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強情親爺とピンボケ息子

1957年、宝塚映画、大島得郎原作、新井一脚色、小田基義監督作品。

ジャズ歌手を夢見る一人娘(ペギー葉山)と暮す、お人好しの金五郎(柳家金語楼)を主役に、東京下町を舞台にした人情喜劇を描く「強情親爺とドレミハ娘」(1957)の続編。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

寿司金横町の一角にある空き地で子供達が遊んでいる。
その隅に座り込んでいる一人の貧しい身なりの老人一人。
足元に子供達の手からそれたボールが転がってきても、拾ってやる気力もない様子。

やがて、その老人は、寿司金にやってきて来るが、食事の後、持ち合わせがないというので、留守を預かっていた見習い職人のサブちゃんはいきり立ち、無銭飲食として、その老人を警察に引き渡してしまう。

その後、店にやってきたのが、おしゃべり地主のお清(森光子)。
その昔、この辺り一体の大地主で、町内の者たち全員がひとかたならぬ世話になった阿波屋の御主人が店に来る約束になっているという。
それを聞いたサブちゃんとお手伝いの町子(若水ヤエ子)は、先ほどの老人の事だと気付き真っ青になる。

案の定、店に帰ってきて事情を知った金五郎は大激怒。

警察から連れ戻してきた御主人に、寿司金の二階で恐縮する金五郎ら、町内の連中。
阿波屋の主人は、戦後、土地を税金として没収され、今は無一文の身に成り果てていたのだった。
今、子供達の遊び場になっている空き地こそ、元、阿波屋の家があった場所なのであった。

今こそ、昔受けた恩を返す時だとばかり、全員で金を出し合い、元の土地を買い戻そうと相談がまとまる。

ところが、その空き地は、ニコポン堂薬局の主人(横山エンタツ)とジミー・カーチス(E・H・エリック)なる見知らぬ外国人によって買われ、すでに地割りをしているという。

建築資材の運搬に駆り出されていたのは、しげ子から譲り受けたダイハツの三輪自動車を始めて使う事になる浪花運送店の兄弟、大吉(中田ダイマル)、初吉(ラケット)らであった。

それを知った金五郎たちは、工事を差し止めようと、空き地にテントを張り、居座りを始めるのであった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

またまた、他愛無い町内のもめ事を描いた作品。

前作同様、町会議員のニコポン堂がちょっとした悪巧みの首謀者として騒動の火付け役になるのだが、結局、金五郎たちとは丸く治まり、犬猿の仲になるまでには至らない…という所がミソ。

今回は、しげ子の見合い話が持ち上がり、前回、ミルクホールの女給幸子(環三千世)からふられ、今ではしげ子に夢中になったサブちゃんが、それをぶち壊そうと、しげ子の身替わりとして町子を見合い場所に連れて行くというエピソードがある。

東北弁が売り物だった若水ヤエ子が、初めての見合いに恥ずかしがる姿が愛らしくも楽しい。

不良外国人を演ずるE・H・エリックは、若いせいか、弟のファンファン(岡田真澄)に雰囲気がそっくり。

ラスト、恋に破れたサブちゃんが、空き地に出来たブランコに一人乗って「ゴンドラの唄」を寂し気に唄う所がある。
もちろん、あの名作のパロディだろうが、こちらでも心に残る名シーンとなっているのが見事。

しげ子の吹き込んだレコード曲が、ラジオから流れて来るのを、町内の人たちがこぞって聞き入っていたり、デパート店員の同僚が、「宝田明から、間違い電話がかかってきた」などと、嬉しそうにしげ子に報告する姿が時代を感じさせる。