TOP
映画評index
な
た
さ
か
あ
に
ち
し
き
い
ぬ
つ
す
く
う
ね
て
せ
け
え
の
と
そ
こ
お
わ
ら
や
ま
は
り
み
ひ
る
ゆ
む
ふ
れ
め
へ
ろ
よ
も
ほ
1930年代以前
1940年代
1950年代
1960年代
1970年代
1980年代
1990年代
2000年代
2010年代
ジャンル映画評
シリーズ作品
懐かしテレビ評
円谷英二関連作品
更新
本陣殺人事件
1975年、たかばやしよういちプロ+京都映像+ATG、横溝正史原作、高林陽一脚本+監督作品。
▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼
ピンク地に白い水玉模様の衣装を付けた可愛い人形をぶら下げ、とある村を訪れた金田一耕介(中尾彬)が、葬列に遭遇する所から物語は始まる。
亡くなった女性、一柳鈴子(高沢順子)は、金田一が、これから訪ねようとしていた人物であった。
金田一は、彼女の遺影を見ながら、一年前にこの地方の旧家、一柳の屋敷で、当主の婚礼の夜に起こった不思議な事件を回想して行く…。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
有名な横溝正史原作ミステリーの映画化作品である。
作品そのものは、時代を現代(70年代)に置き換えている他は、割と原作に忠実に作られ、出来もまずまず…だとは思うだが、何せ、低予算で作られていたATG作品であるだけに、華のあるスターが一人も出ておらず、基本的に動きのないセリフ中心のドラマである事も相まって『地味』そのものの印象がある。
角川が仕掛けた「横溝ブーム」到来の直前に作られた事もあって、その後作られたテレビ作品などよりも地味かも知れない。
一応、当時から有名だった役者といえば、一柳賢蔵を演じる田村高廣くらいだろうか?
「三本指の男」を演じる常田富士男はともかく、金田一を呼び寄せる久保銀蔵役の加賀邦男、久保克子役の水原ゆう紀、一柳三郎役の新田章…、重要な役所を演じる俳優達は、どれも「顔はどこかで観たような気はするけど、名前は出て来ない」…というような人ばかり。
主役の中尾彬や磯川警部を演じる東野孝彦(後の英心)にしても、当時は無名の新人に近く、ブーム当時、テレビなどでも何度か放映されたにもかかわらず、同時代の他の映画化作品に比べて、本作の印象が薄いのもやむを得ないかも知れない。
キラキラと輝く水しぶきを背景に物悲しい音楽(担当-大林宣彦)がかぶさるタイトルが、物語を暗示する。
少し知的ハンデのある少女、鈴子の純真さが、観ていて何とも物悲しい。
可愛がっていた猫のタマの死から、近親者達の死を経て、何ごとも悩みがなかったかのような無垢な彼女の心にも『死』という概念がぼんやりと形作られて行く。
探偵役の金田一には、事件そのものの真相よりも、そちらの悲劇性の方が痛ましかったはずだ。
彼女の純真さと、兄、賢蔵の潔癖性、その底辺はどこかで繋がっているのである。
その「血」の悲劇性が、観るものにも迫って来る。
良く、横溝ミステリーの本質を捕らえているといえよう。
何やら70年代フォークシンガーを連想させるような、カールがかったロン毛にジーンズ姿の中尾金田一は、後年の金田一を見慣れた目には異質に感じるかも知れないが、おかま帽らしきものもちゃんと被っているし、頭をかく癖も再現している。
着物に袴姿の金田一が登場するのは、石坂浩二以降である。
それまでの歴代金田一耕介は、皆、ダンディな背広姿であり、そういう意味では、中尾彬の金田一スタイルは、他に例のない、オリジナリティ溢れる独自のものと言えるかも知れない。
若々しく、まだ可愛かった頃の中尾彬の名探偵振りに、この作品で出会って欲しい。
【5000円以上で送料無料】【レンタル落ち中古DVD】本陣殺人事件/[中古DVD]
価格:4,800円(税込、送料別)