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御用金

1969年、フジテレビ+東京映画、五社英雄+田坂啓脚本、五社英雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

17〜19世紀の後半まで、幕府の財政を支えていたのは、天領佐渡から産出される金であった。

その金隗は北前船に積まれて江戸に運ばれていたのだが、中には遭難する船もあった。

天保2年、北国、鯖井藩(越前鯖江藩がモデルか?)の黒沢村で、漁民全てが消失するという神隠しが発生する。
それを発見したのは、5年の年期奉公から解放され、許嫁と結婚するために帰郷したおりは(浅丘ルリ子)であった。

3年後の天保5年、江戸。
鯖井藩からから脱藩して浪人となっていた脇坂孫兵衛(仲代達矢)は、長井兵助(田中邦衛)と組み、居合いの見せ物などで糊口をしのいでいた。
その孫兵衛の前に現れたのが、藩から差し向けられた刺客(西村晃)達。

3年前の神隠し事件と、また同じ事が近々鯖井藩で起こると知った孫兵衛は、一人、鯖井藩に向う。

その孫兵衛を、何とか途中で抹殺しようと企てていたのは、孫兵衛の妻、しの(司葉子)の兄で、鯖井藩家老、六郷帯刀(丹波哲郎)と、その家臣、高力九内(夏八木勲)であった。

一方、同じく、鯖井藩に向うもう一人の浪人者がいた。
藤巻左門(中村錦之助)という謎の人物である。

孫兵衛は、鯖井藩近くで地元のヤクザに追われている男女と遭遇する。

その女こそ、黒沢村唯一の生き残り、おりはであった。

今は、「神隠しのおりは」と名乗り、子分の六造(樋浦勉)と共に、いかさま壷振り師として身を持ち崩していたのであった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

フジテレビの劇場用第一作であり、パナビジョンを採用した最初の作品でもある。

もともとこの企画、仲代と三船敏郎の共演作として撮り始めたらしいが、途中、酒の席で仲代と三船が衝突し、三船は降番、急遽、中村錦之助が代役として、三船の部分は全て撮り直されたという経緯があったらしい。

パナビジョンの画像は、非常にシャープで、画面の隅々までクリアに映っている。
画面構成も、一画面ごとに工夫が凝らされており、ロケ地となった下北半島の壮絶な冬景色の美しさとも相まって、美術的にも見ごたえがある。

着想の面白さ、途中に用意されたいくつかの見せ場など、部分部分の見所はあるのだが、全体としては、今一つダイナミズム不足というか、盛り上がり切れず、やや食い足らなさが残るのも確か。

物足らなさの一つは、中村錦之助演ずる左門の存在感がちょっと弱い事にある。

基本的には仲代が主演で、錦之助演ずる役の方はゲスト扱いのようなものだろうが、もともと三船を想定して作られていた役だけに、錦之助のヘラヘラした軽い演技ではちょっと迫力不足。

生真面目一直線みたいな仲代のキャラクターと、好対照になっているとも言えなくはないのだが…。

後半、雪原での決闘シーンは見ごたえがある。

とにかく、この作品における風景の美しさは特筆ものだと思う。