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縞の背広の親分衆

1961年、東京映画、八住利雄原作、柳沢類寿脚本、川島雄三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

港に、南米から帰って来たらしきサングラス姿の男が降り立つ。
彼は、森の石松の血を引く守野圭助(森繁久彌)といい、大島組のヤクザだったのだが、おいちょの曾太郎というヤクザを殺めてしまった(と思い込んでいる)ため、15年も逃亡の旅を続けていたのだが、帰国して組に戻ってみると、親分の瀧五郎はすでに他界し、女房のしま(淡島千景)だけが細々と組を仕切っている状態である事を知り、愕然とする。

瀧五郎の長男はかたぎで建設会社に就職しており、自動車道路建設のために、組が守り本尊としてきた「お狸様」を取り壊すといっている。
その道路建設の裏では、ライバルの風月組を取り仕切る風月三治(有島一郎)と、建設公団の尾形曾太郎副総裁(沢村いき雄)、政治家の胴脇(渥美清)などが結託して暗躍していた。

一方、瀧五郎の長女の万里子(団令子)は、しまと折り合いが悪いため、家を出て、一人「フローリストマリー」という花屋を開業していた。

そんな万里子の事が気にかかっているのが、同じ大島組の組員で天向院という寺の後継ぎでもあるスモーキー・ジョー(フランキー堺)。

彼は、万里子が、風月の息子で、チェリー組という不良グループを作っているしげる(ジェリー藤尾)の店にも出入りしているので、気が気ではないのであった。

組の再建のため、早速、久々に賭場を開帳した圭助は、すぐに警察の手入れが入ってしまい、そのまま、留置場へ。
そんな彼を引取ってくれたのは、昔関係があった象屋デパート副社長、花子であった。
圭助は、花子にいわれるまま、デパートのクレーム係として働きはじめるのだったが、どこへいっても、昔付き合っていた女に出会ってしまい、てんやわんやの大騒ぎ。

ジョーの方は、万里子から押し付けられた三人のヤクザ志願の若者相手に、毎日トレーニングという有り様。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

大島組の一員でありながら、今は弁当屋「弁林」という店で、おりん(藤間紫)にこき使われている弁太に桂小金治、風月組の用心棒的存在、ルテナンの銀に西村晃、ジョーの母親に千石規子、しげるの知り合いのストリッパー役に春川ますみ、象屋デパートの社長に松村達雄など脇役陣も充実している。

万里子の子分格として、始終「デュワ、デュワ、デュワ、デュワ」とスキャットしているだけのヤンキー風の三人娘が登場しているのだが、調べてみると、この三人組、スリーバブルスというのだが、何と、60年代に人形アニメで有名だった、ミツワ石鹸の「ワ、ワ、ワ〜、輪が三つ…」というあのCFソングを歌っていたグループらしい。

いくつかのエピソードが錯綜しながら進行し、アイデアもあれこれ詰め込まれてはいるのだが、森繁やフランキーのドタバタもやや単調で、全体的に、どこか散漫な印象の作品に仕上がっている。

悪徳そうな政治家を演じている渥美清など、ちょっと観は誰なのか気付かない程、没個性で印象の薄い存在になっているのが、今観ると、逆に意外な感じさえする。

実はこの企画、「グラマ島の誘惑」(1959)や「貸間あり」(1959)などで、川島監督とも縁が深かったプロデューサーの滝村和男氏が亡くなったため、その追悼の意味を込めて作られたものだったらしい。

劇中、縞の背広姿で遺影に映っている大島瀧五郎親分とは、実はこの滝村プロデューサーなのである。

自動車道路建設という近代化の波に対して、衰退して行く古いタイプのヤクザ達と、逆にそれを利用して拡大しようとする新興ヤクザの対比が、興味深い所である。