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町奉行日記 鉄火牡丹

1959年、大映京都、山本周五郎原作、八尋不二脚本、三隅研次監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

江戸城中の松の廊下の向い側の部屋で、茶坊主たちが「忠臣蔵」の錦絵を見ながら、かつて「松の廊下」で起こった、あの歴史的な事件のような現場に遭遇してみたいものだと冗談を言い合っている。

ちょうどその頃、城中にいた松井摂津守(島田竜二)は、隣国の赤井播磨守(南条新太郎)からなじられていた。
その理由というのは、摂津守の藩にある港には、橋一つで繋がった出島のような「濠外」と呼ばれる治外法権的な悪所があり、そのような場所から得られる「不浄な金」で藩が潤っているというのは恥ずかしくないかというものであった。

恥をかかされた摂津守は、あやうく、「松の廊下」での刃傷沙汰を繰り返しそうになるが、一大決心をして、自分自らが新しい町奉行を決め、「濠外」の浄化をしようと乗り出すのであった。

後日、国元では、素性の悪い新らしい町奉行が到着するらしいという噂が流れるが、当の本人は、ちっとも奉行所に出所して来ない。

その頃、「濠外」の遊興街に、一人の頬被りに着流し姿の粋な若者が姿を現す…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

2000年に公開された「どら平太」(市川崑監督、役所宏司主演)の元ネタである。

酒と女には目がない八方破れの主人公、望月小平太に、若き白塗りの勝新が扮している。
とにかく、たえず、若い女からはモテモテ…と設定であり、そのお相手の一人は、可愛らしい時代の中村玉緒ちゃんである。

恋のお相手が多い平様(小平太の事)に嫉妬したおたま(中村玉緒)が、「私という者がありながら…」と、お座敷の中で空手のポーズを取る中国人女性と対峙するシーンなどが笑わせる。(勝新と中村玉緒が結婚するのは、この後の1962年で、この頃は、二人とも別に互いを意識していなかった時代かも知れない)

基本的には、小平太が濠外を牛耳っている黒幕を捜し出すストーリーで、謎解きとしてはどうという事もない平凡な展開なのだが、そこに、小平太のキャラクターの含め、コミカルな要素が加わっているために、肩の凝らない軽めの娯楽作品に仕上がっている。

堀外にある飲み屋は、中国人なども出入りしており、何やら無国籍キャバレー風。

濠外で出会い、喧嘩の末、小平太と兄弟付き合いが始まる、「野ざらしの権」という相撲取り風のヤクザも愛嬌があって笑わせる。

一方、小平太とは竹馬の友で、今は藩の大目付となっている堀郷之助(根上淳)と、同じく勝ち目付となっている安川雄之助(鶴見丈二)の友情が、物語の一つの核となっている。

そこにさらに、正義感から、だらしない小平太を抹殺しようとてぐすねひいている若侍たちが絡んで来る。

「帰ってきたウルトラマン」での伊吹隊長役でお馴染みの根上淳が、目貼りを入れた、これまた白塗り顔で二枚目風のキャラクターとして登場するのも興味深い。

確かに、この時代の根上淳は、彫りの深い紛れもない二枚目である。

後半、いなせな男装姿で登場するこせい(淡路恵子)が、あまり活躍しないのがちょっと残念。

全体的に、サービスのつもりなのだろうが、やや、通俗味が強すぎる恨みがないではない。