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箱根山

1962年、東宝、獅子文六原作、井手俊郎脚本、川島雄三脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

雷雨の中、国会の場では、唐崎運輸大臣(藤田進)を間に挟んで、函豆交通の篤川安之丞(小沢栄太郎)と南急交通の近藤杉八(中村伸郎)が、箱根をめぐるバス運行の権利をめぐって激論を戦わせている。

ナレーション(おそらく、中島そのみと小池朝雄)により、長年、箱根の観光をめぐって、二つの観光会社がライバル心むき出しで戦ってきた歴史が説明される。

一方、そんな地元の争い事とは無関係のように、東京の大手、氏田観光の北条一角社長(東野英治郎)は、芦ノ湖スカイラインの工事を着々と進めていた。

そんな「喧嘩が絶えない」足柄にある二つの旅館、玉屋と若松屋も150年間、ライバルの関係にあった。

若松屋の娘で、高校生の明日子(星由里子)は、そんな旅館業を毛嫌いしていた。
彼女の父親(佐野周二)は、箱根研究の第一人者で、明日子の名前も、彼が地元の地名研究を元に付けたものだった。

一方、玉屋の若き使用人、勝又乙夫(加山雄三)は、戦争中、地元に滞在したドイツ兵フリッツと女中だった乙女の間に生まれた子供だったが、母親は出産直後に亡くなり、戦後、父親は妻の待つ祖国に帰る事になったので、今年89になる女将の里(東山千栄子)が預かって育ててきた18才の勉学優秀な若者だった。

ある日、玉屋に、氏田観光からの紹介で、大物政治家、大原泰山(森繁久弥)が、皮膚病の治療のため宿泊する事になる。

そんな泰山、乙夫に湯舟で背中を流してもらっている内に、彼から「人が歩く遊歩道」を作って欲しいと依頼される。泰山は、乙夫の人柄とそのアイデアを気に入り、さっそく、北条社長にその案を進言する。

北条も又、その発想を気に入り、発案者の乙夫を自らの会社の社員として引き抜こうと考える。

一方、明日子の学業不信を気に病む母親(三宅邦子)は、乙夫に家庭教師を依頼しようと夫と相談するが、当の明日子は、ちゃっかり、従順な乙夫を「家来扱い」して、苦手な英語をこっそり教えてもらっていた。

そんな中、若松屋夫婦が旅行に出かけた最中、玉屋の旧館から火災が発生、乙夫に助け出された里は、なりゆきから明日子の家に厄介になる事に…。
火事騒ぎが一段落した後、里は番頭の不手際から火災保険が降りなかった事や、長年ライバル関係にあった家の厄介になってしまった事への屈辱感から体調を崩し、がっくり寝込んでしまう。

ところが、この火事騒ぎを利用し、番頭の小金井寅吉(藤原鎌足)に近づいてきたのが、氏田観光の塚田総支配人(有島一郎)。
かねてより頼み込んでいた乙夫を譲り受ける話を承知してくれたら、寅吉が推進しながら、いまだ成功しない、温泉を掘るボーリング費用と、火事による損害分を全額融資しようというのであった。

さらに、乙夫には、里の発案により、玉屋の跡取りにするために、三島にある茗荷屋という店の末娘、フミ子(北あけみ)との結婚話まで進行していた。

乙夫は、恩義ある女将と玉屋のために、氏田観光に入る事を承知するが、フミ子との縁談話は断固として拒絶する。

芦ノ湖の湖水祭りの夜、久々に再会した乙夫と明日子は、互いの本当の気持ちを確認しあうのだった。

乙夫は、10年後に必ず戻って来ると約束し、東京の氏田観光へ。
そして、彼を待ち受ける事を決意した明日子は、率先して旅館業を勉強しはじめる。

皮肉なもので、その直後、玉屋が長年掘り続けていたボーリングが、温泉を掘り当てる。
さらに、ドイツのフリッツから、乙夫を引取りたいと手紙が里の元に届く…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

何となく「ロミオとジュリエット」を連想させるような青春ドラマになっている。

悲劇性はなく、むしろ、未来に賭ける若者達の、理想に燃えた意気込みが伝わって来るような爽やかな展開となっている。

パワフルな実業家、北条、おっとりした学者肌の明日子の父親、年に似合わず元気者の里など、主要なキャラクターが面白く造型されており、若い加山と星の演技を支えている。

他にも、館豆観光の大浜社長を演じる上田吉二郎、頑固なボーリング職人を演ずる西村晃、生真面目そうな新聞記者、児玉清、おしゃべりな玉屋の仲居役、塩沢とき、若松屋にとう留していた映画監督役の藤木悠、乙夫に代わって、明日子の家庭教師となるちゃらんぽらんな植木役の二瓶正典など、適材適所の脇役陣が、話をきっちり締めているので、安心して観ていられる。

基本的に文芸物なので、派手さはなく、地味な展開ではあるが、真面目なストーリーには共感を覚える。