人に、旦那、人夫の数が1人たりやせんぜと知らせ、役人たちが慌てて寝所の小屋へと向かっていた。

黒頭巾の化けた人夫が小屋に入りかけた時、役人と海賊が寝ている人数を数えている最中だったが、その隙を見て人夫は寝所に紛れ込む。

結果、役人が25人、海賊が15人で、合計してみた役人はいるではないか!と海賊にいう。

おかしいな〜と海賊は首を傾げるが、はあ、みんなよく眠っとるな、明日仕事がないと聞いたらびっくりするだろうと役人が言うので、明日休みって本当ですか?と海賊たちも驚いたので、なんだ、お前たち知らなかったのか?俺たち一同工場に集まってな、明日は慰労の宴があるんだ、明日はグッと行けるぞ!と酒を飲むふりを役人はしてみせる。

その言葉通り、翌日は、飲めや歌えの宴が行われる。

海賊の弥兵衛に誘われ、権太と三次も踊りの輪に加わる。

小舟で後から合流する役人もいたが、その小舟にしがみついて黒頭巾が化けた人夫もまた宴の宴につかづく。

黒頭巾は、眼帯の海賊が途中で立ち止まったので当身を喰らわせ気絶させると、岩陰にその海賊を運び入れる。

後続組のみ回りたいが、只今参りましたと黒川に挨拶して酒宴に混じる。

片目の海賊に化けた黒頭巾もさりげなく宴に参加し、気づいてない三次から酒を注いでもらう。

グッといこう!などと三次から煽てられた黒頭巾だったが、弥兵衛と主税介や大野らが合流しているのをしっかり確認する。

弥兵衛は、旦那、昨日来た美人の姿が見えねえようだが?と主税介に聞くので、おぎんか?気になるか?と主税介が答えると、ええ、ちっとばかしねと弥兵衛はだらしなく笑う。

奥の部屋と場所を教えてやった主税介は、話によっては譲ってやっても良いが、少しばかり高いぞ、と主税介が囁きかけて来たので、ようがす、旦那、人夫の金は全部旦那に…いかがでsu?と弥兵衛が切り出したので、張り込んだなと主税介は答える。

ひょっとこの面を被り直した弥兵衛は奥の部屋に向かってゆく。

それを面白そうに眺める主税介、黒川、大野の三人だったが、俺たちには次の仕事の段取りがある、みんなが踊っている間にカタをつけておこうじゃないかと主税介は黒川に話しかけ、大野に、おい、あとは頼んだぞと言い残し黒川と席を立つ。

それを三時からからまれていた黒頭巾はじっとみていた。

奥の部屋で鏡を覗いていたおぎんの元へ、ひょっとこの面を被った弥兵衛がやって来る。

片目の海賊に扮した黒頭巾は、秘密のドアを開いて、弾薬が詰まれたろうの前に入り込む。

子供達と牢に入れられていた大槻たちの牢の前には、主税介と黒川が配下のものを従えてやってくる。

士行先生、工場の外部はほぼ出来上がりました、あとは新式銃設計図に基づいて先生のご指導を待つばかりです、よろしくご協力のほどお願いいたしますと主税介が話しかけるが、なんとおうせられようと、この儀はお断りいたすと山鹿士行は拒否する。

大槻氏は?と聞くと、拙者もはっきりお断りしますと答えるので、さようか…、なればいたしかがない、だが拙者も職務上、痛い目に遭わせても意に従わせますぞ、よろしいかな?と牢のすぐ前まで来て主税介は伝える。

覚悟はしておると山鹿は答える。

よくぞ申された、だが、お二人は大切な体だ、といった主税介は、おい!そこの三人の子供をここへ引き出せと黒川に命じる。

その頃、黒頭巾は、牢の中に積まれた火薬樽に導火線を仕掛け、その先端に時限装置を設置してスイッチを入れると、それを牢の中に放り込む。

その時振り向くと、ヒゲ隊士こと平田次郎(青柳竜太郎)が片目の海賊に化けた黒頭巾を発見し、ドアのスイッチを押したので、片目の海賊姿の黒頭巾は部屋の中に閉じ込められてしまう。

見ると牢の中の時限装置は刻々と爆破時間を刻んでいたが、それを止める手立てはない。

主税介が打て!と命じると、役人たちが一斉に三人の子供を棒で打ち始める。

そこにヒゲ隊士平田がやってきて、間部様、今曲者を火薬庫の中に閉じ込めましたと報告したので、何、曲者?平田、お主先日夢のような話をしておったが…と嘲りかけていたが、ひょっとすると…と何かに思い当たる。

