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雨に唄えば

1952年、アメリカ、ジーン・ケリー+スタンリー・ドーネン監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

今をときめくハリウッドスター、ドン・ロックウッド (ジーン・ケリー)は、無名のスタントマンから叩き上げ、モニュメンタル映画社の看板女優だったリーナ・ラモン (ジーン・ヘイゲン)とコンビを組む事で伸し上がってきた男だった。

そんな彼は、試写会の後、殺到するファン達から逃れようとするはずみに、どうした事か、一人の女性が運転する自動車の助手席に紛れ込んでしまう。
驚く女性は、しかし、彼の事を有名な俳優と知っても驚く風ではなく、自分は映画なんかほとんど観ない、舞台女優のキャシー・セルダン(デビー・レイノルズ)だと名乗る。

そんな彼女に送ってもらったパーティ会場で、ドンは、映画会社社長から、「トーキー」なる音の出る映画の試作を見せられる。
さらに、余興として用意された大きなケーキの中から、先ほどのキャシーがドンの目の前に飛び出して来たから、さぁ大変。両者は目を白黒。
彼女は、まだまだ、そんな仕事をしなければ食べて行けない程度の役者の卵だったのであった。

ドンは、そんなキャシーに親近感を覚えるのだったが、キャシーの方は、先ほど見栄をはった手前、バツが悪くてその場から逃げ出してしまう。

映画界に、とうとう「トーキー」の時代が訪れる。

ひどい声で訛りが抜けないながら、気位だけは高いリーナに、周囲の人間は困り果てて行く。

何とか完成させた初のトーキー映画「決闘の騎士」は、技術的な未熟さもあって、観客に失笑される始末。

その結果を観、ドンは俳優としての先行きに絶望しかけるが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

激変する時代の映画界を舞台に、役者としての夢を追い掛ける男女の出合いと成功を描いたミュージカルの傑作。

劇中では、コメディ仕立てで描かれているが、実際は、トーキーの出現によって、人生を狂わされてしまった映画関係者達も多いはず。当時は、笑って済まされる問題ではなかったはずだ。

そういう背景にもめげず、とにかく最後の最後まで「夢」を追い続けようとする映画人たちの心意気が表現されているようで、観ていて実にすがすがしい。

俗な言葉だが、「ネバー・ギブアップ」「人生の応援映画」ともいうべき内容になっている。
それを、どこまでも明るく楽しく軽やかに描いているのが見事。

俳優達の歌や踊りといった才能も凄いが、セット美術、合成などといった裏方を支える技術も一流で、その全てが相まって、正に「憧れと夢のハリウッド」が描かれている所が凄い。

キャシーを演じるデビー・レイノルズの愛くるしさは、筆舌に尽くしがたい程。

50年代初頭のファッションの数々も洒落ていて、今観ても、その魅力は色褪せる事はない。

オールド・ハリウッドを象徴するような楽しくて、美しくて、洒落ていて、観ているだけで元気が出る作品。

テレビの吹き替えでは、ドンを、若き日のキンキン(愛川欽也)が演じており、これ又、軽妙で絶品。