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抱擁

1953年、東宝、八住利雄原案、西亀元貞+梅田晴夫脚本、マキノ雅弘監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

クリスマス・イブの銀座の雑踏の中、人込に押されて思わず車道へ出ようとした雪子(山口淑子)は、クリスマス用の仮装マスクを付けた男性に身体を支えられる。

礼をいおうとして、その男性の顔を観た彼女は、信じられないものを見たかのように、男の後を追いすがる。
マスクの男性は「人違いだ、追われているので…」と言い残して、雑踏の中へ消えて行く。

バー「山小屋」で働いている雪子は、常連達のアイドルだった。
店に着いた彼女は、カウンターの花瓶にさされている黒い百合の花を見て驚く。

ナイーブな心の持ち主、詩人のクロちゃん(山本廉)からのプレゼントだという。
他のメンバーは、画家のサボテン(堺左千夫)、三代目と呼ばれている画家の卵、山岡(平田昭彦)、そして、ナベさん(志村喬)、三平(小泉博)たち。

イブのその日、突然、雪子は山岡からプロポーズをされる。
それをきっかけとして、我も我もと、調子づいた連中が、負けじと彼女にプロポーズする。

しかし、当の雪子は、喜ぶどころか顔を曇らせ「自分は雪女郎の娘。男を食い殺す女なんです。」と打ち明け話を始める。

バーのママの御主人が住んでいる雪山の中の山小屋での話。

子供の頃、吹雪の中で行き倒れていた雪子は、そこで、営林技師の伸吉(三船敏郎)と知り合い、互いに愛しあうようになる。

ある年のクリスマスの日、午後から吹雪いてきたので、山小屋の主人は、伸吉に泊まって行くようにすすめる。ロマンチックな気分になった雪子は、伸吉と一緒の部屋で寝る事を喜ぶが、伸吉の方はすっかり照れてしまい、部屋に入るどころか、黒い百合を取って来るといって、夜の雪山に入り込んで行く。

その直後、雪崩が発生、伸吉は黒い百合を握ったまま帰らぬ人となる。

打ち明け話を終えた雪子は、その夜を最後に店を辞めてしまう。

その後、彼女の家を訪ねてきた山岡から、恋に破れたクロちゃんが自殺したと教えられる雪子。

1年後、別の店で歌っていた雪子は、再び、山岡から声をかけられる。
彼に勧められるまま「山小屋」へ連れて行かれた雪子は、かつての常連達と再会し、彼らからの強い希望もあって山岡との結婚を受け入れる事にする。

そのまま、楽しく常連達と歌い踊りながら、とあるキャバレーへなだれ込んだ雪子は、そこで、再び、仮装マスクのあの男性を見つけるのだった。

彼は、早川(三船敏郎-二役)といい、チンピラ達から追われているギャングだった。

彼女の、伸吉の面影を残すその男への思いは再燃し、とうとう、殺人を犯した彼との逃避行を決意するのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

正に、女性が好みそうな「ラブロマンス」の佳品である。

追われているはずの早川が、1年間も、同じような場所をうろうろしている不自然さなども、気にならないではないが、あくまでも、ロマンス特有の「運命の再会」…と解釈したい。

都会の雑踏、小さなバーの中、広大な雪山など、場面展開も面白く、地味な内容ながら飽きさせない。

基本的にセット中心だが、スキーシーンやクライマックスは、雪山での本格的なロケが行われている。

恋に殉ずる女の可憐さにほだされた一人の男を、三船がやや、タドタドしさを感じさせながらも演じ抜く。

山口淑子の歌うシーンも見所。