2003年、中島信昭脚色、灘千造脚本、荒木とよひさ監督作品
新聞記者だった灘千造の脚本、内田吐夢監督作品「たそがれ酒場」(1955年)のリメイクらしい。
らしいというのは、残念ながらオリジナルを観た事がないからである。
ざっと、オリジナルのあらすじなどを調べて読んだ限りでは、いくつかの細部の変更点などを除いて、大枠はほぼ、オリジナルにそったものになっているように思える。
夕方、とあるジャズバーに、三々五々、客が集まって来る。
色々、テーブルごとに、小さな人間模様が描かれていき、ちょっとしたもめ事も起き、楽しい飛び入り演奏もあり、一人の青年が新しいチャンスをつかんだ所で、店はいつものように閉店を迎える…、いわば、「グランド・ホテル形式」で描いた一夜のドラマである。
基本的に1セット中心に描かれており、ちょうど、映画を観ている観客も、そのバーに参加しているかのような感覚が得られる。
とくに、大きな事件が起こる訳でもない。
地味といえば地味そのもの、まるで舞台劇を観ているかのような展開である。
オリジナルを観てみたいな…と、思わせる内容でもある。
映画を撮るのが長年の夢だったという作詩家、荒木とよひさ氏の初監督作である事を考えれば、ひとまず、無難に出来ていると思う。素人臭い感じはあまりしない。
おそらく、素材選びがうまくいった証拠だろう。
物語の中核となる津川雅彦をはじめ、小林桂樹、愛川欽也、小倉一郎、峰岸徹といったベテラン陣の存在感と安心感。
一方、加藤大治郎、栗山千明ら若手の演技も真摯なもので好感が持てる。
全体的に、これといって悪い所がある訳ではないのだが…、正直、これといってインパクトがある訳でもない。
何となく、「普通かな?」という感じ。
やはり、時代の差だろう。
本作を、1955年当時に作られた作品として観たならば、良い作品だと素直に感じたに違いない。
しかし、現在の作品として考えると…。
テレビドラマでも十分な世界ではないのか?…と思ってしまう面もある。
戦前から戦後にかけての懐かしい映画を観る場合、今でも面白いと感じる作品はたくさんある。
ただ、その面白いという感覚には、「昔の映画としては」という気持ちがどこかにあるような気がする。
当時の時代背景、その時代の映画の傾向なども想像しながら、「面白い」と感じているような気がする。
それらの作品をそのままカラーにして、今現在の新作として観たら、同じように「面白い」と感じられるだろうか…。
何だか、本作がつまらない作品だといっているように聞こえるかも知れないが、そうではない。
本作の内容は普遍的なものを含んでおり、今でも十分通用する面白さだとは思う。
ただ、その面白さを共感できる人が今現在どのくらいいるのか。
そういう面白さを、今の映画に求めている人がどのくらいいるのか。
観ていて、そういう風な、色々複雑な思いに駆られるのも確かな作品なのである。
若干気になったといえば、歌手役の真矢みき(「踊る大捜査線2」で、女性キャリアを演じた人)、いくら何でも唄が下手過ぎなのでは?演技の方も、今一つ、生彩がなかったような…。
