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新しき土

1937年、日独合作映画、アーノルド・ファンク監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

この作品には、ドイツ版と日英版の2種類があるらしいが、私が観たのはドイツ版の方ではないかと思われる。

宇宙から観たような模型の日本地図が映し出される。(「日本沈没」風)
溶岩を噴き上げる火山と海の実写映像。

富士の裾野にある貧しい農家に電報が舞い込む。

8年前にドイツに渡った、長男の山田輝雄が帰国するという知らせであった。

喜ぶ老夫婦と幼い妹。 しかし、その直後、地震が起こる。
紡績工場に勤める上の妹も連絡を受け、嬉し顔。

一方、船上の輝雄とドイツ人女性ゲルダ・ストームが、日本の話をしている。
日本は、火山や地震、台風などといった天災が多い国であるだけではなく、人口も多く貧しい。
何とか、満州に新しい国家を建設せねばならぬと輝雄は理想を抱いていた。
さらに彼は、自分が富裕な旧家の養子になっており、そこの娘の光子(原節子)と結婚の約束をしているのだが、欧州で個人の自由という概念を学んだ今は、考えがすっかり変わってしまったと打ち明ける。

宮島らしき場所で、鹿に餌を与えていた光子は、下女から輝雄帰国の知らせを受け、狂喜乱舞する。
ドイツ人家庭教師のアドバイスにより、洋装に着替えた後、輝雄が宿泊する予定の横浜へ、父親(早川雪舟)と共に列車で向う光子。

彼女は、寝台車の寝床の中で、これまで8年間、花嫁修行の数々をこなしてきた過去を思い出していた。

輝雄とゲルダは、ネオン瞬く都会の姿に驚きながらも、横浜に到着し、ホテルで義父と再会をはたす。
一方、光子は、輝雄が同伴しているドイツ人美女の姿に、いい知れぬ不安感を抱く事になる。

はたして、輝雄は義父に、光子との結婚に気乗りしないと言い出す。

さらに、輝雄は、わざわざ田舎からホテルに訪ねてきた実父と妹に対しても冷たい態度を取り帰した後、キャバレーで酒に溺れるのであった。

西洋風の合理的な考え方と、日本に帰国して再認識した、母国の美しさへの思い入れの狭間に立って苦しむ輝雄。

やがて、昔の恩師でもある寺の住職を訪れ、その助言を受けた輝雄は、自らの迷いを吹っ切るのだった。

大和家との養子縁組の解消を願い出た輝雄は、さっそく実家へ戻り父母と再会すると、自ら、田んぼの中で泥まみれになって働き始めるのだった。

そんな、輝雄の元に、大和家から、もう一度、縁組み解消に付いて、親戚一同を交えて話し合って欲しいとの連絡がある。

しばらく、大和家にとう留していたゲルダだったが、結婚を解消され、落ち込む光子の気持ちを察してあげて欲しいと書き記した手紙を輝雄に託し、自らは帰国の途に付く事になる。

自動車で大和家に到着した輝雄は、光子の姿が見えぬのに気付く。
乳母(英百合子)がいうには、婚礼の衣装もなくなっているという。
ゲルダからの手紙の内容と重ね合わせた輝雄は、光子が火山に身を投じに出かけたのだと悟る。

噴煙上がる火山に着物姿で登る光子。
その後を追う輝雄。

はたして、二人の運命は…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

この作品に登場する日本という国は、たえず火山の噴火や地震が頻発している、どこかの未知の惑星のような印象である。
さらに、桜、フジヤマ、奈良の大仏、五重塔…、まるで日本の観光絵葉書のような映像があったかと思えば、
現在の香港かと見紛うばかりのネオン街の描写や、近代建築などの描写も丁寧に重ね合されており、今の日本人が観ても、正体不明の謎の国としか映らない珍妙な映像になっている。

花嫁修行の回想シーンで、なぎなたをしているはずの原節子が剣道の面を付けていたり、ホテルの中で虚無僧が尺八を吹いていたり、キャバレーの中で、三味線を弾く着物姿の流し(?)がいたり、おかしな描写が満載。

日本庭園を走っていて躓いて倒れる原節子の姿とか、笑顔の輝雄の顔のアップに蠅が留まっていたり、どう観てもNGシーンなのでは?…と思えるようなカットも平気で使っているのは、細かい事に頓着しないドイツ人気質のなせる技か?

噴煙舞い上がる、本当の火山らしき場所に一人登る原節子の姿は、何ともいい知れぬ衝撃感がある。
本格的な山岳映像なのである。

しかも、クライマックスには「ダンテス・ピーク」のように、火山噴火で壊れる日本家屋のミニチュア特撮映像まである…。

外国人の目から見た「不思議の国ニッポン」、まさしくそのトンデモ感覚が、今、別な意味で興味深く観る事ができる。

10代の原節子はとにかく愛らしい。