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トッポ・ジージョのボタン戦争

1967年、マリア・ペレーゴ・プロ+キングスメン・エンタープライズ、市川崑+永六輔脚本、市川崑監督作品。

イタリア生まれで、テレビを通じ日本でも人気者になった、可愛いネズミの人形キャラクター、トッポ・ジージョを主役に作られた劇場版作品である。

テレビでは、山崎唯が声を当てていたが、劇場版では中村メイコになっている。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ある夜、ベッドで寝ていたジージョは、近くで起こった自動車事故の振動のため目が醒めてしまう。

部屋の中はメチャクチャ。

取りあえず部屋をかたずけ寝直そうとするが、どうしても寝つけない。

仕方なく、寝るのをあきらめ外へ散歩に出るジージョ。

そんなジージョは一つの赤い風船と出会う。

一方、同じ頃、警察の留置場に入っていた5人のギャング達が、ボスからの秘密指令を受けていた。
穴を掘って、警察署の隣にある銀行の真下から入り込め…というのである。
その5人は、あらかじめ、その計画のためにわざとその留置所に入れられていたらしい。

金庫の中には、秘かに、五カ国の原爆保有国が「原爆の発射ボタン」を共同で保管していたのである。
それを盗みだすのが彼らの目的であった。

すっかり赤い風船と友達になったジージョは、ひょんな事から、その強奪計画に巻き込まれてしまう…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

原爆の発射ボタン強奪計画というのが、何とも時代を感じさせる。

秘密指令を出す影のボスの声を担当しているの大平透、そう、「スパイ大作戦(ミッション・インポッシブル)」のパロディ仕立てなのである。(ボスが使う無線機はバナナやセロリになっており、指令終了後は、それをボス自らが食べて消去するというギャグがある)

さらに、穴を掘って銀行の真下から侵入するという計画は、イタリア映画「黄金の七人」のパクりである。(これは劇中で、ボス自身がはっきりそういっている)

物言わぬ赤い風船とジージョが友達になって一緒に行動する…という何ともメルヘンチックな発想と、社会風刺的な犯罪サスペンスとが交差する所が、本作のミソであろう。

5人のギャングたちは、時折、シルエット気味に顔や全身が映し出されるものの、基本的には足元だけが映し出される。
観客に5人を識別させるためか、各々の靴下が、みんな色違いという辺りが、市川崑監督らしくお洒落。

元々、ジージョの操演を隠すため、背景には黒が使われているのだが、市川崑監督は、お得意の、全体的に独特の照明効果で、陰影のはっきりした画面作りにしている。

小林桂樹のナレーションというのも、なかなかソフトで悪くないのだが…。

正直にいうと、この作品、どういう層を観客として想定していたのか曖昧な所がある。
子供向けなのか、大人向けなのか…。
何とも、中途半端な印象が強く、娯楽作品としては決して成功しているとはいいがたいように思える。
どちらかといえば、大人の女性向けかも知れない。

ちなみに、冒頭の寝室でのシーン。
ジージョは、寝る前の歯磨きに、ジージョのキャラクターが使用されている「ライオン子供はみがき/イチゴ味」を愛用しているのが御愛嬌である。

これは当時、「♪トッポジージョの歯磨き出たよ、イチゴで磨こうシュシュシュ〜!」というコマーシャルソングで売り出されていた実際の商品。
このシーンの演出も、スポンサーとのタイアップだったのか、市川崑監督一流の洒落だったのかは不明。

なお、本作の日本語版は現在見つからないらしく、この映画は英語版の映像に、別に存在していた日本語版の音源を重ねて上映されたものである。