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走れ!コウタロー 喜劇・男だから泣くサ

1971年、東京映画、中西隆三+山本邦彦脚本、山本邦彦監督作品。

1970年度の大ヒット曲、ソルティ・シュガーの「走れコウタロー」にヒントを得た喜劇か?

若き日のおひょいさん(藤村俊二)が主演というのも異色である。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ある地方、暴走する馬のコウタローにしがみついているのは藤倉俊介(藤村俊二)であった。

彼は、馬を育てている父親(西村晃)から一人前の騎手になるよう訓練させられていたが、小さな頃から乗り物から落ちる癖があり、騎手なんかには向いてないと悩む青年であった。

折から、家出した所を連れ戻されてきたアケミ(緑魔子)と結託し、東京に逃げ出した俊介だったが、頼みのアケミには恋人がいる事が発覚、途方にくれた俊介は、たまたま無銭飲食として店主と揉めていた大阪弁の男、花村(左とん平)とひょんな事から口を聞くようになる。

花丸と別れた後、競馬新聞に書いてあった名前から、俊介は、父親の知り合いの嵐田(石田茂樹)の厩舎を訪れ、馬丁見習いとして住み込む事になる。

翌日から、出戻り娘のカナ子(郷ちぐさ)の猛特訓が始まる。

「馬ふんの熊さん」と呼ばれているベテラン馬丁の熊五郎(伴淳三郎)も、いつ俊介が逃げ出すのか心配顔。
一旦は、たまらず逃げ出そうとした俊介だったが、父親からの暖かい激励の手紙を受け取り、もうしばらく我慢する事を決意。

ある日、訓練中だった俊介は、馬に乗った素敵な令嬢、かすみ(菱見百合子)と巡り会う。

かすみの父親(小松方正)のお付き運転手となっていたのは、奇遇にも、かつて知り合ったあの花村であった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

いかにも頼りな気ながらも、どこかペーソスを感じさせるおひょいさんのキャラクターをうまく生かした作品で、その俊介を中心に、アケミや花村ら、地方から夢を抱いて上京してきた若者達の「夢と挫折の物語」を描く良くあるパターンながら、後味は悪くない形にまとめてある。

物語後半には、山本コウタローらソルティ・シュガーも登場し、ちゃんと「走れコウタロー」を唄うシーンがある。

アンヌ隊員こと菱見百合子は、お色気キャラとしての映画出演が多いが、本作では珍しく富豪の令嬢役で登場、画面に紗がかかっていたりして、俊介が憧れるマドンナとしてきれいに描かれている。

微妙なのが、カナ子を演じる郷ちぐさの立場。

通常、彼女こそが真のマドンナ役なのではないかと思わせるが、そうではない所がちょっと意外といえば意外。

熊さん共々、俊介を、脇から支える陰の人物として描かれているのである。

しかし、印象としては、明らかにカナ子の存在の方が強い。

後半は、足に病気を持ってしまい、屠殺されかけていたコウタローと俊介が偶然にも再会し…という展開になる。

「喜劇」とタイトルにある邦画は、意外と笑えない事が多いのだが、本編も、コメディとして観ていると、さほど笑うような所はない。

むしろ、ちょっと臭いペーソス(泣き笑い)ものと認識して観た方が良いだろう。