1971年、東京映画、中西隆三+山本邦彦脚本、山本邦彦監督作品。
1970年度の大ヒット曲、ソルティ・シュガーの「走れコウタロー」にヒントを得た喜劇か?
若き日のおひょいさん(藤村俊二)が主演というのも異色である。
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ある地方、暴走する馬のコウタローにしがみついているのは藤倉俊介(藤村俊二)であった。
彼は、馬を育てている父親(西村晃)から一人前の騎手になるよう訓練させられていたが、小さな頃から乗り物から落ちる癖があり、騎手なんかには向いてないと悩む青年であった。
折から、家出した所を連れ戻されてきたアケミ(緑魔子)と結託し、東京に逃げ出した俊介だったが、頼みのアケミには恋人がいる事が発覚、途方にくれた俊介は、たまたま無銭飲食として店主と揉めていた大阪弁の男、花村(左とん平)とひょんな事から口を聞くようになる。
花丸と別れた後、競馬新聞に書いてあった名前から、俊介は、父親の知り合いの嵐田(石田茂樹)の厩舎を訪れ、馬丁見習いとして住み込む事になる。
翌日から、出戻り娘のカナ子(郷ちぐさ)の猛特訓が始まる。
「馬ふんの熊さん」と呼ばれているベテラン馬丁の熊五郎(伴淳三郎)も、いつ俊介が逃げ出すのか心配顔。
一旦は、たまらず逃げ出そうとした俊介だったが、父親からの暖かい激励の手紙を受け取り、もうしばらく我慢する事を決意。
ある日、訓練中だった俊介は、馬に乗った素敵な令嬢、かすみ(菱見百合子)と巡り会う。
かすみの父親(小松方正)のお付き運転手となっていたのは、奇遇にも、かつて知り合ったあの花村であった。
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いかにも頼りな気ながらも、どこかペーソスを感じさせるおひょいさんのキャラクターをうまく生かした作品で、その俊介を中心に、アケミや花村ら、地方から夢を抱いて上京してきた若者達の「夢と挫折の物語」を描く良くあるパターンながら、後味は悪くない形にまとめてある。
物語後半には、山本コウタローらソルティ・シュガーも登場し、ちゃんと「走れコウタロー」を唄うシーンがある。
アンヌ隊員こと菱見百合子は、お色気キャラとしての映画出演が多いが、本作では珍しく富豪の令嬢役で登場、画面に紗がかかっていたりして、俊介が憧れるマドンナとしてきれいに描かれている。
微妙なのが、カナ子を演じる郷ちぐさの立場。
通常、彼女こそが真のマドンナ役なのではないかと思わせるが、そうではない所がちょっと意外といえば意外。
熊さん共々、俊介を、脇から支える陰の人物として描かれているのである。
しかし、印象としては、明らかにカナ子の存在の方が強い。
後半は、足に病気を持ってしまい、屠殺されかけていたコウタローと俊介が偶然にも再会し…という展開になる。
「喜劇」とタイトルにある邦画は、意外と笑えない事が多いのだが、本編も、コメディとして観ていると、さほど笑うような所はない。
むしろ、ちょっと臭いペーソス(泣き笑い)ものと認識して観た方が良いだろう。
