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天晴れ一心太助

1945年、東宝、黒澤明脚本、佐伯清監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

一心太助(榎本健一)が長家を借りたいと大家(柳田貞一)に掛け合おうとするが、当の大家は、あの長家は突き当たりに化物屋敷があるだの、大きな銀杏の木が日照を完全にふさいでいるため、暗闇横町と呼ばれているし、長家は湿気が多く、「なめくじ長家」と呼ばれているなどといって、なかなか貸そうとしない。

どうやら、太助の風体を見て、店受け(保証人)がなさそうなので足元を見られているのだ。
頭に来た太助は駿河台の親分、大久保彦左衛門(徳川夢声)の名前を出すが、まだ大家は信じない。
とうとう、彦左衛門直々のお出ましとなり、大家はようやく仰天して、家を貸す事に相成る。

しかし、太助と一緒に荷物を運んできた女房のおなか(轟夕起子)は、新しい住居の環境の悪さに驚く。

何しろその場所は、太助が偶然道で出会った易者に、戊亥の方角にこれこれの様子の家があるから、そこを借り、商売を始めれば成功するといわれたのを真に受けて選んだものだったからだ。

いわれた通りの物件があったのだから、占いは当たるに違いないと張り切る太助。

さっそく、二人は引っ越し蕎麦を配りながら、長家の住人達を知る事になる。

仕立ての商売をしている老婆と、その息子で、勝った事が一度もない関取、大江山三吉(岸井明)、按摩の四方市、文句ばかりいっている夜泣き蕎麦屋の土左衛門(渡辺篤)、床屋の金太(如月寛多)、人形作りの内職をしている貧乏浪人とその娘の小夜、おしゃべり大工の三五郎(坊屋三郎)、そして、あの易者、千里軒(高勢実)…、そう、あの占いはインチキだったのである。

やがて、長家の奥にある化物屋敷なる家には、有馬陣十郎という侍を始め、不良浪人達が何人も住み着いており、長家の住民達を何かにつけては困らせていた事実が分かって来る。
しかし、意気地のない人間ばかりが揃っている長家の住人達は、誰一人、それに逆らう事ができないでいたのである。

太助も、売り物の魚を持って行かれたまま一銭も払ってもらえない。
日頃のだらしなさをおなかに説教をされた太助は、勇気を奮い起こして一人で屋敷に乗り込んで行くが、何度も放り出される始末。
しかし、何度、放り出されても舞い戻って来る太助の姿に感動した長家の住人達は、一人、また一人と太助の仲間になり、一緒に屋敷に掛け合いに入り込むようになる。

そうした中、長家の連中は、仕官の道への手助けをしてやると騙された貧乏浪人が、娘の小夜を女中奉公として、化物屋敷に差し出す話を聞く。

実は、小夜と関取の三吉は思いを寄せあう仲だったが、意気地なしの三吉にはどうする事もできない。

堪忍袋の緒が切れた太助達は、覚悟をきめて、一斉に屋敷に、小夜を連れ戻しに出かけるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

基本的にはドタバタコメディなのだが、戦前の一連のエノケン映画とは少し趣が違っており、多くの人たちが力を合わせさえすれば、困難と思われる目標も達成できるのだとか、人に頼らず運命は自分で切り開け…などというメッセージ性が色濃く反映されている。

「一番美しく」(1944)同様、戦時中だったため、国威高揚の意味合いも含まれるのだろうが、そこには、当時の黒澤の純粋な理想も垣間見えるように思える。