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ガキ帝国

1981年、プレイガイドジャーナル+ATG、西岡琢也脚本、井筒和幸監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

1967年、岡山の年少(少年院)に入っていたリュウ(島田紳助)が、旧友だったチャボ(松本竜介)とケン(趙方豪 )のいる大阪の町へ帰ってきた。

そのリュウが一緒に連れて帰ってきた高(升毅)は、その後、勢力を拡大していた北神同盟という不良グループに入会するが、その根性を、上部組織のヤクザの小野(上岡龍太郎)に認められて「あしたのジョー」と命名される。

一方、リュウ、チャボ、ケンの三人組は、毎日のように、キタやミナミの不良グループたちと喧嘩に明け暮れていた。

やがて、リュウとチャボはホープ会というグループを束ねてくれと依頼され、新しいグループ「ピース会」の会長、副会長として治まるが、ケンは、そんな二人の姿を冷ややかに見守っていた。
ホープ会の前の会長は、ケンの知り合いだったのだが、自ら作った改造拳銃を喧嘩相手に奪われ、それであっさり命を落としていたからであった。

そうこうする内に、リュウは、北神同盟のトップになり小野に命ぜられるまま女刈りをしていた高と一騎討ちする事になる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

60年代後半の大阪を舞台にした「青春グラフィティ」ともいうべき作品。

クールな「ストリートファイター」系というよりも、ヤンキー達の「ハチャメチャ振り」「ヤンチャ振り」を描いたコミカルな部分の方が目立つ。

しかし、その背景には、おそらく、今も昔も変わらない、地方の少年達の閉息感、虚無感という重いテーマが潜んでいる。
彼らにとって「明るい未来」なんて存在しないからである。

それは、本作に登場して来る在日の青年達の姿が、最も象徴的である。

彼らにとって、「コツコツ努力して出世する」なんて、ヤクザになるか、芸能人になるか、選択肢は極めて限られている。けんかをして「憂さを晴らす」しか、エネルギーのやり場がないのである。

しかし、こうした焦燥感は、大半の地方に住む日本人少年にとっても例外ではない。
努力をしようにも、チャンスの場さえない現実が目の前にあるからだ。

1000万円の低予算で作られたATG作品だけに、フイルムもなく、有名な俳優も使えず、ないないづくしの厳しい状況下で作られている。
だから、けんかも迫力不足、役者達の演技も下手そのもの、全体的に「安っぽい」印象があるのは否定できない。特に、主役を演じる紳助が、ユーモアセンスはともかく、とてもけんかが強そうには見えないのが辛い。

しかし、そこで、作者が描こう、これを描かなければダメだ…と、当時思いつめていた情熱のようなものは十分感じられる。

重いテーマを、シリアスに描くのではなく、ドタバタアクションとユーモアに交えて、浮き上がらせようとしている姿勢も正しいと思える。

おそらく、そこに描かれているのは、井筒監督自身が青春時代に、自らの目で見てきた原風景なのであろう。

だから、安っぽいなりに、話の骨格に、絵空事ではないリアリティが感じられるのである。

バックに流れているGSサウンド、特に、テンプターズのショーケン(萩原健一)が歌う「エメラルドの伝説」が懐かしい。

ポパイ、おそ松とちび太…などという不良達のあだ名も時代を感じさせ、愉快。

若かりし頃の大杉漣や北野誠、先頃亡くなった夢路いとし師匠なども登場している。