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1987年、東宝映画、黒柳徹子原作、大森一樹脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和14年、男の子と相撲をとっている少女の姿。幼い頃のトットチャンこと柴柳徹子であった。

「アメリカではテレビジョンというものがあって、みんなの家でも、そのうち、その小さな箱の中で相撲が観られるようになる」という男に対し、「嘘!どうやって、ちいさな箱にお相撲さんが入るのよ!」と切り返すトットチャン。

昭和28年、内幸町のKHKに研究生募集の筆記試験を受けに来た柴柳徹子(斉藤由貴)は、試験会場がお茶の水の明治大学である事をその場で聞かされ真っ青!

何とか、試験場に潜り込んだものの、結果は惨澹たるもの。
隣の席で一緒に受験していた長身の男、黒沢(高嶋政宏)とひょんな事から口を聞くようになるが、彼も電気学科出身の変わり種、試験に自信がないのは、徹子と同じであった。

しかし、数千人の応募者の中から、幸運にも、彼らを含めた数十人だけが合格し、様々な勉強を始める。

柔和な岡山先生(植木等)、タップの沖田先生(寺田農)、厳しい先輩の中野葵子(久野綾希子)、ディレクターの永井(三浦洋一)らにしごかれながら、失敗ばかりしているトットチャンも、少しづつ成長して行くのであった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

斉藤由貴のアイドル映画であると同時に、青春ドラマであり、日本のテレビの夜明けを描いた作品でもある。

アイドル映画としては、斉藤由貴の愛らしさが良く表現されていると思う。
格段、彼女のファンでなくとも、本作での彼女は、文句なく愛すべきキャラクターとして描かれている事が分かる。

青春ドラマとしては、途中から東宝へ俳優として引き抜かれる黒沢をはじめ(映画会社がテレビ局の新人を引き抜くという所が興味深い)、高校時代、演劇をやっていた涼子(渡辺典子)、かおる(村上里佳子)、美保(網浜直子)ら、同期の仲間達のその後の生き方の選択、当初、一番落ちこぼれだったトットチャンが放送界で生き残って行く皮肉、現実の厳しさ、寂しさ、友情などが描かれる。

テレビ創成期のドラマとしては、生放送時代の失敗談を中心に、面白おかしくまとめられている。

全体としては、それなりに楽しめる娯楽作品だと思う。

研修生時代、帰宅時のトットチャンらとひょんな事から知り合うオカマを演じる高橋長英、また、たえず、彼女たちに厳しく接しながらも、その成長を見守っている葵子役の久野綾希子が印象的。

トットチャンがエキストラとして画面に登場するバラエティ番組収録中、元気に「買い物ブギ」を歌っている歌手役は、若き室井滋である。

また、後に「ゴジラ映画」を撮る事になる大森監督らしく、本作にも「ゴジラ」が登場する。

一つは、砧にあるNHK技術研究所へ、トットチャンと黒沢が実験映像用のモデルとして呼ばれて、バスで向うシーンで、しっかり、ゴジラの作り物を積んだ東宝マークの入ったトラックが、ゴジラのテーマ曲と共に通り過ぎる。

これは、昭和29年に公開された最初の「ゴジラ」を踏まえたお遊びなのだが、実際は、秘密裏に作られていた作品だけに、こうした事はあり得なかったはずだ。

また、ゴジラ公開のポスターが貼られた壁の前を、トットチャンらが帰宅するというシーンもある。

劇中、「七年目の浮気」のモンローよろしく、トットチャンが地下鉄の送風口に立つと、通過する列車の風圧で、彼女のスカートがめくれ上がり、思わず前を押さえるというシーンが登場する。

若き黒柳徹子さんが、そういう色っぽくも可愛い経験をしていたとは…。
興味深いエピソードがたくさん出て来るのも、見所の一つであろう。