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男はつらいよ 知床慕情

1987年、松竹、朝間義隆脚本、山田洋次脚本+監督作品。

シリーズ38作目。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

寅屋に帰ってきた寅次郎は、おいちゃん(下條正巳)が体調を崩して入院中と知り、何とか自分も店の手伝いをしようと張り切るが、結局、いつも通り口ばかりで、何の役にも立たない。

あまりのだらしなさに、おいの満男(吉岡秀隆)にまで「反省しろよ!」と諭されながら、寅はまた旅に出る事に…。

彼が今回向ったのは北海道であった。

たまたま通りかかったおんぼろ自動車に乗せてもらった寅次郎は、その運転手の家に邪魔する事になる。
頑固で風変わりなその運転手は、上野(三船敏郎)という獣医であった。

彼の身の回りの世話をしているスナック「はまなす」のママ悦子(淡路恵子)らから聞いた所によると、一人娘のりん子(竹下景子)が、家を飛び出したきり、ああいう性格になってしまったという。

しかし、ちょうど、そのりん子が、何故か突然、父親の元に帰って来る事になる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

美しい知床の風景をバックに、気の良い地元民たちと寅との触れあい、父娘の葛藤、そして、老いて独身の男と女の愛情物語が綴られて行く。

マドンナ役の竹下景子も可愛らしいのだが、何といっても、本作での見所は、かつて、東宝黄金時代を支えた三船敏郎と淡路景子の共演であろう。

真面目だが、頑固一徹で不器用な生き方しかできない上野の考え方を、ふらふら遊んでばかりで芯のないような寅次郎が、逆に教え諭してやる…という趣向が面白い。

前半で、寅次郎がとことん生活力のないダメ人間である所を見せつけたり、知床で、毎日、面白おかしく遊んで暮す事しかできないように見せているからこそ、この逆転劇が効果を上げているのである。

上野やりん子、はたまた、地元の青年達は、そんな寅次郎に、堅気の人間には持ち得ない自由人としての真実の気持ちを感じるからこそ、彼を愛してやまないのであるが、所詮、そんな寅次郎は、一般人にとってはいつかは去って行く「まれびと」でしかなく、生活に根を下ろす事はできないのだ。

だんだん、寅次郎が、「人々に幸福を運ぶピエロ」のような存在になって行く頃の典型的作品である。