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暗黒街の顔役

1959年、東宝、西亀元貞+関沢新一脚本、岡本喜八監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ある夜、ラーメン店で働くかな子(笹るみ子)は、街角で、数発の拳銃の発射音を聞いた後、怪し気な男を乗せて車を発車させようとする運転手の顔を目撃する。

暴力団の「横光商事」社長、横光(河津清三郎)は、大学出の片腕、小松竜太(鶴田浩二)を呼びつけ、弟の峰夫(宝田明)が、新宿の「ハイティーン」というジャズ喫茶で、歌手として唄っているのを止めさせろと命ずる。

実は、あの夜の拳銃射殺事件で、運転手を勤めていたのは峰夫だったからである。
顔を目撃されているのに、わざと人目に付くような派手な事をしていては足が付きやすいといわれた竜太、早速、弟に会いに行き説得するが、峰夫は、もう堅気になりたいからといって、兄の申し出をきっぱり断る。

しかし、そうした事を見越した横光組の武闘派で、常日頃から、学のある小松を毛嫌いしている黒崎(田中春男)は、別働隊を指揮して、かつて借金の面倒を見た事から、その後も何かと利用している樫村(三船敏郎)の経営する場末の自動車修理工場へ峰夫を連れ出し、焼きを入れる。

竜太は、足の悪い一人息子真一(市村かつじ)を、施設の純子(すみこ-白川由美)に預けていた事もあり、ヤクザ稼業に幻滅し始めていた。

組で気が合うのは、彼の兄貴分でキャバレーの支配人をしている須藤(平田昭彦)くらいであった。

二人で、麻布の不良外国人コステロが開いたカジノをぶっ壊しにいった事もある。

やがて、「ハイティーン」に仲間のトミ江(横山道代)や竹坊(加藤春哉)と共に、人気の「エディ・峰夫」のライブを観に来たかな子は、ステージ上のエディをどこかで見かけたような気がすると言い出す。

その言葉を近くの席で聞いていた横光組のチンピラ(ミッキー・カーチスら)からの報告により、組では殺し屋の小山(天本英世)と接触を計り、かな子を轢き殺してしまう。

さらに、組が峰夫も消そうとしていると察した竜太は、峰夫と彼の子供を宿した恋人の陽子(柳川慶子)を秘かに逃亡させる。

その行動を知った横光は、真一を誘拐し、竜太に峰夫の居場所を吐かせようとするのだった。
竜太の住まいには、無気味な五郎(佐藤允)という見張りが差し向けられていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

山本嘉次郎監督「暗黒街」(1956)に次ぐ「暗黒街もの」第二弾。
以後、このシリーズは、岡本喜八監督と福田純監督で数本づつ作られる事になる。

光村の情婦でクラブのママ、リエに草笛光子、かな子が勤めているラーメン店の店主が堺左千夫、刑事に中丸忠雄、エディと同じジャズ喫茶で唄う歌手役で中島そのみ、樫村の助手役に夏木陽介、他に沢村いき雄、高堂国典など、この当時の東宝常連組が顔を揃えている。

ゆるくパーマをかけて垂らした独特の前髪が特長の、哀愁漂うこの時代の鶴田浩二の優男振り。
そして、唄う映画スター風の二枚目振りを見せる宝田明との兄弟愛が見所になっている。

ちょっと意外なのが、本作での三船敏郎の役所。

やすやすとヤクザに利用されながら何とも反抗し切れない、正義感は持ちながらも、少し意気地のない男を演じている。

後半、彼の見せ場が用意してあるのかな?…と思っていたが、結局、最後まで、特に三船が目立つ場面はなかった。
あくまでも、脇役としての出演に徹していたようで、異色といえば異色の扱い。

典型的な通俗娯楽作で、展開はほぼ予測できる程度のものなのだが、ラストは切なく締めくくられている。

冒頭、竜太が施設にいる真一へのお土産として用意したブリキの「ロビー・ロボット」が、強烈に時代を感じさせる。