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強情親爺とドレミハ娘

1957年、宝塚映画、大島得郎原作、新井一脚色、小田基義監督作品。

柳家金語楼主演の町内コメディ。人気ラジオドラマの映画化作品らしい。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

通称、寿司金横町と呼ばれる下町が舞台。

寿司金の主人金五郎(柳家金語楼)は、無類の義太夫好き、今日も電話相手に長々と唸っている始末。
その様子を、店先に集まった近所の住民達が何ごとかと覗き込んでいる。

そんな所に「大変、大変」と飛び込んできたのは、おしゃべり地主のお清(森光子)。
何でも、寿司金横町が下水管交換のため掘り返されるという。
つい先日、掘り返したばかりで大迷惑だと、いきり立つ金五郎だったが、その工事で働く人夫達は、皆生活が苦しくて、満足に家族も養えず…などと聞いたものだから、態度を急変、翌日から、人夫達全員の食事の世話一切を自分が面倒見ると言い出す。

実は、その工事、その昔、この辺りが金座だった事から、寿司金の店の近く付近から小判が出るのでは考えた、町会議員でニコポン堂薬局主人、依田小太郎(横山エンタツ)の策略だったのであり、人夫の救済のためなどというのは、でっちあげに過ぎず、人の良い金五郎はまんまと騙されていたのであった。

一方、母親を亡くした後、金五郎一人で育ててきた娘で、今はデパートのレコード売り場で働いているしげ子(ペギー葉山)は、秘かにジャズ歌手を夢見ており、恋人の牧野(小原新二)の紹介でレコード会社のオーディションを受けるが、評判はイマイチ…。

金五郎は、自分と趣味の合わない娘を煙たがっていたが、 しげ子の方は、底なしのお人好しで、今回もニコポン堂に丸め込まれている事に気付かない父親を心配していた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

テレビ初期の頃のドラマなどでもお馴染みだった、町内の面々が繰り広げる他愛のない一騒動を描いた人情喜劇。

寿司金の見習いサブちゃんに有島一郎、お手伝いさんの町子に若水ヤエ子、サブちゃんが気がある、近所のミルクホールの女店員幸子が環三千世、向いにある浪花屋運送店の兄弟、大吉が中田ダイマル、初吉がラケット…。

お気付きだろうか?最後の兄弟の名前。
ダイキチ、ハツキチ…、つまり、二人合わせて「ダイハツ」である。

この作品、どうも、ダイハツが協賛しているらしい。

事実、本作の後半、しげ子が受けるコンテストの一等商品は、ダイハツの三輪自動車であり、舞台のバックに大きく「ダイハツ工業株式会社」の文字が写る。

「番頭はんと丁稚どん」とか「スチャラカ社員」系統の話を、東京下町(画面に「人形町」という文字が出る)に移し替えたようなものだと思えば良いだろう。

ミルクホールという設定も珍しい。
もっと、昔のものかと思っていたが、戦後のこの時代でも普通に町内にあったという事だろう。
ミルクと一緒に「シベリヤ」というお菓子を頼むのがお洒落だったらしい。
「シベリヤ」というのは、一見、三角に斬ったカステラ生地の間に、羊羹を挟んだものだっただろうか?

テレビが、そのミルクホールに始めて備え付けられるという辺りの描写も興味深い。

銭湯帰りで、立ち寄ったサブちゃんが、常連たちに冗談を聞かせようとするが、誰も相手にしてくれない。
みんな、初めて観るテレビに夢中なのだ。

そのテレビに写っているコメディらしき番組に出ているにも、実は有島一郎その人という楽屋落ちがおかしい。

有島一郎がそれだけ売れっ子だった時代という事だろう。

森光子やペギー葉山の若い姿にも驚かされる。

寿司金の客として、阪急ブレーブスの監督や投手、バルボン二塁手などがゲスト出演しているのも見所。

余談だが、黒沢清監督の「ドレミファ娘の血は騒ぐ」(1985)のタイトルは、本作がヒントになっているのではないだろうか?