TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

或る剣豪の生涯

1959年、東宝、稲垣浩脚本+監督作品。

「シラノ・ド・ベジュラック」の翻案である。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

慶長4年、京の都。
太閤の死後、巷では徳川方の旗本達が横暴を極めていた。
今日も、出雲の阿国の踊りがかかる芝居小屋に、ただで入ろうという不届きもの達(天本英世ら)が木戸番(大村千吉)といざこざを起している。
そこに登場したのが、長身の美剣士、苅部十郎太(宝田明)。

群集監視の中で、大立ち回りが始まりかけたその時、群集の中から「徳川直参、 長嶋主膳様が来る!」とのかけ声が。
主君の名に驚き、立ち去る旗本達。
十郎太に加勢する目的で声をかけたのは、十人槍仲間の赤星左近(平田昭彦)であった。

芝居小屋ではその長嶋主膳(河津清三郎)や千代姫(司葉子)らが見守る中、阿国(三好栄子)の踊りが始まる。
すると、観客の中から、「謹慎すると約束したのに、何故踊っている!」と弥次が入る。
狼狽する阿国。
弥次を飛ばしたのは、編み笠姿の侍であった。

主膳ら賓客の手前もあり、躊躇する阿国の態度に業を煮やし、舞台にまで上がり込んで、彼女を追っ払う侍。
編み笠を取ると、何とも異様に大きな鼻の持ち主、駒木兵八郎(三船敏郎)であった。

その横暴さに怒った主膳の家来達相手に、流暢な弁説と立ち回りを舞台上で観客に披露する駒木。
その活躍振りに、芝居を観に集まっていた観客達はヤンヤの大喝采。
観客の中にいた駒木を良く知る飲み屋の主人、楽三(藤原鎌足)も鼻高々であった。

そんな駒木の住まいに乳兄弟の千代姫が訪ねてきて、今度十人槍に入る苅部の事をよろしく頼むと依頼して行く。

正直な所、千代姫にかねてより秘かな思いを寄せていた駒木は面白かろうはずもなかったが、実際に苅部と出会い、その物おじしない態度を気に入った彼は、表現力に乏しい苅部と千代姫との恋を手助けする事になる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

何とも、ユーモラスな三船の演技が印象的な作品。

優秀な頭脳、卓越した剣術、さらに、近所に住む知的ハンデを持つ娘、七重(淡路恵子)に優しく接するような生来の優しさなど、人間的に優れた面をたくさん持ちながらも、その容貌ゆえに、たえず「道化」に徹して生きる事しかできない男の哀しさ。

そうした前半での駒木の描写が、後半の悲劇性、感動を強調する仕掛けになっている。

正直な所、冒頭の駒木登場の愉快なエピソード以降の展開は、意外と冗漫で退屈といわざるを得ない。
稲垣監督の時代劇には、こうした凡作が少なくないので、このまま退屈なまま終わるのかと思いきや、ラストで泣かされた。

三船の意外な一面を垣間見る事ができる異色作。