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七変化狸御殿

1954年、松竹、柳川真一+中田竜雄+森田竜男脚本、大曽根辰夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

カチカチ国のお城では、満月の夜、若君、鼓太郎(宮城千賀子)主催の「化け比べ歌合戦」がにぎやかに開かれていた。

しかし、その頃、クルミの森では、強欲な太郎兵衛狸(山路義人)が、大勢の娘狸達をこき使って、クルミ拾いの仕事をさせていたので、貧しい娘狸のお花(美空ひばり)も、お城の歌合戦には行きたくても行けなかった。

そんなお花と、仲良し狸のポン吉(堺駿二)の前に出現したのが「森の精(高田浩吉)」。
彼は、自分もこれからお城へ行くので、お花にも参加するように勧める。

かくして歌合戦に出かけ、飛び入り参加したお花は、お誘(淡路恵子)の妖艶なダンスや、森の精が股旅姿に扮して唄った歌謡曲などを退け、一等賞となり、若君より、御褒美のコマドリを送られて帰る事に。
ところが、そのコマドリを太郎兵衛にとられそうになったお花は、駕篭から逃してやるのだった。

一方、こうもり谷に住むこうもり一族は、毎日、放射能雨の被害に悩まされていた。
雨に身体が濡れると消え去ってしまうのだった。

それに反し、狸の国には「てるてる大明神」なるお守りがあるため、毎日、晴天が続いている。

かくして、こうもり一族の頭領、闇右衛門(有島一郎)は、手下の傘造(渡辺篤)らを、先にお城に潜入させていた娘のお誘と合流させ、「てるてる大明神」を盗み出そうとするが果たせず、その後、クルミの森に遊びに来た鼓太郎を拉致し、魔法の瓶にその身体を封じ込めると、その引き換えとして「てるてる大明神」をカチカチ国に要求するのだった。

こうもり谷に忍び込んだお花とポン吉は、お誘がうっかり漏らした言葉から、魔法の瓶を開ける薬の秘密を知り、それを得るために、旅立つ事になる。

魔法の瓶は、七日で中の若君と共に消滅してしまうという。

二人はまず、「オランダ坂に咲く曼珠沙華の花」を手に入れるために、長崎に到着するが、曼珠沙華の咲く屋敷にいた密貿易の一味に、長崎奉行の手入れと勘違いされ捕まってしまう。

何とか、一味の手から逃れたお花とポン吉だったが、曼珠沙華の花は、追ってきたこうもり一族によって、全て刈り取られてしまった後だった。

哀しみに暮れるお花達の前に出現したのは、又しても「森の精」、彼女のために、一本だけ曼珠沙華の花を咲かす。

次なる目標は、「三角山の三角岩にある水たまりの水」。

お花とポン吉は、「鬼が峠」という鬼がたむろしている難所を、桃太郎と猿に変身して無事通過、その後、聞き覚えのあるドラムの音に導かれるように近づくと、そこには、お花を良く知るジャズ狸(フランキー堺)であった。

彼と一晩、楽しいセッションを楽しんだ後、お花たちは目指す三角岩のある洞窟へとは行っていく。

そこには、恐ろしい土蜘蛛の精(中村時十郎)が待ち受けており、ここでも、先に到着してたまり水を汲んでいたお誘と傘造たちを蜘蛛の巣に捕らえてしまう。

土蜘蛛の精と戦い、勝利を治めたお花は、水を汲み終わると、お誘も助けてやる。

三つ目の目標は「白サンゴで出来たさいころ」、どこにあるのか分からず途方にくれていたお花の前に出現したのは、以前、駕篭から逃してやったコマドリの精だった。

その精がいうには、「白サンゴのさいころ」を持っているのは、都鳥の吉兵衛だという…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼


戦前から作られてきた大映「狸御殿」ものの流れを汲む、松竹としては珍しいファンタジック・オペレッタ時代劇。

基本的には、美空ひばりの七変化を楽しむアイドル作品になっている。

「三人娘」シリーズなど、ひばり主演の歌謡映画は数あるが、全体的に、ひばりは、若くして貫禄があるため、今でいう可愛い子ちゃんタレント風のアイドルっぽさは希薄なのだが、本作でのひばりは文句なく可愛らしい。

特に、かかしの扮装になり(顔には「へのへのもへじ」が描いてある)お城で踊って唄うシーンや、旅の途中で出あったジャズ狸のドラムに合わせ、蝶々のコスチューム(「透明ドリちゃん」風)で唄うシーンなどは、コケティッシュで絶品。

狸御殿シリーズの代名詞ともいうべき、若衆姿も凛々しい宮城千賀子をはじめ、ゲスト陣も多彩で、後半登場する、森の石松の幽霊役が浪曲の広沢虎造、清水の次郎長は近衛十四郎、都鳥吉兵衛は川田晴久、長崎の密売人ロマノフが伴淳三郎、その子分がE.H.エリック…等々。

ひばりのお供役の堺駿二(マチャアキの父親)も、伴淳から「小さなおじさん」と呼ばれながら、その小柄な身体で(ひばりよりも小さい)懸命に笑いを取ろうと奮闘している。

シンプルながら、合成を主体とした特撮がふんだんに使用されているのも、松竹作品としては珍しい。

ハリウッド風のミュージカルというより、西洋のお伽話要素と日本特有の時代劇をミックスして、それに歌謡曲や浪曲などをゴッチャにミックスした、何とも珍妙な音楽映画になっているのが特長。

時代劇なのに、忍者の格好をしたこうもり一族がこうもり傘をさしていたり、西洋風の馬車が登場したり、アラビアンナイト風の衣装を身にまとった高田浩吉が登場するシーンなどが愉快。

最初は違和感があるかも知れないが、一回ハマると抜けられない、独特の魅力を持ったシリーズであり、特に本作は、アイデアもたくさん盛り込まれており、良く出来ている作品の一本と思われる。