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男ありて

1955年、東宝、菊島隆三脚本、丸山誠治監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

朝、自宅のトイレを占領して、作戦計画を立てるのが日課なのは、ピッチャー不足が原因で、現在、最下位に甘んじている東京スパローズの監督、島村(志村喬)であった。
妻(夏川静江)、長女のみち子(岡田茉莉子)、年をとって生まれた小学2年生の長男、照男(伊東隆)、そして、犬のコロとの生活。

しかし、残り試合数も少なく、その結果如何では、自らの進退問題がかかっている島村にとっては、野球の事しか頭になく、家庭の事など一切顧みない。そうやって、18年間、監督業に専念してきたのであった。
子供達は、そんな父親を何となく疎んでいた。
当然、島村は家庭の中で孤立しており、唯一の遊び相手はコロだけという状態。

そんな島村家の二階に、新人ピッチャーの大西博(藤木悠)が、下宿して来る事になる。
家庭は明るくなり、照男も彼になつくし、同年輩の大西とみち子は、急速に親しくなって行く。

そんな様子を見て、面白くないのは島村本人、娘に間違いがあるのではと気が気ではない。

試合では、先輩として島村を尊敬している、スパローズの選手リーダー的存在の矢野(三船敏郎)が勧めても、なかなか、大西を起用しようとはしない。

さらに、ある試合で、3塁のピンチランナーに起用した大西が、島村の指示を無視して勝手にホームスチールしてしまったため、試合には勝ったものの島村は大激怒、逆らった大西をロッカールームで殴りつけてしまう。

悔しさで泣き出し恨み言をいう大西を、家からも追い出してしまった島村。
その事が原因で、家族達も父親の横暴さに猛反発、みち子は家を飛び出してしまう。

そのもめ事は、大西が矢野の家の世話になる事になり、みち子も翌日無事帰宅した事で一旦は沈静化するが、今度は、島村が試合中、審判に暴行を働いたとして、退場させられると共に、 一ヶ月の出場停止を申し渡されてしまう。

このままでは、今期の試合が終了してしまうのだが、島村は、家の手伝いで気を紛らわせながら、必死に復帰の日を待ちわびるのだった。

皮肉なもので、若い矢野が監督代理を勤めるようになってから、チームが活気づいたのに気を良くしたオーナーの小池(清水元)は、矢野を呼び、来年からの監督就任を打診するのだが、矢野は島村をないがしろにするかのような依頼は頑として受け入れなかった。

その夜、そんな事とは知らないで、矢野からお好み焼き屋に誘われた島村、彼の円満な家庭の話を聞かされる内に、自らの家庭を顧みて来なかった日々を反省する。

そして、翌日、本当に久しぶりに、妻を誘い出し、彼女が希望する少女歌劇を鑑賞しに行った後、昨日のお好み焼き屋で今後の事をしんみりと話合っていた二人に、出場停止の解除が知らされる。

喜んで、その場から、九州シリーズをやっているチームに合流するため飛び出して行った島村。
合流先の宿では、選手達全員が歓迎のどんちゃん騒ぎとなる。

一方、いつものように、自宅に一人戻った妻は、久々の夫との外出を喜ぶ言葉をみち子に残した後、突然倒れる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

これは、一部で野球を描いた日本映画の最高傑作とまでいわれている名作らしい。

野球一筋で、家庭人としては失格。
監督としても、すでに全盛期は過ぎており、チームをまとめる事さえもおぼつかなくなってきている。
しかし、どうしても、その現実を認める事ができず、又、野球に没頭する事で忘れようとする。

働く日本人男性の一つの典型であり、ここに描かれているのは、どこにでも起こりうる悲劇であろう。
父子の確執、年長者と若者との確執…、ありがちなテーマだとは思えても、やっぱり泣かされる。

志村喬と岡田茉莉子が絶品。
照男の存在も貴重。

ここでの三船は、志村喬扮する監督を、すぐ傍らで常に暖かい目で見続けている真面目そうなベテラン選手という感じ。
藤木悠に対しては、頼りになる兄貴分といった感じの存在である。

彼には女房、子供がいる設定のようで、セリフには、その事が出て来るのだが、画面上には登場しない。

土屋嘉男も、選手の一人として出演している。

新人投手役が藤木悠というのは、ちょっと、いくら何でもミスキャストではないかと思っていたが、観て行く内に、何となく、ドジャースの石井一久選手みたいな雰囲気で(顔の雰囲気もそんな感じ)、意外と、こういうタイプの選手もいるかも…と納得させられる。