1960年、東映京都、鷹沢和善+田村敏脚本、沢島忠監督作品。
中村錦之助、賀津雄兄弟が、各々、尾州名古屋の城主、徳川宗長、紀州和歌山の城主、徳川義直に扮する「殿さま弥次喜多」シリーズの第三作で最終作でもある。
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八代将軍の候補に上がった宗長と義直の両名。
互いに嫌がって相手に将軍候補を押し付け合うので、互いの家臣達は困り果て、叉ぞろ、町人姿で飛び出されてはかなわないと、二人の殿さまの乗った二つの駕篭共、途中で逃げられぬように外から厳重に綱を結わえ、あたかも「小荷物扱い」のようにして、両家が揃って江戸へ送り届ける事となる。
それを、途中で待ち伏せ、鉄砲で狙っていた一味があった。
越前忠治を八代将軍にしようと企んでいた安藤対馬守(蒲田研二)の配下のものたちである。
しかし、彼らが引き金を引く寸前に、行列の中から、逆に銃声が轟きわたる。
その音に驚き、すわ、待ち伏せがばれたとばかりに慌てて逃げ出す暗殺隊一行。
しかし、行列の中から拳銃を撃っていたのは、両家のお供の垣内権兵衛(田中春男)と柿内権兵衛(千秋実)、そして、狙っていた相手は木の上に登っていたお君(美空ひばり)であった。
弟の凧が引っ掛かっていたので、取ってやろうとしていたのだと言い訳をするお君であったが、実は彼女は、二人の若君の取材をしようと先乗りしていた「いろは瓦版」の記者だったのである。
お手討ち寸前の彼女に駕篭の中から優しい言葉をかけて救ったのは義直。
姿は見えないながら、すっかり、義直に惚れ込んでしまったお君。
やがて、次の宿では、いくつもの瓦版屋が、次の将軍候補の様子をスクープしようと大混乱の真っ最中。
結局、その騒動に紛れて、二人の若様は、いつもの旅姿に身をやつすと弥次喜多として旅に出るのだが、ひょんな事から、あのお君と再会し、いろは瓦版の手伝いとして働く事になってしまう。
そんな二人は、ライバル瓦版屋のエンマ堂と町中で喧嘩となり、それを止めに入ってきた変な侍、菱川土師兵衛(大河内伝次郎)と、焼き芋屋のお八重(丘さとみ)と知り合う事になるのだが、何と、土師兵衛はお君の実の父親である事が判明し、お八重は義直と良い仲になってしまう。
そうこうする内に、二人の行く先を突き止め、その命を葬ろうとする対馬守の配下達と、尾州、紀州両家の捜索隊が入り乱れて、町中は上を下をの大騒ぎとなって行く…。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
弥次喜多とはいいながら、本作では旅らしい旅を二人がしなかったり、ひばりに今一つ生彩がない所など、もの足らなさがないでもないが、ドタバタ度はシリーズ一番かも知れない。
特に、「ウイリアム・テル序曲」のメロディーに合わせて、逃げ出した両若様を馬で追跡する家臣達が、その当の若様が隠れ乗っている荷車を知らない内に引っ掛けて、そのまま全速力で引きずって行くシーンや、いろは瓦版にいる二人を発見した大勢の暗殺団が、二人を町中追い掛ける件は、スラプスティックギャグとして良く出来ている。
さらにクライマックスでは、吉原を舞台に、二人助六に扮した両若様が、胸の空くような大立ち回りを披露するサービスもある。
元気一杯の坊やだった頃の、錦之助、賀津雄両兄弟の活躍振り、ちゃめっけ振りが可愛い。
特に、弟の賀津雄の方は、売れっ子だった兄のように妙な気取りがないだけに、素直にその愛嬌が伝わって来て好ましい。
丘さとみも、キラキラと輝くように愛らしい時期である。
肩の凝らないドタバタナンセンス時代劇として、理屈抜きに楽しんでもらいたい一品である。