黒頭巾は密室に閉じ込められ、手も足もできない状態だった。

そんな中、主税介は、黒川、鉄砲隊を連れて処理してこいと命じる。

黒川が平田、参れ!と命じると、火薬庫へ向かう。

主税介はさらに打て!打て!と命じる。

鉄砲隊と黒川を引き連れた平田は火薬庫の前に来ると、ドアのスイッチを入れ扉を上げる。

中を覗き込んだ黒川は、何だ、おらんではないか、貴様、また夢を見たなと嘲ると、いえ、確かに!と平田は反論するので、怪しいものだ…と言いながら、半信半疑で鉄砲隊と共に火薬庫の中に入り込む。

すると、天井にへばりついてた黒頭巾が地面に降り立ち、扉から外に出ると、スイッチを入れて扉を下ろしてしまう。

これに気づいた黒川らは扉のそばにくるが、中からは開けようがなかった。

その頃、奥の部屋にいたおぎんは、弥兵衛から襲われかけていた。

手を掴まれて来たお銀は、必死に振り解くと、冗談じゃないよ、誰がお前なんかに!あんまりしつこくすると声を出して、間部の旦那を呼ぶよとおぎんが脅すと、ふん!旦那はご承知だい、金高によっては譲ってもよいとおっしゃった…と弥兵衛は笑って打ち明ける。

それを聞いたおぎんは唖然とする。

おぎんに近寄った弥兵衛はいい加減にしろ!と言いながらおぎんの顔を殴りつけると、扉が開いて片目の海賊に化けた黒頭巾が入って来たので、何だ、てめえは?と弥兵衛は叱る。

黒頭巾の顔を凝視したおぎんは、あ、あんたは!とその正体に気づく。

主税介は、続けて打つんだ!まだ拷問を命じていた。

それでも、山鹿も大槻も承諾しようとしないので、主税介は拷問をやめようとしなかった。

とうとう耐えきれなくなった山鹿が、やめてくれ!と言いだす。

大槻は、先生、そんな弱気では!と山鹿を必死に止めようとするが

主税介は笑い出し、とうとう我が軍門に降りましたなと言い放つ。

その時、背後で踊り出したひょっとこの面の男に主税介は気づく。

どうした弥兵衛?と主税介が聞くと、いきなりひょっとこの面の男は笑いだす。

それを唖然と見つめる、山鹿と大槻と、三人の子供たち。

気でも狂ったのか?と主税介が問いかけると、いや、まさしく正気だとひょっとこ面の男は答える。

えっ?と主税介が戸惑うと、笑うひょっとこ面の男の背後におぎんが姿を現す。

流石に異変に気づいた主税介は、貴様、弥兵衛ではないな!と迫る。

するとひょっとこ面の男は、お分かりにならぬかな?と問いただしたので、主税介は、えっ?と絶句すし、貴様は!と言う。

正義の人、正き者全ての味方、人呼んで快傑黒頭巾!というと、着物と面を一瞬で取り去る。

あ、黒頭巾!お銀、貴様!と睨みつける主税介に対し、ふん、裏切りはおあいこさとおぎんは言い返す。

己!と歯を食いしばる主税介だったが、黒頭巾は拳銃を取り出し鉄砲隊の連中を撃ち倒す。 二丁拳銃を構えた黒頭巾は、真の名は、山鹿士行の一子、山鹿弦一郎!と名乗ったので、牢の中の山鹿士行はあ、弦一郎!と呼びかける。 おっ、お父上!と気づいた黒頭巾はさらに拳銃で鉄砲隊を倒す。

黒頭巾が、さ、牢から出していただこうと命じると、やむなく主税介は家来に命じて牢を開けさせ、黒頭巾は早苗たちを釣り上げていた鎖を銃で破壊し、外せ!と役人たちに命じる。

