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牛乳屋フランキー

1956年、日活、キノトオル+小野田勇原作、柳沢類寿+西河克己+中平康脚本、中平康監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

長州追分から一人の若者が大勢の見送りを受けて東京に旅立とうとしていた。
世間知らずの堺六平太(フランキー堺)であった。
彼は、祖父の堺小五郎(フランキー堺-二役)の命を受け、親戚筋に当たる東京の杉牛乳店を監督するため、上京するのであった。

しかし、東京で彼を出迎えたのは一人の少年。
何でも、六平太の叔父に当たるという杉牛乳店の一人息子、健一(毛利充宏)であった。

実は、杉牛乳店は存亡の危機に立たされていた。

主人に先立たれて、店を一人で切り回していた奥さん(坪内美詠子)は、二階に下宿させている八ツ橋大学在住の青年作家、石山金太郎(市村俊幸)から借りた20万円のお金が返せず、今やその利子が膨らみ、50万円という絶望的な金額にまでになっていたのである。

さらに、ライバル店のブルドック牛乳店に顧客ばかりか従業員まで奪われていた。

田舎者丸出しで、見るもの聞くもの驚きの連続だった六平太は、それでも何とか、翌朝から、先輩の新吾(小沢昭一)と一緒に牛乳配達で頑張ろうと決意して床に付くが、朝起きてみると、その新吾まで逃げ出していた後だった。

ともかく、奥さんと手分けして牛乳を配達せねば…とばかり、六平太は一人で不馴れな配達を始めるのだったが、配達先にはおかしな人ばかりが待ち受けていた。

バラックのような家に住む、汚れた姿のおじさん(小野田勇)だったり、酔っぱらって、交番のやっかいになっていた朝帰りの御主人(キノトオル)を、女医の奥さん(ドクトル・チエコ)の待つ自宅に送り届けたり、背広姿で男だか女だか分からないターキーという人(水の江滝子)だったり、頓活映画の若き助監督(宍戸錠)から、近所に住む西郷隆盛そっくりの南郷隆盛(沢村国太郎)の娘、英子(南寿美子)へのラブレターの配達を依頼されたり、入浴中で手が離せないので、台所で牛乳を暖めてくれと図々しく頼む女性マサヨ(利根はる恵)だったり…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

全編、おふざけ精神とシャレで作られたような、明るく楽しいコメディ作品である。

何といっても注目すべきは、「太陽の季節」(1956)や「狂った果実」(1956)などで、当時の日活を再生させた新人人気作家の石原慎太郎を、徹底的にカリカチュアライズして、からかっている点であろう。

ブーチャン(市村俊幸の愛称)が学生服姿でバイクを転がしていたり、「金太郎カット」なる髪型を披露したり(もちろん、これは「慎太郎カット」のシャレ)、葉山のヨットハーバーで、年上の女性にモテまくるといった妄想を抱いたり…。
部屋の障子をパンチでぶち抜くシーンなどは、「太陽の季節」での有名なあの描写のパロディである。

さらに、「日活」を「頓活」とシャレて、自虐(?)ギャグまで登場させているのも凄い。

フランキーらが招待される森永(タイアップ企業)牧場で、何と、頓活映画のロケ隊が、騎兵隊とインディアンの戦いを撮っているのである。(後の日活無国籍アクションを暗示しているのか?)
その映画で主役を演じている大スターらしき丹下キヨ子(実名で登場)が、助監督の松原善吉(宍戸錠)に、ぞっこん惚れていたり、監督(市村俊幸-二役)が「巨匠」と書かれたディレクターズチェアーに座っているのもおかしい。

確かに、この頃の錠さんは、ほっぺたの手術前で、すばらしく細身で長身の美形なのだ。
ファンファン(岡田真澄)や西村晃も登場。

二役をこなしているフランキーは若々しく、目一杯、身体を使った笑いに挑戦している。
ライバル店に勤め始めた小沢昭一との自転車レースなどのシーンも、スピード感があってなかなか楽しい。
上京してした際の格好は、まるで「いなかっぺ大将」そのもの。

フランキー堺は、この翌年「フランキーの宇宙人」という作品で一人五役に挑戦したり、ブーチャンとコンビでコメディ映画を何本か撮った後、東宝へ移籍する事になる。