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海賊八幡船

1960年、東映京都、村上元三原作、鷹沢和善脚本、沢島忠監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

戦国乱世の頃、八幡船(ばはんせん)と呼ばれる船に乗って、瀬戸内海を中心に活躍していた村上水軍は、遠く、明、ルソン、シャムなどへも飛躍していた。

永禄4年、泉州堺の港に、船乗りたちに漂流している所を救われたという、一人の老いた狂人が現れる。
彼はしきりに「盲船」という謎の言葉を呟いていた。

その言葉を伝え聞き、何故か慌てふためき、境から逃亡しようとするのが、富裕な商人、壷屋道休(大河内伝次郎)であった。
彼は、配下の陣内(楠本健二)に命じ、その老狂人を秘密裏に暗殺しようと謀るのだが、その現場を、郭通いの放蕩息子、鹿門(大川橋蔵)に見られてしまう。

やがて、その狂人と思われた白髪の老人が、船乗りたちと共に、道休の元に姿を現す。
老人は黒白斎(こくびゃくさい-新藤英太郎)と名乗り、かつて、村上水軍の盲船に乗っていた、頭領の磯野丹後守(北龍二)夫婦を殺害し、財宝と共に道休が奪って逃げた右衛門太夫の遺児、鹿門を貰い受けに来たという。
船乗り達は全て、村上水軍の者たちだったのだ。

道休は、あの事件の首謀者で、盲船を奪って行ったのは磯野右衛門太夫(阿部九洲男)という人物であり、自分は、赤ん坊だった鹿門可愛さに救い出しただけなのだと弁解する。

そこへ、駆け付けてきたのが、鹿門。

彼は、黒白斎の言葉を信じようとはせず、ひたすら父親、道休をかばおうとするが、その時、港で、船に火が放たれる騒ぎが勃発。
たまたま、係留中で、博多へ出航直前だった淡路丸に乗り込んでいた鹿門の妹、小静(桜町弘子)を心配して駆け付けた道休は、何者かが放った矢を受け絶命、鹿門も又、村上水軍の者たちに拉致され、村上新蔵人(しんくらんど-岡田英二)率いる青影丸という船で、彼らの根城である瀬戸内海の因島に連れて行かれるのだった。

島で、水軍の頭領である村上入道(月形龍之介)に出会い、すでに、鹿門に二代目頭領になってもらうため、新たな盲船を作って待っていたという言葉を聞いても、彼らを海賊だと思い込んでいる鹿門には通じなかった。

その後、島から一人で逃げ出そうと、小舟を漕ぎ出した鹿門は、夜の闇の中に漂流中の淡路丸を発見。無惨にも、帆に吊るされた乗組員たちの屍骸に驚くも、そこに小静の姿はなかった。

彼を追って、淡路丸に乗り込んできた黒白斎から、これこそ、明の海賊船の仕業であり、乗っていた小静たちは、奴隷に売る目的で連れて行かれたのだろうと聞かされた鹿門は、自ら盲船に乗り込み、妹を救い出す事を決意するのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

昭和35年度の芸術祭参加作品であり、莫大な予算を投入して作られたと思われる海洋スペクタクルロマンである。

敵役、右衛門太夫が奪った初代盲船、鹿門が乗り込んだ二代目盲丸、それを護衛する青影丸と住友丸、計4隻の海賊船は、実際に海を航行する実物大の船として作られている。

境の港や因島の水軍の村などは、広大なセットが作られており、そこに数百人のエキストラが参加している。

海戦シーンなどでは、かなり大きめのスケールのミニチュアによる特撮も使われているが、実物大の大砲発射や水煙なども使っており、両者の判別は難しいくらい巧みに出来ている。

水軍の火薬係である河童の伝馬(田中春男)、青影丸に乗る新蔵人の妹、寿賀(すが-丘さとみ)、琉球出身で、新蔵人に思いを寄せる謝花(しゃはな-気賀沢光子)はじめ、キャラクター的にも豊富な人物が続々と登場、物語に厚みを加えている。

ややオーバー目な演技が時代を感じさせはするが、若く凛々しい橋蔵の勇姿がすがすがしい。

ストーリーも、後半は南洋の海を舞台に、奇想天外な面白さが用意されており、かつては、日本でもこれ程の大作が作られていたのだと、驚嘆に値する娯楽映画である。