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ますらを派出夫会

1956年、東京映画、秋好馨原作、笠原良三+三瓶恵司脚色、小田基義監督作品。

秋好馨の人気マンガが原作で、シリーズの第一作であると同時に、二部作の前編に当たる。
さすがに、原作の方は読んだ記憶がないが、「ますらを派出夫」という言葉自体には聞き覚えがあった。

マンガの映画化というと、日本映画が斜陽になってからの傾向と考えられがちだが、すでにこの頃から行われていた事が分かる。
出演者の一人、柳家金語楼は、この翌年、「おトラさん」という西川辰美のマンガ原作の主演を、テレビと映画双方で演じ、人気を得ている。

「派出婦」というのは「派遣家政婦さん」とでもいえば良いだろうか。
「派出夫」とは、その男性版である。

戦後、職にありつく事ができない男性たちが、その頃、女性の職場であった分野にでも進出しなければ食べて行けない…という諷刺コメディ。

 

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「なでしこ派出婦会」では、最近町内で派手な宣伝をして注目を集め出した「ますらを派出夫会」なるものに付いて憤慨しながら討議している。
結果、女性の職分を侵すものであるとして、早速、代表の亭主である会長(古川緑波)に先方に直談判にいってもらう事にする。

気が進まないまま「ますらを派出夫会」を訪れたなでしこ会長を、客を勘違いして出迎えたのは受付でますらを会長の女性(塩川登代路)、さらに彼女の亭主で副会長の健太(榎本健一)も挨拶に出て来る。

そして、炊事洗濯裁縫などの練習に明け暮れている待機派出夫達の面々が紹介されるのだが、そのあまりに異様な情景に呑まれた事もあり、要件が言い出せないまま、ほうほうの態で家を出るなでしこ会長であった。

ますらをの受付は、お得意先の亀山婦人(千石規子)から、今来てもらっている派出夫の熊本(千葉信男)が、大食であるばかりか、ネズミを怖がって仕方がないので、別の人と交換して欲しいと電話を受ける。

次に派遣されたのは、口が達者な品川弥次郎兵衛(トニー谷)。
しかし、彼は亀山家の娘の絹子(白鳩真弓)にちょっかいを出したため、これも即刻首。

次に派遣されたのは無口な二枚目、間貫二(柳沢真一)。
しかし、彼こそ、近々結婚予定の絹子の元カレであったので、気まずい状態が続き、これまた即刻交代。

とうとう、副会長の健太自らが派遣される事になる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

エノケン、ロッパ、金語楼、トニー谷ら、人気者勢ぞろいの楽しい作品だが、二部作(後編は「ますらを派出夫会 お供は辛いねの巻」)として作られているためか、本作自体の上映時間は1時間そこそこと短い。

亀山(柳家金語楼)宅に招かれた三木のり平が、ここでも「社長シリーズ」でお馴染みの宴会芸を踊っているのがおかしい。

「ウラニウム鉱山」の話題などが出て来るのが時代を反映している。

トニー谷のおしゃべり芸も絶好調。

ロッパ自体は出番も少なく、いつものように「のんきキャラ」以上の見せ場はないのだが、エノケンの方は、後半、派出夫として、かなりの張りきり振りを見せてくれる。

戦後間もない頃の風俗の一端を垣間見る面白さと、当時の人気コメディアン達の姿を観る事ができるだけでも貴重な作品といえよう。