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白馬童子 南蛮寺の決斗

1960年、東映テレビプロ、厳竜司原作、村松道平+高田宏治脚本、仲木睦監督作品。

テレビ初期の子供向け人気ヒーロー時代劇。
といっても、本作はテレビ放映されたフイルムを前編と完結編の二部構成にして劇場公開したもので、劇場用に新たに撮った作品という訳ではないようだ。
主演は「風小憎」に次いで、細面の美青年だった山城新伍。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

第二東映の配給なので、画面下の山並のシルエットから画面一杯に広がる朝日の光芒を背景として、東映の三角マークが会社クレジットとして出て来る。

長崎の港祭りに礫の忠助(山本順太)と小猿のモン太夫と共にやってきた美剣士、葵太郎(山城新伍)は、オランダ商館の総司令官を意味するカピタン、コープス(青柳竜太郎)の赴任を祝う行列に出くわす。

しかし、そのコープスを偽者だと喚いて詰め寄る一人の老人がいた。
彼は、直後、何者かによって殺害され、近寄った太郎に、「バイラ島…、娘を頼む…」と謎の言葉を残して息絶える。

その後、長崎を代表する貿易商五人組、玄海屋灘右衛門(源八郎)、長崎屋十兵衛(五里兵太郎)、天草屋善兵衛(藤川弘)、錨屋九右衛門(智村清)、肥前屋大五郎(佐々木松之丞)が一人づつ殺害される事件が起こる。それらの死体の片隅には無気味な黒蜘蛛が蠢いていた。

長崎屋と一緒にいた屋敷に火を付けられた肥前屋は、顔に大火傷をして包帯姿でみんなの前にあらわれる。
長崎屋の方は全身黒焦げの遺体で見つかったという。

その頃、出島のオランダ商館では、コープスが、将軍家への献上品として「南海の瞳」と呼ばれる巨大なサファイアを長崎奉行に手渡していた。

自宅に戻った肥前屋は、新しい番頭、団三(木島修次郎)をはじめ、従業員を入れ替えてしまい、娘の雪江(水木淳子)とその弟の竹介(福本久一)も、屋敷内に閉じ込められて、父親の側にも近付けなくなる。

錨屋の別宅に出現した黒蜘蛛党なる謎の覆面集団の前に、突然、全身白づくめの剣士が、煙と共に出現する。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「日本全国隠れなき太陽の子」「光の王子」白馬童子であった!
彼は、破邪の剣「日輪丸」を抜くと、必殺の「電光二刀流」で敵を蹴散らしていく…。

頭には歌舞伎「連獅子」の白髪のようなものを冠り、白い忍び装束のような姿の白馬童子は、白馬「流れ星」に跨がり、颯爽と現れては、ある時は妖術を使い、忠助たちを助けていく時代劇ヒーローである。

彼が二刀流なのは、山城新伍がサウスポーであったのをごまかすために考案されたものらしい。
葵太郎が子供の忠助をいつも従えているのは、鞍馬天狗以来の伝統だろう。

本作ではさらに、長崎屋が殺された後、葵の手下に強引になってしまう「とりもちの小助」(神木真寿雄)と、祭りの日に殺された男の娘、夕香里(春海洋子)が、太郎と行動を共にする。

物語後半は、長崎奉行に、「南海の瞳」の代金として、所蔵している金を全て寄越さないと、秘密裏に仕掛けたニトログリセリンで長崎を火の海にすると、コープスが脅迫を始める騒動が描かれていく。

子供向けに作られた作品だけに、時代劇なのに「二時間」などと現代風の表現を使っていたり、鼻の横に大きなホクロがあり、丸眼鏡姿の上に、さらに天眼鏡を持ち歩いている間抜けな同心、近眼(ちかめ)なるコメディリリーフが登場したりする。

この愉快なキャラクターの近眼を演じているのは南方英二、今の「チャンバラトリオ」のリーダーである。
当時は東映の大部屋俳優で、「風小憎」などにも出演している。

さすがに、今観ると、物語の展開もテンポが遅く、セリフのとちり部分などもそのまま使われている事からも、かなりやっつけで撮られていた様子がうかがわれ、決して良く出来ている作品とはいいがたいのだが、若き日の山城新伍の姿を見るだけでも楽しい。