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ゼロの焦点

1961年、松竹大船、松本清張原作、橋本忍+山田洋次脚本、野村芳太郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

広告代理店、博報社の金沢出張所支店長だった夫、鵜原憲一(南原宏治)が東京勤務となり、その事務引継のため、金沢へ旅立つのを見送った新婚ホヤホヤの新妻、禎子(久我美子)は、帰京予定日を過ぎても帰らぬ夫に不安を覚える。

何日発っても連絡がない夫を探すために、禎子は会社が金沢に用意してくれた宿に泊まって、夫の行方を探しはじめるが、杳として消息はつかめないままであった。
そこで始めて、禎子は自分の夫のことを何一つ知らなかった自分に気付く。

一旦帰京する事になった禎子を金沢に訪ねてきた義兄の宗太郎(西村晃)は、その後地元の旅館で他殺死体となって発見される。

再び、義姉(沢村貞子)と共に金沢を訪れた禎子は、自分なりに事件を追い掛け、夫だった憲一の奇妙な二重生活を突き止めて行く。

一時期、立川で風紀係の警官をしていた事が判明した夫、憲一は、結局自殺を遂げていたとして、一応解決したかに思えた事件だったが、一年後、独身生活に戻った禎子は、三たび、金沢の地を訪れる事になる。

夫が生前、世話になっていた耐火レンガの会社丸越工業の社長、室田儀作(加藤嘉)佐知子(高千穂ひづる)夫婦と共に、夫の自殺現場である能登金剛の絶壁に花を手向けに来た禎子は、そこで意外な話を語りはじめるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

暗い過去を隠ぺいするための悲劇、音楽が芥川也寸志である事もあり、後の名作「砂の器」を彷彿とさせる先駆的作品となっている。
冬の北陸の荒涼たる風景をバックに、哀しい人間のドラマがあぶり出されて行く。

モノクロの画面が、見知らぬ土地で途方に暮れる禎子の心の中を暗示するように、美しくも無機質に迫ってくる。

さり気ない証言をしてくれる土地の人の様子が自然に撮られており、観る者も、禎子と同じような目線で事件を追い掛けて行く事ができる。

禎子が事件の真相に気付いて行くきっかけが、どれも「直感」に基づいているように思えるため、論理性という点では、やや弱いようにも思えるが、逆に理屈っぽくはないので、特に推理ものなどに不馴れな人にも抵抗感はなく観られるのではないかと思う。

全体的にケレン身は少なく、地味と言えば地味な内容だが、じっくり観ると、その奥深さが心に染みてくるような秀作になっている。

特に、クライマックスの独白シーンは絶品。