山鹿と大槻は子供達と共に逃げ出し、背後で待っていたおぎんが案内しますと申し出る。

黒頭巾も一緒に脱出しかけ、追ってこようとした主税介たちの足元に銃弾を浴びせて足止めする。

主税介は、黒頭巾が走り去ると、追え!と命じる。

おぎんは、山鹿たちを、まだ宴会が続いている部屋を通って逃げようとする。

酒を飲んですっかり上機嫌になっていた大野が、山鹿たちに気付き、権太や三次、海賊たちも一斉にお銀と子供達に気づく。

大野たちが山雅に近づこうとした時、遅れて部屋に来た黒頭巾が銃撃で役人を倒す。

そこに主税介と役人たちも駆けつける。

そんな部屋に傷だらけで入り込んだ弥兵衛は、異変を察知し、素早く身を隠す。

弥兵衛は短剣を取り出すと、黒頭巾の背後に近づく。

弥兵衛が斬りかかる寸前に気づいたおぎんが黒頭巾の背中を庇うように抱きつく。

黒頭巾は銃で弥兵衛の額を割る。

弥兵衛はその場に倒れこむが、その手の短剣に血がついていることに気づいた黒頭巾が横を見ると、刺されたおぎんが倒れ込む。

おぎんさん!と呼びかけながら黒頭巾が抱き起こすと、弦一郎様と呼びかけたおぎんは、許して!と言うので、許すも許さんもない!しっかりするんだ!と励ます。

私はもうダメ…、でも嬉しいわ、与作さんの身代わりになって死ぬんだもの…とおぎん入っていき耐えたので、おぎんさん!おぎんさん!と黒頭巾は呼びかける。

その時、敵がかかって来たので、黒頭巾は振り返って銃撃するが、すぐに弾が切れたことに気づく。

黒頭巾は剣を抜き、主税介も羽織を脱いで戦う準備をする。

その頃、火薬庫の中にいた平田は、牢の中の次元装置に気づき、隊長!と黒川を呼ぶ。

黒頭巾の闘いぶりに怯えた権太と三次は部屋から逃げ出す。

火薬庫では、黒川たちが何とか牢の中の次元装置を止めようと焦っていたが、手が届かない。

一方、黒頭巾は大野を斬り捨てていた。

黒頭巾っは父の山鹿に近づくと、火薬が爆発しますと教えたので、山鹿たちは一斉に部屋から逃げ出す。

その時、千代が転んだので、それを助け起こそうとした山鹿だったが、そこに主税介が斬り掛かり、山鹿は斬られてしまう。

火薬庫の中の次元装置は後わずかに迫っていた。

主税介と対峙する黒頭巾は、斬りかかって来た主税介を斬り捨てる。

火薬庫の着火装置が発火し、導火線が燃え始める。

海の岩場では、権太と三次が小舟のもやいを外そうとしていたが、そこにおぎんの死体を肩に担いだ黒頭巾らが近づいてくる。

子供達と大槻たちが全員乗り込んだ小舟に最後に飛び乗った黒頭巾は舫の綱を斬る。

小舟は海に進み出、三次たちや海賊たちは岩場に残されるが、その時、火薬庫が大爆発を起こす。

小舟の中で瀕死の父親を抱いていた黒頭巾は、その死を確認すると、父上!父上!と呼びかける。

大槻も、先生と呼びかけるが、もはや山鹿士行は息絶えていた。

その後、父親とおぎんの墓参りをする黒頭巾と大渕と三人の子供達だったが、黒頭巾が去ろうとすると、先生、やはり京へ戻られますか?と大槻が聞いてくる。

東橘殿も、ゆでつの節はご協力の程を…と黒頭巾が願い出ると、私にできますことならば…と大槻は答える。

早苗は、弦一郎様、その日が来るまで、私たちは父と一緒にこの近くの平和な田舎で鶏でも飼って過ごしたいと思いますと伝える。

それを聞いた黒頭巾は、羨ましいな〜、私もできればあんたたちと一緒に平和な生活を楽しみたいと笑顔で応える。

だが、亡くなった父上やおぎんさんのことを思うと、いや、日本の国の平和のために京の街が私を待っているんです、わかってくれますねと言い聞かす。

はいと早苗が答えると、お千代ちゃん、お姉さんやお父さんの言うことをよく聞くんだよと話しかけ、友之助君、お別れに君の歌を聞かせてほしいなと言いながら握手を求める。

うんと答えた友之助は、風の吹く日も嵐の夜も一人戦うおじさんは…と「黒頭巾の歌」を歌い出す。

やがて歌いながら泣き出した友之助を振り返り、白馬に跨って黒頭巾は手をあげ走り去るのだった。

友之助も泣くのをやめ、手を振って黒頭巾を見送る。

そこに子供達の歌う「黒頭巾の歌」が重なる。

早苗も千代も大槻も全員が手を振っていた。

千代が、おじちゃ〜ん!と呼びながら遠ざかる黒頭巾を追ってゆく。