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悪魔の手毬唄

1977年、東宝映画、九里子亭脚本、市川崑監督作品。

「犬神家の一族」(1976)から始まった角川映画「金田一シリーズ」の第二弾で、シリーズ屈指の名作。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和27年、鬼首村(おにこうべむら)のブドウ畑の中でキスをしている青池歌名雄(北公二)と由良泰子(高橋洋子)のシーンから始まる。

そこへ、青年団の乗った車が通りかかり、村の出身ながら、今は人気歌手になって帰省して来る別所千恵(仁科明子)を迎えに行くと二人に告げる。

一方、歌名雄の実家である「亀の湯」という旅館に宿泊していた金田一耕介(石坂浩二)は、旧知の間柄で、今は閑職に廻されている岡山県警の磯川警部(若山富三郎)と再会し、この村で20年前に起こった殺人事件の再調査を依頼される。

金田一は、山を越えた総社という町に調査に出かけるのだが、夕暮れ時の仙人峠で、一人の腰の曲った老婆とすれ違う。

「おはんでござりやす、お庄屋さんの所へ戻ってめえりやした。なにぶん、可愛がっておくんなさい…」

しかし、総社の井筒屋の女将(山岡久乃)から話を聞いていた金田一は、おはんなる人物は、すでに亡くなっていたと知らされる。

やがて、泰子が、腰掛けの滝で惨殺死体となって発見される。

その口には、由良家とは宿敵の関係にある仁礼家の家紋の入った漏斗がくわえさせられており、枡からこぼれた滝の水が次々と流れ込んでいた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

海外のミステリーで有名な「マザーグース見立て連続殺人パターン」のアイデアを、日本流にアレンジした原作を、豪華な配役陣と美しい風景描写で、旅情豊かにまとめあげた堂々たる作品になっている。

頑固一徹な仁礼嘉平を演ずるは辰巳柳太郎、その妹で文子の母親である咲枝に白石加代子、由良泰子の母親が草笛光子、別所千恵の母親、春江を演ずるは渡辺美佐子である。

そして、泰子、文子、千恵の同級生で、生まれつき、身体半分に赤痣がある不幸な少女、里子(永島暎子)と歌名雄の母親が青池リカ(岸恵子)。

加藤武、三木のり平、小林昭二、大滝秀治、常田富士男など常連組はもちろんの事、村の巡査に岡本信人、青年団の仲間として大和田獏や、ライオン丸こと潮哲也なども登場している。

見立て殺人の手がかりになる「手毬唄」を金田一らに教えるのが、88才という設定の由良五百子(原ひさ子)、彼女のキャラクターも愛らしいが、いつも、事件の後でしか、肝心の歌詞の部分を思い出さないという辺りが御愛嬌。

本編の見所の一つは、活弁なる職業を説明するシーンで、大河内伝次郎の戦前の「丹下左膳」や、マレーネ・ディートリッヒの「モロッコ」などのフイルムが挿入されている所であろう。

金田一を演じる石坂浩二も若々しいし(この頃まで、あのボサボサ頭は自毛だったはず)、若山富三郎の渋い演技も見ごたえがある。

ブドウ酒樽の中に浸っている文子の死体と、その上に下げられている小判飾りのきらめき。
葬式の夜、千恵が見る、蔵の壁に大きく映った無気味な老婆の影。
千恵が手毬唄を回想する時に映し出される、手毬をつく人形達のイメージ(仮面を被った少女が演じている)。
多々良法庵(中村伸郎)の家の瓶に泳いでいる「山椒魚」など、怪奇趣味、けれん味も申し分ない。

怖くて、美しくて、ドキドキして、しかも楽しい…。
老若男女の区別なく愛されてやまない、まさに「大衆娯楽」の見本のような作品である。