2003年、アメリカ、トム・マッカーシー脚本+監督作品。
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孤独を愛する青年フィン(フィンバー・マックブライド)は、同じ鉄道クラブに所属する鉄道愛好家仲間で、アフリカ系の中年男ヘンリーの経営する鉄道模型店でひっそりと働いていたが、小人症であるため、毎日のように他人の好奇の眼にさらされて暮していた。
そんなある日、店で突然ヘンリーが倒れて、そのまま帰らぬ人となってしまう。
弁護士を通じ、フィンには、ニューファンドランドにある古い駅舎がヘンリーの遺産として残されたと知らされる。
車の運転が出来ないフィンは、その辺鄙な田舎の駅舎まで線路伝いに歩いて行く事になる。
駅舎で寝起きをはじめた彼に、最初に話し掛けてきたのは、駅舎の側で移動コーヒー店を開いている陽気なジョーというプエルトリカン系の青年だった。
病気の父親の面倒を見ているらしく、人なつっこくおしゃべりである以外は、案外気の良い青年であるらしく、コーヒー店に立ち寄った悪友たちが、フィンの姿を認めてからかうのを、さり気なく諌めたりしている。
さらに、ひょんな事から、オリヴィア・ハリスという中年女性とも知り合うようになる。
彼女は、子供を2年前に亡くして以来、夫と別れて一人で暮しているらしい。
彼女も又、孤独な生き方を選んでいたのだった。
フィンもオリヴィアも、ケイタイは持っているのだが、両者とも電源を切ってあるという辺りで、他人との接触に興味を持っていない事を説明している。
地元の図書館に出かけたフィンは、そこの可愛い受付係の少女エミリーとも知り合う。
その上に、駅舎の近所に住んでいるらしいアフリカ系の女の子。
彼女は、フィンの事を自分と同じような子供だと思い込んで近づいて来る。
人嫌いだったフィンは、この新しい土地で、否応無しに、これらの人間と付き合う毎日が始まる…。
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サンダンス国際映画祭で観客賞を取った作品ながら、日本未公開作品。
第三回鉄道映像フェスティバルで上映された。
低予算で、撮影場所も登場人物も極めて限られた地味な内容なのだが、大人の映画になっている。
各々、孤独な人間達が知り合い、徐々に親しくなり、ちょっとした事から気まずい関係になるが…、そういう一見ありがちなストーリーである。
劇中の登場人物達同様、観客も又、最初はフィンの外見上の特殊さから、彼の動向に興味を持つようになるのだが、徐々に彼の特殊さは気にならなくなっていく。
当然の事ながら、彼も又、普通の青年なのである。
最初は、周囲に対し、硬く閉ざしていた心の殻を、徐々に脱ぎ捨てていく様が興味深く描かれていく。
鉄道マニアという設定がうまく生きている。
何もない田舎ながら、毎日近所の谷あいを通過する列車を見るため、フィンは本を持って散歩に出かける。
その、ちょっと風変わりな趣味に、やがて、ジョーもオリヴィアも参加するようになる。
何も衒わない。自然な情景と展開が心地よい作品である。
