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鞍馬天狗 御用盗異変

1956年、宝塚映画、大仏次郎原作、鏡二郎脚本、並木鏡太郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

慶応3年、15代慶喜が大政を奉還した時代、江戸の町では、幕府のかく乱を狙う薩摩の侍達による「御用盗」と名乗る強盗団が横行していた。

その一団に真っ向から立ち向ったのは、われらが鞍馬天狗こと倉田天膳(嵐寛寿郎)であった。
彼は直接、薩摩藩の江戸屋敷に乗り込み、益満休之助(佐々木孝丸)に、このような卑劣な行為は止めるよう説得するのであったが、血気盛んな薩摩の侍達は、そんな鞍馬天狗の言葉に耳を貸そうとしなかった。

後日、薩摩の侍の一人、天草なる男が、天狗の面を被った状態で、一人旅籠で死んでいるのが見つかる。
死体には、何ら傷跡もなく、毒を飲まされたような形跡もなかった。
役人に先駆け、その部屋を調べた鞍馬天狗は、部屋に飾られていた花が枯れているのに気付く。
さらに、花瓶の後ろに置いてあった香炉に不審な燃えかすを発見、それを持ち出して外で調べようとしていた所を、何者かに銃撃される。

一方、天狗のおじちゃんを追って、一人京都から江戸へやって来る途中、道に迷って野宿をしていた杉作(松島トモ子)は、その銃声を天狗のおじちゃんの拳銃ではないかと思い、付近を探すが、見つけたのは頭巾で顔を隠した若い娘、お滝(扇千景)であった。

彼女に連れられて、とある農家に着いた杉作は、そこで、何者かに薬を盗まれたと騒いでいる狂的な青年科学者、入江定信(平田昭彦)に出会う。彼は西海屋という人物から援助を受けており、不思議な白い粉末の薬を発明したらしかった。

その西海屋は、松平主税之介(山形勲)に、薩摩藩を倒すための武器弾薬を売り付けていたのであった。

やがて、鞍馬天狗を慕って、彼が江戸で身を隠している黒姫の吉兵衛(上田寛)の菓子屋を訪ねてきた薩摩藩士、来島(沖諒太郎)までもが、天狗の面を付けられた状態で死んでいるのが発見される。

前回同様、部屋に置かれた香炉から、不思議な燃えかすを発見した鞍馬天狗は、杉作の言葉から、不思議な薬の発明者、入江の存在を知る事になる。

一方、松平主税之介もまた、その薬を狙って、入江の身を捕らえようとしていたのであった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

戦前から数多く作られた、時代劇ヒーロー鞍馬天狗のお話であるが、アラカンこと嵐寛寿郎演ずる鞍馬天狗ものとしてはもっとも後期の作品であり、彼は、この直後に作られた「疾風!鞍馬天狗」(1956)を最後にこの当たり役からは卒業する。

本作を観る限り、かなり子供を意識して作られているように感じる。
後にライオンに噛まれる松島トモ子が、何とも、愛らしい男の子役を演じているだけでなく、江戸の町で、親や家を失った子供達と知り合い、彼らと共に、クライマックスで活躍する見所も用意されている。

さらに注目すべきは、平田昭彦演ずるエキセントリックな科学者役であろう。
もちろん「ゴジラ」(1954)での芹沢博士を連想させる役所である。

薬の正体は他愛無いものだが、ちょっと「怪奇大作戦」を連想させるような合成特撮シーンもある。

嵐寛寿郎自身は、さすがにもう体力に任せたような大立ち回りこそできないながら、風格漂う端正な立ち回りを披露してくれる。

薩摩藩士達と鞍馬天狗との関係など、本編だけを観ているとやや釈然としない不明瞭な点もあるが、ストーリーはともかくも、颯爽と馬に跨がり駆け参じる鞍馬天狗の勇姿には胸踊るものがある。

劇中、まだ少女の面影が残る20前後くらいの扇千景が、杉作こと松島トモ子から「おばちゃん」と呼ばれているのには、ちょっとびっくり。

確かに、この当時、トモ子ちゃんの方は、まだ5、6才くらいなので、仕方ないのだろうが…。