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遊星王子(第一部・第二部)

1959年、東映東京、伊上勝原作、森田新脚本、若林栄二郎監督作品です。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

孤児の誠君(小森甲二)と君子ちゃん(都築みどり)は、靴磨きの青年ワクさん(梅宮辰夫)に面倒を見てもらっていた。

そんな彼らは、真城博士(明石潮)の家に遊びに来ていた。
博士の息子の一郎君(朝見朗)と一緒に、ボクシング、フライ級の世界選手権をテレビで見せてもらうためだった。

ところが、そのテレビに映し出されたのは、奇妙な宇宙船。
それは、日本中のテレビに映っており、やがて、画面に登場した妖し気な男は、「銀星からやってきたまぼろし大使(岡譲司)」と名乗り、明晩8時に、日本のある地点の到着すると予告する。

新聞社「デイリージャパン」の記者、東野(杉義一)と田部井(長谷部健)らは、翌晩、千本松付近に着陸した宇宙船を取材しようと駆け付けるが、現場はすでに、警視庁の武田(神田隆)率いる警察隊が周囲を包囲しており近付けない。
真城博士の車で現場に連れてきてもらった誠君と一郎君は、こっそり二人で円盤に近づく。

警察隊は、宇宙船から降り立ったと思われる「アトミクロン(巨大なマイクのよう)」なるメカが発射する光波によって、次々と消されて行く。

そこに、突如現れたのは、全身白づくめの「平和の使い 遊星王子」その人であった。
王子は、光波棒(チャッカマン風?)で宇宙船を撃退した後、近くで見ていた二人の少年に、自分を呼ぶ時は、このダイヤルを廻しなさいといって、不思議な装置を渡して姿を消す…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

村上不二夫主演で、人気の高かった子供向けテレビヒーローものを、デビュー直後の梅宮辰夫が演ずる劇場版。
地球から銀星まで、一日半で到着できるという真城博士発明の驚異のロケット燃料を、まぼろし大使が奪いに来るという「遊星王子」と、その真城博士ら世界の頭脳達が、まぼろし大使の銀星の巣窟、奇巌城に誘拐される「遊星王子 恐怖の宇宙船」の二部からなる。

何とも、レトロというか、戦前の「フラッシュ・ゴードン」を連想させるようなキッチュなデザインのメカや科学用語が登場して来る所が御愛嬌。

「月から30万5千kmの所にある銀星」「W電波」「地底車」「殺人光波砲」「WX探査機」「溶解弾」…。

怪人が、科学者の発明品を、その助手を操作して研究所に侵入し、盗み出そうとする発想は、本作の原作者、伊上勝が脚本を担当した、後の「仮面ライダー対ショッカー」(1972)などにそっくりそのまま流用されている。

宇宙人と戦う遊星王子が、かなり高い所に立つ姿を下から見上げたアングルなど、後の変身ヒーローものの演出法と全く同じである。
そういう意味では、変身ヒーローものの原点とも言える作品かも知れない。

ちなみに、本作で宇宙人に頭脳を操作された助手の柴崎役を演ずるのは、「ウルトラセブン」の「第四惑星の悪夢」で、ロボット長官を演じた成瀬昌彦である。

魔女のような付け鼻に鬚面という、何とも面妖なメイクでまぼろし大使を演ずるは、かつて金田一耕介や明智小五郎など、名探偵役を得意としていた二枚目、岡譲司。(ちなみに、梅宮辰夫も、デビュー作は「少年探偵団 敵は原子潜航艇」での明智小五郎役である)
さすがに、この頃の岡は老けて太っており、往年の面影はない。

第二部で、奇巌城を守る銀星の巨人(顔は、醜いヨーダ風)に扮するは山本麟一。

奇巌城内のセットはだだっ広いだけで、何やら、後の「宇宙からのメッセージ」(1978)のセットを連想させるようなおおまかなデザイン。

クライマックス、宇宙の要塞の中で繰り広げられる攻防の様子は、「フラッシュ・ゴードン」をイメージしているのであろうが、今観ると「スター・ウォーズ」のデス・スター内での戦いのようである。

モデル出身の若き梅宮辰夫は、演技は下手そのものだが、超イケメン!
マスクを被った遊星王子も、彼自ら演じている。

独裁者まぼろし大使が支配する銀星の文字がアラビア文字風なのが、今観ると、何やら意味深である。