TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

果しなき欲望

1958年、日活、藤原審爾原作、鈴木敏郎脚本、今村昌平脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

とある地方の駅に降り立った男達が3人。
各々、目印の星印の記章を身に付けて、互いを確認しあう。

薬屋の中田(西村晃)、ラーメン屋の大沼(殿山泰司)、愚連隊の山本(加藤武)。

彼らは、戦時中に同じ連隊に所属しており、橋本中尉の元、秘かに大量のモルヒネをドラム缶に詰めて、陸軍病院側の防空ごうの中に隠匿していた仲間であった。
今、10年振りに、それを掘り出して、金に換えようと集まって来たのであった。

ところが、そこへ、もう一人、目印の記章を持って現れた男がいた。
教師をやっているという沢井(小沢昭一)である。
全員、彼に見覚えはなく、その正体を疑ったが、沢井は、間違いなく自分も当時の仲間であったと言い張る。

さらに、そこへ見なれぬ女性が近づいてきた。
彼らが待っている橋本中尉は昨年他界し、自分は妹の橋本志麻(渡辺美佐子)であるという。

人数が一人増えた事に、全員釈然としないながら、とにかく目的の防空ごう跡地へやって来ると、そこは新町商店街の中の肉屋になっていた。

その地下に埋まっているドラム缶を掘り出すために、彼らは近くの貸家を借り受け、そこから横穴を掘って、肉屋の地下へ近づこうと計画する。

ところが、その貸家の大家である大乃湯の主人(菅井一郎)は、不動産屋を始めたいからと交渉に出かけた大沼らに、高い敷金を吹っかけると同時に、職を失っている自分の息子、悟(長門裕之)をその不動産屋で雇う事を条件として提示する。

結局、不承不承に悟を引き受け、家を借り受けると、外回りと称して、悟を家に近付けないようにした後、他のメンバー達は、穴堀を開始するのであった。

一方、ドラム缶が埋められている金山肉店の娘、リュウ子(中原早苗)が好きでたまらない悟は、ようやく真っ当な仕事に付けたと、張り切るのだったが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

欲にまみれた人間達が集結し、互いの本能をむき出して奇妙な共同生活を送る数週間を描いている。

お宝を掘り出そうとするストーリー自体は、さほど珍しいものではないが、どこか冷徹な男を演じる西村晃、金にも女にも欲望をむき出しにする殿村泰司、そして、屈折した卑しさを演じる小沢昭一、さらに、どこか得体の知れない肝の座った女を演じる渡辺美佐子らのキャラクターが面白い。

さらに、強欲な大家を演じる菅井一郎、途中から何かと粘っこく5人の連中に付きまとって来る町内の滝爺を演じる高品格のキャラクターも面白い。

特に、高品格にとっては、本作は、後年の「麻雀放浪記」と並ぶ代表作ではないだろうか。

どろどろした犯罪劇の裏で、最後まで、ほとんど何も知らないで、恋人との関係修復に悩んでいる純な青年を演じる長門裕之の存在が、本編を重苦しさから救っている。

後半の展開も、なかなかサスペンスフルで、最後の最後まで緊張感が途切れる事はない。

見事なサスペンス映画の一本だと思う。