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エノケンの青春酔虎伝

1934年、P.C.L.、山本嘉次郎監督作品。

エノケン一座がP.C.L.と提携して作った第一作で、ミュージカル作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ライス大学で9回も落第している榎本(榎本健一)は、卒業試験が終わった後、姉の亭主の娘であり、カレー女学院に通っているリラ子(堤真佐子)に会いたくて、こっそり寄宿舎に入り込むが、舎監(武智豊子)に見つかってしまい、写真家に化けて何とかその場をごまかそうとしたが失敗、ホウホウの態で逃げ帰る。

試験結果が不安な榎本を見兼ねて、級友の二村(二村定一)と如月(如月寛多)は、一緒に、教授の自宅に出向き、榎本に泣き落しの真似をさせて、卒業させてくれるよう頼み込むが、実は落第が決定したのは、二村と如月の方で、榎本は何とか卒業できる事が分かる。

大会社の社長(柳田貞一)の息子だった榎本は、卒業後、すんなり社長になるが、リラ子への片思いがつのり、ラブシックで寝込んでしまう。
それを見兼ねた母親(英百合子)が紹介した美貌のマチ子(千葉早智子)にすっかり参ってしまった榎本は、すんなり彼女と見合いをした後、結婚する。

そんなある夜、不粋にも、新婚宅に訪ねてきたのは、二村と如月達。
二村が学校を辞めて、ビアホールを開くという知らせを告げに来たのだったが、そうとは知らず、女中のおなべを使って厄介払いをした榎本に腹を立て、彼らは榎本とその場で絶交してしまう。

その後、その絶交の顛末を、旧友代表としてマチ子へ教えに来たリラ子とトリ子が帰った後、マチ子は、リラ子が見ていた壁のモナリザの絵を外して、裏面に記してあった「リラ子の想い出のために」という榎本の文字を発見してしまう。

嫉妬に狂い、会社から榎本を呼び返したマチ子はヒステリーを爆発させるが、当の榎本の方は鬱憤の晴らしようがなく、そのまま表へ飛び出してしまう。

すると、ビアホールを開店したばかりの二村が、やくざたちから因縁を付けられている姿を見つけたので、これ幸いとばかりに、そのまま、店に入り込み、上の下へをの大立ち回りを始める…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

冒頭、いきなり校舎から飛び出してきた大勢の女生徒達が、一斉に丘で踊り始める所から、ラスト、ビアホールで全員が歌う所まで、全編ミュージカル仕立てが楽しい作品になっている。

所々、無声映画風に動きだけで見せるシーンなども興味深い。

戦後、独特の嗄れ声がコミカルな、痩せたおばあさん役者として、テレビ出演も多かった武智豊子の若い頃の姿が珍しい。
声はそのままなのだが、顔はふくよかで愛らしく、全体的にぽっちゃりした体型の女性であった事に驚かされる。

榎本が経営する会社の老事務員が中村是好、課長役が藤原鎌足である。

藤原鎌足が主演した「音楽喜劇 ほろよい人生」同様、この作品でも、ビアホールが後半の重要な見せ場になっている。ひょっとすると、本作も、ビール会社との提携なのかも知れない。

それまでの、どちらかというと、のんきなミュージカル風喜劇だったものが、クライマックスでは、突然、大アクションシーンの連続になるのが、何とも取って付けたようで異様。

飛んだり跳ねたり、エノケン一流の素早い動きが素晴らしい。

ストーリー自体は、取り立てて面白いというものでもなく、作られた時代の関係もあって、全体的に、やや冗漫気味ではあるが、最後の大立ち回りだけは、今でも見ごたえがある。

当時、浅草で人気を博していたエノケンの、魅力がぎしり詰まった記念すべき作品である。