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吸血蛾

1956年、横溝正史原作、小国英雄+西島大脚本、中川信夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ファッションコンテストの最中、人気デザイナー浅茅文代(久慈あさみ)の弟子、村越徹(有島一郎)は、サングラスに覆面姿という怪し気な男から、先生に渡してくれと箱を渡される。

徹が相手の名前を尋ねると、その無気味な男は覆面を外し、狼のような牙が生えたその口を開けて見せるのであった。

その箱に入っていた一個の林檎には、牙で噛んだような痕が…。

それを観た浅茅は、急に気分が悪くなって、席を外してしまう。

やがて、パリから帰国したのだが浅茅に会いたいと連絡してきた男に、先生に替わって会いに出かけた弟子の滝田加代子(塩沢登代路=とき)が誘拐され、後日、マネキン人形の入った箱に積められた全裸死体として、浅茅の事務所に送り届けられる。

その胸には、無気味な蛾が置かれてあったので、新聞記者の川瀬(千秋実)と弟子の杉野弓子(安西郷子)は、高名な昆虫学者であり、何故か、浅茅のファッションショーにも頻繁に観に来ていた伊吹博士(東野英治郎)の屋敷を訪ねる事になる。

無数の蝶の収集が飾られている無気味なその屋敷の中には、さらなる女性の惨殺死体が横たわっていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

お馴染み、横溝正史原作の金田一ものの一本である。

本作での金田一役は二枚目、池部良。

コートや背広姿で、金田一というよりも、ハンフリー・ボガード演ずるハードボイルド探偵のようなイメージの主人公が狼男と対決するという、中川信夫監督のエログロ満載映画で、東宝というより、何だか新東宝みたいな雰囲気の映画である。

話は物凄くスローテンポで退屈なものなのだが、今の視点から観ると、出演者が当時の東宝らしく多彩。

冒頭、いきなり「初代八頭身美人で、戦後初のミス・ユニバース」伊東絹子が登場。

実は、この伊東絹子、「わたしの凡てを」(1954年、菊田一夫原作、市川崑監督)という東宝作品で、すでに女優として主演デビューしている。

そして、この「わたしの凡てを」で、伊東絹子の相手役をしていたのが池部良と上原謙。
その関係での、ゲスト出演だと思われる。

さらに、狼男の最初の犠牲者になる塩沢とき(当時、登代路)も、「わたしの凡てを」で、伊東絹子のモデル仲間としてすでに共演している。

ヒロイン役の安西郷子は、「宇宙大戦争」(1959)で池部と組んでいた日本人離れした美人。
カラー作品の時代になると、やや「濃い顔つき」の印象になるのだが、白黒時代の本作では、清楚で気品のある美貌を見せてくれる。

事件を追い掛ける新聞記者役が千秋実で、轟警部役は小堀明男。

無気味な昆虫学者を演ずる東野英治郎も、怪奇役者のようで印象的。

石坂浩二演ずる金田一のイメージに馴染んでいる目から見ると、この時代の金田一は、あまりにもイメージが違い過ぎて戸惑いを覚える向きもあるとは思うが、原作自体が、金田一ものとしては後期に当たり、かなりバタ臭いイメージに変ぼうしていただけに、あながち「歪められた映画化」とも言い切れない。

「狼憑き」という怪奇要素も、いかにも、 ディクスン・カーの影響を受けていた横溝らしいといえよう。

金田一が登場してからの後半部分は、怪奇映画風だった前半とは、がらりと趣が替わり、刑事ものみたいな雰囲気になるのが見物。

真犯人も意外である。


池部良/吸血蛾

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