1942年、芸術映画社、栗原有茂脚本、瀬尾光世監督作品。
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空母の艦上、ウサギたちが攻撃機の発艦準備をしている。
パイロットとなる、猿、犬、キジが多数集結。
犬と猿は、犬猿の仲というよりも、ライバル心むき出しの良き戦友仲間という感じ。
互いに相手をからかいあう。
そこへ、軍服姿の桃太郎が登場、全員に激を飛ばす。
鬼が島への攻撃だ!
やがて、空母を発艦した攻撃機の一団が、飛んでいる鷲の親子と遭遇する。
機内で犬と積木遊びをしていた猿が、翼にとまって泣いている子供鷲を発見、どうやら迷子になったらしい。
外に出た猿は、その子をあやしながら、親鳥を探して、飛行機を八艘飛び。
やがて、無事、親鷲を発見、子供を返す。
泣いて感謝する親鷲。
鬼が島への急襲に成功し、停泊中の敵船団を撃破した攻撃機部隊だったが、帰還時、一機だけ敵の攻撃によって破損した飛行機があった。
あの、子供鷲を助けた猿が乗る飛行機だった。
全員、無事帰還した中、空母の乗組員たちは、全員、帰りつかない最後の一機を心配げに待ち受けるのであったが…。
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日本最初の長篇アニメーションといわれる作品であり、同時に、海軍省の依頼によって作られたプロパガンダ映画でもある。
内容は真珠湾攻撃を桃太郎の鬼退治になぞらえたもの。
そうした背景は背景として、純粋にアニメ作品として観てみると、実に丁寧に撮られたフルアニメの佳品である事がわかる。
技術的には相当なレベルなのだ。
何より、登場する動物キャラクターがかわいらしい。
冒頭に登場するウサギのキャラクターは、動作の愛らしさも含め、特に印象的。
猿や犬たちも、実に生き生きと描かれている。
鬼が島というか、真珠湾攻撃のシーンも軍艦等丁寧に描かれ見事なのだが、鬼の正体が「ポパイ」に出てくるブルートなのがおかしい。
ブルートは、この後作られた「桃太郎 海の神兵」(1945)にも登場する。
戦時中のアニメ作品で、敵国アメリカを象徴するキャラクターとしては、ミッキーマウスを使う事が多かったようだが、ポパイも日本で良く知られたキャラクターであったという事だろう。
日本が国際著作権条約に参加するのは戦後の事であり、この当時はまだ、こういう事に無頓着な時代であったと理解したい。
何故、鬼を退治に出かけるのかという動機が語られていないため、真珠湾攻撃という背景を知らず、本作を独立したファンタジーとして今観る人には、不可解な部分もあるのではないかと思える。
製作された時代背景を良く理解した上で鑑賞される事を願いたい。
