1953年、東宝、藤木弓脚本、稲垣浩監督作品。
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祭礼が行われる大浜という港町に、芸人、商売人達を乗せた舟が近づく。
その船上で知り合ったのが、三味線弾きのお梶(高峰三枝子)と半次郎(長谷川一夫)であった。
半次郎は、客に竹刀で自分の頭を叩かせる「かんしゃく玉」という芸で初参加の様子。
男っぷりが良く、さっぱりした気性の半次郎に惚れ込んだのは、お梶だけではなかった。
軽業芸人のおのぶ(北川町子)も、お梶にライバル心をつのらせる。
手品使いの寅右エ門(上田吉二郎)も又、ちょっとしたいざこざがきっかけで、彼の人柄を大いに気に入ってしまう。
一方、地元の役人も抱き込み、大浜を好きなように仕切っていたのは、やくざの勝蔵(富田仲次郎)だった。
彼は、お梶を一目見た時から悪心を起こし、何とか彼女をものにしようと、その父親である吹き矢の徳兵衛(山田巳之助)も絡めて、面倒を見てやると執拗に迫りはじめる。
そんな勝蔵の元を訪れた一人の浪人者がいた。
何でも、勝蔵の身替わりになって投獄されていたらしい。
露骨に迷惑がる勝蔵一家。
実は、隻眼のその浪人こそ、かつて武士だった半次郎が、試合で目を傷つけてしまった相手の山根伊太八(三國連太郎)その人であった。
半次郎は、その事があって以来、武士の身分を捨ててしまっていたのである。
やがて、どうしても自分になびかない徳兵衛が、勝蔵の手によって斬り殺される事件が発生。
その現場を目撃していたおのぶは、子分の東吉(佐々木孝丸)に捕まり、山根伊太八が下手人であると嘘の証言をいわされるはめになる…。
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典型的な通俗時代劇である。
全体としては、地方のお祭りという賑やかな背景の中で巻き起こる、ちょっとした騒動…といった感じであろうか。
斬ったはったの派手なチャンバラではなく、人情劇に近い。
男前が良く、腕っぷしも強く、男女を問わず人気がある主人公…、まさしく、長谷川一夫を引き立てるために用意されたお話というしかない。
最初は無精髭姿で登場させ、途中でその鬚を剃らせて、すっきりした長谷川一夫の美貌を披露させる趣向なども、陳腐とはいえ、御愛嬌と解釈すべきだろう。
ただし、肝心の長谷川一夫、もうこの頃は、かなり太っていて、顔もまん丸に近い。
むしろ、眼光鋭く痩身の三國連太郎の方がはるかに魅力的である。
その伊太八の面倒を見るのが、おすみ(中北千枝子)。
おのぶがいる軽業一家を仕切る、口の悪いおたきを演ずるのが三好栄子、独特のキャラクターで存在感を見せる。
武士としてではなく、すっかり芸人になりきり、仲間達と解け合って騒ぎを解決する半次郎の姿がすがすがしい。
