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ダイナマイトどんどん

1978年、大映、火野葦平「新遊侠伝」原作、井手俊郎+古田求脚本、岡本喜八監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和25年、盛夏の北九州が舞台。

毎日のように、町中で抗争に明け暮れる岡源組と橋伝組との諍いに業を煮やした小倉警察署の署長(藤岡琢也)は、両方の親分、岡谷源蔵(嵐寛寿郎)と橋本伝次郎(金子信雄)を呼び寄せ、ある相談を持ちかける。

ある日、喧嘩の後、いつものように日頃から気のあるお仙(宮下順子)の店、おでんや「川太郎」に隠れていた岡源組の「遠賀川の加助」(菅原文太)は、組員全員が呼び集められていると聞いて、すわ大げんかかと親分の元に駆け付けるが、そこで代貸しの香取(中谷一郎)から聞かされたのは予想外の話だった。

北九州一体の12組のやくざ一家が筑豊友侠会というものを結成し、今後、民主的に互いを競い合うために、野球の試合を、毎週土曜日ごとにトーナメント形式で行う事になったというのである。

呆れた加助は、興味がないとばかりにその場から立ち去るが、ライバルである橋伝組の代貸し、花巻(岸田森)は、どういう勝負であれ他の組には負けられないと、野球の経験のある溢れものたちを金で集めはじめる。

一方、今一つ、試合の事に身が入らない岡源組の連中は、補欠ながら甲子園出場の経験がある三下の一六(福崎和宏)を監督という事にして、練習に訪れた近所の広場で、パンパン達相手に草野球をやっている奇妙な傷痍軍人を発見する。

その男こそ、かつて東急セネターズで「黄金の右腕」と呼ばれた名ピッチャー五味徳右衛門(フランキー堺)の変わり果てた姿であった。
彼は、さっそく岡源のチーム「ダイナマイツ」の監督として雇われる事になる。

そんなダイナマイツの練習振りを遠くから冷ややかに見つめる加助。

ダイナマイツの最初の対戦相手、立花港運ジョーカーズのピッチャーは、花巻が、岡源組に恥をかかそうと雇い入れた、元高校野球の名ピッチャーの芦刈作蔵(田中邦衛)であった。

花巻は、試合の裏で、ちゃっかり野球賭博の元締めもしていたのであった。

全く相手に歯が立たない味方の試合振りを見ておれず、途中から飛び入り参加する事になった加助は、作蔵の欠点が酒である事を知り、策略をめぐらし、何とか、その試合には勝利する事になるが、やがて、お仙の亭主、橘銀次(北大路欣也)が出所して来る。

その銀次は、助っ人ピッチャーとして岡源組の客人となる。
実は、彼はもともとノンプロのピッチャーだったのだが、ヤクザ稼業に身を染め、人さし指を失ってからは、不思議な魔球が投げられるようになっていたのであった。

銀次は、お仙と加助の仲を疑っている様子。
加助の方も、銀次にはどこか馴染めないものを感じていた。

一時はチームメイトとして、加助と共に決勝に勝ち進んだ銀次だったが、またしても、裏から手を廻した花巻の策略により、ダイナマイツが決勝でぶつかる事になった橋伝カンニバルズへと寝返る事になる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

まるで野球マンガを観ているかのような破天荒でパワフルな物語。

ヤクザ映画のパロディにもなっていて、東映仁侠映画でお馴染みの顔ぶれが勢ぞろいしている。

他にも、岡源組に石橋正次、丹古母鬼馬二、志賀勝、小島秀哉。
橋伝組に二瓶正也、さらに遊廓の女として、痩せている頃の岡本麗など異色の顔ぶれが登場する。

一人の女性をめぐって、一見泥臭い三角関係の愁嘆場になりそうなのだが、そこは岡本監督の個性だろう、野球を素材にしている事もあり、カラッとした爽やかなドラマに仕上がっている。

登場人物、一人一人のキャラクターが際立っており、中でも、モゴモゴと何をいっているのか分からない岡谷の親分を演ずるアラカンはおかしい。

フランキー堺も、さすがに往年の動きは観られないが、悲惨な現在の姿に負けないで、前向きに生きる男を良く演じている。

戦後のパワフルさを象徴しているような、決勝戦のハチャメチャ振りは、バカバカしさを通り越して爽快!

後味も申し分なし。

痛快娯楽映画の傑作!