1961年、東宝、獅子文六「七時間半」原作、笠原良三脚本、川島雄三監督作品。
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簡略化された操車場みたいな線路の絵の上を、「にっぽん特急」という文字が走り、「にっぽん」から離れた「特急」の文字が路線変更して、「にっぽん」という文字の先頭になり連結するという、洒落たタイトルがまずお洒落!
特急「こだま」の車内食堂勤務のコック、矢板喜一(フランキー堺)は、同じ大阪出身で親しい車内ウエイトレスリーダー(劇中では、「会計さん」という風に呼ばれている)の藤倉サヨ子(団令子)から、近い内結婚して、サヨ子の父親の意思を継いだ弁当を出す食堂を開こうと誘われていた。
そんな二人を乗せた12時30分発の大阪行きが東京駅を出発する。
矢板は、車内スチュワーデスの今出川有女子(白川由美)から、近々彼女が赤坂に開く予定のレストランで働いてくれないかという誘いを受ける。
特権意識のあるスチュワーデスという立場にあるというだけではなく、華族出身という事もあって、いつもお高くとまっている有女子(うめこ)は、他の女性乗務員達から嫌われていた。
もちろん、サヨ子も彼女の事を日頃から嫌っていたのである。
有女子のパトロンになると約束していたのは、その車内に乗り合わせていた、さくらガムの社長、岸和田太一(小沢栄太郎)であった。
そんな彼の隣の席に、熱海から乗り込んで座ったのは、チャイナドレス姿も色っぽい伊東ヤエ子(中島そのみ)。
たちまち彼女のお色気に夢中になった岸和田は、車内にもかかわらずベタベタしはじめる。
一方、その車内には、サヨ子を以前から気に入っており、車内見合いさせようと企てた母親(沢村貞子)が、女性に全く興味がなさそうな息子(滝田祐介)同伴で乗り込んできており、たえず、タエ子の仕事振りを観察している始末。
そんな中、食堂車で泥酔し、1号車に乗った政治家を声高に批判していた怪し気な男が下車した後、車内に置き忘れたふろしき包みに爆弾が入っているという噂が流れる。
そのため、政治家の護衛のため乗り込んでいた、鉄道公安官の青木(堺左千夫)と車掌の影山(石田茂樹)は、手分けして車内中を捜しまわるはめに。
やがて、車内はパニックに近い状況に陥るが…。
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走る列車内を舞台にしたコメディ作品。
当時の国鉄も全面協力しているのではないかと思われるほど、駅や列車内の様子がきめ細かく描かれている。
今観ると、驚く事ばかりである。
まず、東京、大阪間に、特急でも6時間半もかかっていた事。(原作のタイトルは「7時間半」だが、劇中では、12事半東京発、19時大阪着で所要時間は6時間半といっている)
それでも、「最近は早すぎて、景色も見れない」などというセリフがある。
列車に、スチュワーデスなる立場の女性達が乗っていた事。(制服もスチュワーデス風)
東京駅に列車が入る時、食堂のウエイトレス達が整列して、窓からプラットフォームの客に対してにこやかに挨拶していた事。
スチュワーデスが、途中で、通路に掃除機をかけはじめる事。
複雑な人間関係が織り込まれてはいるが、基本になるのは、サヨ子と有女子と矢板の三角関係である。
さらに、有女子と彼女の恋人で僧侶の佐川(太刀川寛)と岸和田との三角関係も絡んで来たりする。
チーフコックに森川信、スチュワーデス仲間に横山道代、ウエイトレスの一人に中真千子、岸和田の女房に塩沢とき、ギャングスタイルの怪し気な乗客に谷村昌彦などが顔を見せている。
ラスト、窓の外から車内の様子をキャメラが追う形で、無声コントのように、中の人物たちの心理変化を見せてしまう辺りの処理には感心させられる。
喜劇として成功しているかどうかは、やや疑問もあるが、色々要素は豊富で、観て損はない作品ではある。
